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偽物の世界で生きる君

作者: 秋桜星華

しいなここみさまの「いろはに企画」参加作品です。

キーワード:紅葉


ジャンル詐欺か……?

「きれいな紅葉だね」


 真っ赤な木々を前に、君はそう呟く。


「君もきれいだよ」


 もうずいぶん動けなくなってしまった君に、そう言葉をかける。


 ――そう、君は病気。


 もう、この世ではベッドから立つこともできないのだ。


 君は、そんなことは知らないのだろうけど。


「私、こんなピクニックはじめて」


 僕の目の前に寝転ぶ君は、VRゴーグルをつけている。


 ――君の目に映るものは。いや、脳への信号は、すべてが偽物なのに。


 口角を上げる君が見ているものは君の中では本物のような気がした。



 それから僕たちは、病室の中で紅葉狩りをした。


 君は偽物で、僕は妄想で。


「ほんとに楽しかった。連れてきてくれてありがとう」


「どういたしまして。こちらこそだよ」



「――ねぇ」


 ふと、君が話しかけてきた。


「何?」


「ずっと、一緒に来てくれるよね?」


 先に逝くのは君なのに。


「きっとね」


「じゃあ、じゃあ……私が死んでも、ついてきてくれるよね?」


 喉が、ひゅっと変な音を立てた。


 ――いやだ。死んでたまるか。


 ――そうかもね


 そう言おうとした口が、開かない。


 ふと視線を落とすと、君がこちらを見ていた。


 目に力を込めて。


 だらんと下ろされた僕の腕を、君がつかむ。



「……ぁ」



 声にならない声が、喉を震わせた。



 君の枝のような細い腕が、僕を離さない。


 君の重い視線が、君の幹に僕を縛り付ける。



 ふいに、君は口を開いた。


「――ねぇ、ニセモノの世界と、終わる世界、どっちが好き?」


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― 新着の感想 ―
選択制かよっ!!
これは……純粋に怖いですね……。 返事できる人は少ないかも?
抜き打ちで喉を掻き切った!? キミ、練習していたな!? 中二っぽく格好つけて練習していたな!? ベッドから立つことも出来ないからと、油断してしまったんだろう。 南無……。 ワタシはワタシの生きる世界…
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