イノセント田中 第8話
『第8話 ビッグフットの襲来』
イノセント田中が山の麓の商店通りを歩いていると、商店通りの外れの方から大勢の人の悲鳴がした。イノセント田中は大事件だと直感し、被害者たちを助けるべく走って事件現場へと急行した。イノセント田中が事件現場に到着すると、身長が2メートルもあるビッグフット(類人猿のような姿をした未確認生物)が大勢の人々を襲っていた。道路には多くの死傷者が横たわっていた。そこへ2台のパトカーが到着し、パトカーから6人の警察官が降りて来た。そのときビッグフットは道路の中央で老夫の腹を踏み付けていた。その光景を見た警察官たちは全員驚きと恐怖で錯乱状態に陥った。
「な、なんだあれは!?」
「バ、バケモンだ!」
「山男じゃないのか!?」
「あいつが何であれ、これ以上犠牲者を出すわけにはいかない、射殺しよう!」
「いや、まて、多毛症の人間かもしれないぞ!」
「と、とにかく、襲われている人を早く助けよう!」
ビッグフットに襲われている老夫を救うべく、1人の勇敢な警察官が気配を消してビッグフットに向かって歩いて行った。その場に残った警察官たちは怯えながらビッグフットに向けて銃を構えた。
老夫の救助に向かった警察官がビッグフットの背後に回り込み、ゆっくりと警棒を振り上げた。そのとき背後の警察官の気配に気付いたビッグフットが素早く後ろを振り返り、警察官の顔面に強烈なパンチを入れた。パンチを受けた警察官は首の骨が折れてその場に倒れて死亡した。銃を構えていた警察官たちが慌ててビッグフットの胸を狙って発砲し、4発の銃弾がビッグフットの胸に命中した。しかしビッグフットはダメージを受けた様子もなく警察官たちに鋭い目を向けた。警察官たちは怯えてビッグフットに銃を乱射した。5発の銃弾がビッグフットの体に命中したが、ビッグフットは何事も無かったかのように警察官たちに向かって歩いて来た。警察官たちは怯えてパトカーの中に避難した。パトカーに避難した警察官の1人が怯えながら無線で本部に応援を要請した。その様子を見ていたイノセント田中が背負っている日本刀を鞘から引き抜いてビッグフットに向かって歩いて行った。
イノセント田中を見たビッグフットが歩みを止めて『こいつは骨がありそうだ』という表情をした。ビッグフットが右の拳をイノセント田中に向けて拳の甲を下に向け、拳を2回上下させ『素手で来い』とイノセント田中に合図をした。その合図の意図を察したイノセント田中は日本刀を鞘に収めてビッグフットの前まで歩いて行った。
ビッグフットが両手の拳をイノセント田中の胸の前へ出し、イノセント田中が『お互いにフェアに戦おう』という意を込めて、ビッグフットの両手の拳に自分の両手の拳を当てた。両者が互いに相手の目を見ながらゆっくりと後退し、3メートル程の間合いを取った。
ビッグフットがリズミカルに上体を左右に振りながら、慎重にイノセン田中に接近し、イノセント田中との距離感を掴む為に、イノセント田中の顔へ軽い左のジャブを放った。
イノセント田中は素早く上体を左へ振って左のジャブを回避した。イノセント田中はビッグフットの反射神経を確認する為に、ビッグフットの顔へフェイントを交えた右の軽いジャブを放った。
ビッグフットはイノセント田中のフェイントにもジャブにも反応し、上体を左右に振って右のジャブを回避した。
ビッグフットがイノセント田中のディフェンス能力を確認する為に、イノセント田中の顔へ素早く強めのワンツーを放った。
イノセント田中はビッグフットの攻撃に機敏に反応し、ビッグフットのワンツーを両腕で的確にガードした。
イノセント田中がビッグフットのワンツーの打ち終わりにビッグフットの顔へ右のカウンターのストレートを放った。
ビッグフットは咄嗟に上体を右へ振ってカウンターのストレートを紙一重で回避した。
イノセント田中が透かさずビッグフットに接近し、ビッグフットの右ボディへ強烈なフックを放った。
イノセント田中の左フックがビッグフットのボディにクリーンヒットした。ビッグフットは体が一瞬くの字に曲がり、明らかに苦しげな表情をした。
ビッグフットが素早く後退し『いいパンチだ、だが効いてねえぜ』という笑みを浮かべ、両手の拳をイノセント田中に向けて拳を数回上下させ、『来い来い』というジェスチャーをした。
イノセント田中はビッグフットは右ボディが効いていると判断し、ビッグフットに接近してビッグフットの右ボディへ『もう一度フックを入れる』というフェイントの目を向けた。
ビッグフットがイノセント田中の目のフェイントに反応し、咄嗟に右腕で右ボディをガードした。
イノセント田中が透かさずビッグフットの顔へ強烈な左のフックを放った。
ビッグフットは顔への左フックをまともに食らい、意識を失い掛けて両膝がガクンッと落ち掛けた。
イノセント田中はビッグフットは大ダメージを負ったと判断し、ビッグフットの顔とボディへ左右の強烈なラッシュを放った。
ビッグフットは両腕で必死に顔とボディのガードをし、イノセント田中の右ストレートに合わせて強烈なカウンターの左ストレートを放った。
ビッグフットのカウンターの左ストレートがイノセント田中の顔にクリーンヒットした。イノセント田中は意識が飛んで勢いよく両膝を地面に突いた。
ビッグフットが右の拳を高々と掲げてイノセント田中の顔へ止めの打ち下ろしのストレートを放とうとした。そのとき意識が戻ったイノセント田中が背負っている日本刀を鞘から引き抜いてビッグフットの心臓に突き刺した。ビッグフットが「ウグゥオォーーーッ!」と呻き声を上げ、両手で胸を押さえてゆっくりと両膝を地面に突いた。
イノセント田中がビッグフットの目を見ながら立ち上がり、右足でビッグフットの胸を蹴り押してビビッグフットの胸から日本刀を引き抜いた。ビッグフットの上体がゆっくりと後ろへ倒れ、ビッグフットは地面に仰向けに倒れて口から血を吐いて死亡した。
イノセント田中のその攻撃を見た大勢の野次馬たちが両手を拳にして親指を下に向け、イノセント田中を罵倒した。
「ブーーーッ! 卑怯者ーーーっ!」
「ブーーーッ! 反則をするじゃねーーーっ!」
「ブーーーッ! お前は人類の恥だーーーっ!」
イノセント田中は野次馬たちに向かって走って行き、野次馬たちに向かって叫んで言った。
「街と命を救ってもらってブーイングを飛ばすんじゃねえーーーっ!」
イノセント田中はそう叫び、日本刀で野次馬の中年男性の上半身を斬り付けた。中年男性が「うわあああーーっ!」と悲鳴を上げて、その場に倒れて死亡した。それを見た野次馬たちが口々に「こいつは本物の怪物だあ!」「こいつはビッグフットよりも分別がねえぞ!」「こいつに関わると殺されるぞ!」などと叫びながら、散り散りに走って逃げて行った。
イノセント田中は野次馬たちを追わずに急いでその場から逃走した。その場にいた警察官たちがその一部始終を見ていたが、警察官たちはイノセント田中の行方を追おうとはしなかった。なぜなら、そう、彼は地球のヒーロー、イノセント田中だから。(♪テーテーテーテテー、テーテーテテテテー、道路にー現れー交通事故を引き起こすー蛾人間のモスマンー闇夜に家畜や人間をー襲って血を吸う吸血獣ーチュパカブラー怒ると家電を破壊するー電気の妖精グレムリンー昔はこういう魔物がー世界中に現れてーこの世は奇妙な事件のー絶えない世界だったぜーしかしー近年ー魔物たちは滅多にー人間の住む場所にはー出没しなくなったぜーそれはーそうさーイノセントー田中がー村や街に来た魔物をー岩をも砕く拳とー岩をも切り裂く刀とー卑劣な手段を駆使してー抹殺しているからなのさー魔物も恐れるヒーロー、イ、ノ、セ、ン、トーーー田中!)