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スイーツな次女とビターな王子  作者: あけはる


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1/4

バレンタインに寄せたお話です。

楽しんで頂けたら嬉しいです。


聖糖祭―――


それは一年に一度、とっておきのスイーツとともに

年頃の令嬢が意中の相手へ思いを伝える日。


そして今年も、そんな冬の一大イベントが迫っている。



「お姉さまー!アニーお姉さまーー!」


 妹のフローラが叫んでいる。


「お姉さま―!助けてくださいー!」


 案の定、大きな青い瞳を潤ませて、

 我が家の末っ子フローラが厨房から駆けてきた。


「またまた!またまた!

 焦げてしまいました・・・」


フローラの両手には消し炭・・・おっほん、

おそらくチョコレート”だった”、黒い塊が入ったボウル。


「フローラ・・・

 やっぱり王都の有名パーラーで購入したらどう?」


「嫌です!せっかく、せっかく、

 今年はオズワルド様が帰ってくるのに」


プスプスと煙を立てているボウルを抱えて

イヤイヤと首を振っているフローラ。


ふわふわした金髪に丸い大きな青い目。

年齢にしてはやや幼い仕草も・・・

まあかわいいから良い、と甘やかしているアニーである。


オズワルド様、オズワルド・ヴィンタージュは

フローラの婚約者である。


ヴィンタージュ伯爵家の次男で

今年で13歳になるフローラの、6歳年上の19歳。

2年前から隣国スタイ王国へ留学中なのだ。


「オズワルド様、今年の聖糖祭はこちらで過ごされるのね」


「そうなの!

 だから絶対絶対、美味しいチョコレートを作りたいの!」


「ええ、気持ちはわかるわ。だけど、フローラ、これでは・・・」


「うわーん!どうしましょう!

 もう聖糖祭は明後日なのに・・・!」


我が家、リチェット侯爵家は三人姉妹だ。

両親は今は領地にいて、

一番上の姉メリンダを次代の女侯爵とすべく奮闘中だ。


次女である私アニーと、末っ子のフローラは

貴族学校へ通学中のため

王都のタウンハウスで暮らしている。


天真爛漫なフローラも、オズワルドとの婚約が決まってからは

刺繍やその他マナーなどをしっかり身に着けた。

ただ一つ、料理を除いては。


「一体どうやったら

 アニーお姉さまみたいに作れるのですか!」


消し炭を抱えてぐずぐず言っているフローラ。


これまでアップルパイを焼いては消し炭にし、

ステーキを焼いては消し炭にし

もはや我が家の消し炭生産工場長である。


一人で作るのです!、と豪語していたから、

簡単なガトーショコラのレシピを渡して

影ながら見守っていたものの、


やはり、難しかったようだ。


というか次女である私

アニー・リチェット。

自分で言うのもなんだが、


まあまあの変わり者、なのである。


以前からスイーツが大好きだった。

だがこの5年ほどは好きが高じて、

タウンハウスの厨房にこもり

新しいレシピを編み出しまくっている。


まあまあ、いや、尋常じゃあないくらいには

スイーツづくりにハマってしまっているのだ。


そもそもまず基本的に、貴族令嬢は厨房には入らない。

花嫁修業の一環で、ちょこちょこと

一応料理の基本のようなことを学ぶくらいである。


実際にはほとんど料理しないし、

貴族は専属の料理人を雇っている場合がほとんどだ。


聖糖祭で自作のチョコレート菓子を渡すという文化も

最近できたもの。


現在の第一王子妃であられる、パドマ公爵令嬢が

5年前の聖糖祭で、ショコラを自作し

見事王子の心を射止めた、というエピソードが公開。


社交界で一気に自作菓子を作る文化が広まった。


ただそれも聖糖祭の年1回だけ。

それ以外は特に厨房には近づかないのが

貴族令嬢というものだ。


だから、食べるに飽き足らず

スイーツを()()ほうにドハマりしたあげく、

突如として

貴族学院スイーツ部(部員は自分のみ)を立ち上げてしまうような女は


学院中から奇異の目で見られているのだ。


そしてもちろん、

たとえそれが侯爵家の次女であろうとも、

そんな変人を好き好んで娶ろうとする男はあらわれず、

先に妹の婚約が成立する始末だ。


両親は、アニーの好きにしたらいいと

半ばあきらめモード。


次期女侯爵である姉メリンダも、

私は当分使わないしずっと

タウンハウスに住んでていいわよ~、という感じだから


私の料理熱はぐんぐんぐんぐん

燃えあがり、私の製菓技術は

本当に目を見張るほど上達中。


その証拠に昨年の全国菓子コンテストでは

栄えある3位に入賞・・・!


自慢ではないが、これは相当に凄いことなのである。


年一回開催される全国菓子コンテストは、

このマジョルノ王国の全土から、

それはもう、腕利きの菓子職人が集まってくる。


趣向を凝らし作り上げたスイーツを競う

いわばプロのスイーツ職人のための全国大会なのだ。


ここで1位になれば一流のスイーツ職人として認められ

王都の一等地に自分の店をも出すことができるようになるのだ。


ああ、いつかは、自分の店を持ちたい。

ああ、もっと美味しいスイーツを作りたい。

理想のスイーツを追い求めたい。


私はそんなあくなき探求心をもって日々邁進しているのだ。



「ありがとう、お姉さま、これで完成だわ!」


慎重にラッピングを終えたフローラは満足げにほほ笑んでいる。


あの後フローラとともに厨房へ行き、

レシピをさらに簡便に修正した。

そして共に試作を経て、なんとか本日の聖糖祭にこぎつけたのだ。


完成したガトーショコラを嬉しそうに見つめるフローラとともに、

スタイ王国から一時帰国したオズワルドに会いに

共にヴィンタージュ伯爵家のタウンハウスへ出向くこととなった。


「あっ、そういえばオズワルド様、

 御客人と一緒に来られているみたいなの」


るんるんと話すフローラは姉の贔屓目を差し引いても、

年頃の恋する女の子という感じでとてもかわいい。


「御客人?」


「スタイ王国での同僚、のような人らしいです

 向こうでは大変お世話になっているのだとか」


オズワルドはどうやら誰かと一緒に来るらしい。


・・・え?

そしたら、私の最新作

『絶品!ほろ苦半熟とろけるガトーショコラ(改)』は

そいつにあげないといけないのでは・・・??


そ、そんな・・・!

フローラとオズワルドを横目に

自分で食べようと思って用意したのに・・・!


そう、私は万が一

フローラが消し炭を錬成してしまった時のために

代わりになるスイーツを用意していたのだ。

まあほぼ自分で食べる予定だったのだが。


それが『絶品!ほろ苦半熟(以下略)』。


フローラだけじゃなくて

私まで呼び出されたから変だと思っていた。


なるほどそういう事情だったか・・・


ちなみに、この国では

聖糖祭の日にスイーツをもらえないというのは

男性にとっては『非モテ』の烙印を押されるようなもの。


スイーツ作りモンスターであり現在婚約者のいない私。

その事情を熟知したオズワルドに

客人へスイーツを調達する手段として、都合よく使われたというわけだ。


おのれ、オズワルド先輩・・・!

私の扱いが相変わらずヒドい!


貴族学院にスイーツ部を作った際

保証人としてオズワルドの名前を借りた手前

強く出れない。くうぅ。


新作スイーツを独り占めできず、ぐぬぬとなっている私をよそに、

馬車はヴィンタージュ伯爵家のタウンハウスに到着した。



何度か来たことがあるヴィンタージュ伯爵家のタウンハウスは

歴史を感じさせる重厚な造り。


暖炉がパチパチとくゆる

あたたかい応接室で待っていると

オズワルドがにこやかに現れた。


そしてその隣には――――

一目で上位貴族と分かる、とても美しい青年が立っていた。


(次で終わると思います・・・たぶん・・・)


最後までお読みいただきありがとうございます。

楽しんでいただけましたら幸いです。

もしよろしければご評価やブクマなど応援いただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします!

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