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灰色の記憶と紅い秘密  作者: 天音タク
2/11

事件の解剖 -武和-

あらすじやプロローグの添削ばかりして申し訳ありませんでした。

 二〇二三年 九月四日 月曜日 午前十三時 事件発生から三日後 佐賀県警察署本部にて――

 

 佐賀県警察署本部刑事部捜査一課の理事官、金城(かねき)とその部下の岡田が話していた。金城は、見出しに大きく「学校が何者かによって爆破 死者三百人超 犯人は高校生か」と書かれた地元の新聞を手元に置く。金城はしばらくしてため息をついた。


「県内有数の進学校が全壊……。こがん悲惨な事件、今まであったやろか?」


 岡田は返事に困った。岡田は半年前に研修を終えたばかりの新人警察官だ。金城とは父親の友人で、何度か会ったことがあり、敬語を使うくらいでプライベートの話をすることも少なくはなかった。だが、この事件が起きてから、金城はその話をすることが無くなった。

 金城は手元に置いた新聞に載っていた顔写真を見る。


「冨坂武和……」


 そう言い、金城は岡田の顔を見た。


「岡田くん。冨坂の行方はまだわかってなかとか?」

「……未だに足取りは掴めず、捕まっておりません。しかし、情報収集を続けております」


 岡田が答えると、金城はため息をつき、重い口調で言った。


「なんとか早く見つけてくれ。あいつが逃げた先には、どんな手が待っているかわからんとだ。事件から3日も経っとるのに、このままじゃマズかぞ」


「はい、理解しております。しかし、今のところ、彼が足を運んだ可能性がある場所は全て調べております。現場周辺にも、彼の目撃情報が相次いでいます」


 金城はうなずき、口をつぐむ。目撃情報があるなら、まだ捕まるチャンスがあると思った。しかし、捜査が進むにつれ、疑問が湧いてきた。


「岡田くん、彼が何を考えとったのか予想できるか? こがんことをしたことを、後悔しているとよかばってんな……」


 金城がそう問いかけると、岡田は頭を傾げ、答えた。


「それはわかりかねますが、彼が犯行を行った動機を把握するため、関係者や知人からも情報を集めております」


 金城は深いため息をついた。


「冨坂が何を思っとるかさっぱりわからん。だが、すぐにでも捕まってくれんと、また誰かが被害に遭うかもしれん。岡田くん、頑張って捜査を進めてくれ」


 岡田は頷き、必死に捜査を進めることを決意した。事件の解決を願いつつ、二人は再び捜査に向かった。金城は更なる事件の捜査を、岡田は武和の過去について調べていった。


 

 

 数日経って、岡田が金城に報告した。すると、武和が今まで問題を起こしたことがほとんどなく、優等生であったことが判明した。


「なんだって? 優等生の少年がこがん事件を起こすわけなかだろう」

「はい、確かにそう思いますが、現場周辺から目撃された少年の特徴は武和と一致しているとの情報もあります。彼に、何か事情があったのかもしれません」


 岡田が書類を見ながら答えた。金城は考え込んだが、事件の捜査に夢中になっているうちに、武和についての情報はあまり集められていなかった。そこで、金城は岡田に調査を命じた。


「……岡田くん、話を聞ける限りもっと多くの人、例えば彼の家族や友人、先生に話を聞いてほしい。何か手がかりがあるかもしれない」


 金城がそう命じる。岡田は頷き、引き続き捜査を進めることにした。そして、武和の過去や彼の性格、思考についての情報を集め始めた。




 数日後、戻ってきた岡田は再び金城に報告した。


「冨坂は、学校で優れた成績を残し、スポーツでも比較的優秀だったようです。性格も穏やかで、ただ……。ただコミュニケーション能力だけは低かったそうです。そして彼の家族にも話を聞いてきました。家ではだらけることはあったらしいですが、決められた勉強時間は毎日守っていたそうです。事件当日の時の話を聞いてみると、いつもと変わらない時間に家を出て行ったそうです」


「本当に優等生の少年がこがん事件を……。しかし、彼が事件を起こした原因はなんだ? そこがわからないと捜査が進められなかぞ?」


 岡田は考えた後、口を開いた。


「……彼が自分の将来について、悩んでいた可能性があると思います。ある友人の話では、彼は進路に迷っていたそうです」


 それを聞くと、金城は深くため息をついた。  


「進路に迷っていたとは、ようある話たい。しかし、こがんことをするほどまでに迷うことはなかだろう。どこかに、もっと深刻な問題があるはずよ」


 捜査はまだまだ続きそうだったが、金城と岡田は、武和が犯行に至った理由について探り続けた。彼が事件を起こす前の少年とは、一体どのような少年だったのだろう。



 金城と岡田は、このままでは埒が明かないと思い、武和が犯行に至った心理的背景について知ろうと、犯罪心理学者に話を聞くことにした。隣県の大学に勤める心理学者を訪ねると、そこには中年の男性がいた。金城が話し始めると、男性は興味深そうに聞いていた。


「冨坂の行動について、何か心理的な背景があるとでしょうか?」


 金城が問いかけた。男性は少し考えた後、答えた。


「もちろんあります。若い人たちは、思春期にあたる中高生の時期に様々なストレスを感じるものです。特に進学校で勉強をしている人たちは、それがより一層強く感じられることがあります。彼がどのようなストレスを感じていたのかを知ることが大切です」


「そのストレスを解消する方法はありますか?」


 岡田が加えて尋ねた。男性は、しばらくして答えた。


「もちろんあります。まずは、ストレスを感じた時に自分自身と向き合うことが大切です。自分の気持ちや考えを整理し、それがどのような行動につながってしまうかを理解することが大事です。そして、家族や友人とのコミュニケーションを大切にし、そのストレスを共有することも必要です」


 金城と岡田は、心理学者から得たアドバイスを元に、武和の周りの人々と話をすることに決めた。彼がどのようなストレスを感じ、それをどのように解消しようとしていたのか、それらを探り続けた。



 やがて、金城と岡田は武和の状況について新たな情報を手に入れることに成功する。それにより、彼の行動の理由が少しずつ見えてきた。捜査はまだまだ続くが、二人は、心理学者から得た知識をもとに、彼が事件を起こすまでの経緯を解き明かしていくつもりだった。


 金城と岡田は、捜査を進める中で、武和について様々な情報を集めていった。病院に行き、彼が通っていた進学校の教師からは、彼が成績優秀であったこと、また小中学校の教師からは、彼はいじめを受けていたがために人間不信の傾向があったかもしれないといった情報が伝えられた。彼がいじめられていたことで、ストレスを感じていたのかもしれないという推測がされた。


 しかし、どの情報も断片的で、武和の行方は依然として分からなかった。金城と岡田は、捜査を続ける中で、彼が逃走中にどのような心境にあるのかを予測しようとした。彼が怒りや悲しみ、恐怖などの負の感情に支配されている可能性があった。あるいは、自分自身を責めているのかもしれない。また、逃走中にはどうやって生き延びているのか、どこに潜んでいるのか、どうやって食料や水を確保しているのかなど、様々な問題が考えられた。


 しかし、それらの予測も推測に過ぎず、現場には依然として彼の姿はなかった。金城と岡田は、彼の行方を捜査するため、警察署の中でも慎重に情報を収集し、可能な限り早期に彼を発見することを目指していた。



 事件から半年が経ち、捜査は依然として続けられていた。警察は、県内を全力で捜査し、武和の行方を探っていたが、なかなか見つからなかった。警察は、彼の家族、顔見知りや友人に対してだけでなく事件発生場所の近くにいた人たちにも話を聞いたが、彼の行方についてだけは全く手がかりがなかった。捜索チームの金城と岡田は、武和のことを考えると胸が痛む思いがした。彼がどこにいるのか、どうしてこのような犯罪行為に及んだのか、そして今何をしているのか、金城率いる捜査員たちは様々な可能性を考えたが、何も分からないままであった。


 事件から半年が経過するせいで、捜査員たちは時間の経過によって情報が失われていくことを懸念し始めた。しかし、彼の行方を追っている警察官たちは、捜査をあきらめず、彼を発見するために全力を尽くすことを決意していた。


 それからも武和の行方を追っていた警察官たちは、彼の消息を掴むためにあらゆる手段を講じていた。


 その中で、学校全壊事件当日に幸運にも欠席していた武和の親しい友人に話を聞くことができた。彼は、当日の朝に武和から「ごめん」というメッセージを受け取ったと証言した。そして彼はその友人に対して、「俺は人が怖い、だから友達と呼べる友達は数えるほどしかいない」などと話していたようだ。


 警察官たちは、この情報を元に、武和が事件の計画を事前に練っていた可能性を考えた。しかし、彼が主犯なのか、彼が犯罪に加担したのか、単に偶然にも欠席していたのかは分からなかった。金城と岡田も、この情報を聞いて、彼が事件に関与していたという新たな可能性を考えるとともに、彼が欠席したときどこで何をしていたか、その場所と理由を探ることに力を注いだ。


 捜査はまだまだ続いていたが、少しずつ新しい情報が集まってきたことで、彼の行方が分かる日が近づいているかもしれないという期待が、警察官たちの胸に芽生えていた。


 しかし、捜査はその後数ヶ月にわたって続いたにもかかわらず、金城と岡田が率いる捜査チームは、結局、武和の行方をつかむことができなかった。彼の身元や人脈、その動機についても、警察は多くの情報を集めたが、それでも事件の全貌を解明することはできなかった。金城と岡田は、事件の被害者や遺族、そして市民たちに対して、捜査の結果を報告することができず、自分たちの無力感や挫折感に苛まれた。



 事件から一年が経過した今でも、武和の行方は未だにわからず、彼がなぜこのような犯罪行為を行ったのかという謎は解けないままだった。


 その後課内からは、"あれ"を発動させるかどうかの話が出始めた。今、彼が未成年ではあるが「特別少年」に該当する年齢になっていると思われるためか、警察もこの事件を黙止せず全国に広めることを検討し始めた。彼を逮捕して話をした後、相応の判決を下してもらうために。

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