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85 人と怪物

よろしくお願いします

「マスター」


 アンが急いで僕の傍に寄る。その手にはハイポーションが握られていた。この程度の怪我ならハイポーションで充分との考えだろう。アンも薬をどの場面でどれが必要かわかってきたようだ。


 ハイポーションを飲み干し、痛みは残るが怪我は全て治る。


「勝つと信じていました。なにせ、チアフラワーのマスターなんですから」


「ありがとう、アン」


 アンの隣には、白いウェアタイガーの少女がいた。彼女の瞳には驚愕の色が残っている。彼女は、獣人の言葉で僕に言った。


「人間、オレをカードに封印して、仕えさせて欲しい」


「君を?」


「ああ、オレは一度お前に負けた。その時は、何故自分が負けたのが信じられなかった。だが、今は違う。これからはお前が死ぬまでお前に尽くそう」


 うーん。動物同士で戦って勝ったらボスとなるようなものだろうか?まあ、魔法騎士になったことで、カードは3枚に手に入れて、魔法の手鏡の能力で6枚に増やし、一枚は半人半竜のメリュジーヌ・ジ・エキドナに使い、残り五枚残っているから別に構わないか。ちなみに。後はあれだな。そろそろ連絡が来てくれるといいんだけど。


 次に山方さん達が来る。


「どうやら、我々は君を誤解していたようだ。まさか魔法や強化アイテムを使わずに、魔法剣だけで倒すとは思わなかった。君がどれだけの修練を積んだのか、我々には想像できない」


「どうやって一時的に魔力を上げることができるんだ?」


「君は本当に召喚士なのか?それでここまで極めたのか?」


「君の召喚モンスター可愛すぎない?どこでみつけてきたの?」


 矢継ぎ早に質問してくるメンバーを、抑える散田さんと山方さん。


「ここでの事は上にきちんと報告するつもりだ。相手は人間ではなく、バーサーカーというモンスターであること。そして、君が助けてくれなければ、我々は全滅していたことも含めてな」


 ダンジョンでは、人間がゾンビ化、鬼化して、仲間に襲い掛かることがある。今回のバーサーカー化という事例も、すでに人間に戻ることができなかったとして、撮っていた動画と共に上に説明するのだろう。


「・・・はい。ありがとうございます」


 僕は頭を軽く下げる。だからといって、心は晴れなかった。


 ボウクンと呼ばれた人物、黄義英他はバーサーカーと呼ばれるモンスターになった。これは周知の事実である。体は肥大し、肌は黒く変色し、胸は抉れ心臓を失っている状態で、理性すらも失っていた。以前出遭ったバーサーカーとは違う『暴』そのもの。すでに人間に戻すことは無理なのはわかっていた。


 それでも数時間前まで、冒険者であり人間であった者を殺すのは、頭でわかっていたとしても、心が納得することなかった。


 少しでも気を許すと体が震え、喉から苦い物がこみ上げてくる。なんとか飲み込んで、崩れそうになる膝を支える。


 自分で選んだダンジョン探索だ。ここで折れるわけにはいかないのだ。


 数時間後、コムドレッドのメンバーであるスガチャンは、別の支援冒険者パーティに捕縛された。実際には逃げられないと知ったスガチャンは、自分から投降したのだという。

 こうしてカードに封印された、白いウェアタイガーの子供を含む、数体の女子供を回収することができたのだった。




 スガチャンは、自分の周囲を探ると、幾つもの冒険者パーティを見つける。それがダンジョン攻略に動いていないことに気付く。


(これは、あれだな。俺等を探しているな。いや、もう俺だけか)


 最早コムドレッドは、崩壊している。ギルド『ゴルゴン』傘下の支援冒険者パーティとも連絡が取れない。


「つまりは、『ゴルゴン』ももうお仕舞いってことだな。

まあ、殺人や違法薬物、密輸にやりたい放題の半グレギルドだったからな。いつ年貢の納め時になっても仕方が無いと思っていたが、とうとうきたか」


 それでもよくここまで持ったなと思う。


(自分はどうするか。海外に逃げるって手もあるが、国際指名手配されそうなんだよなあ)


 おそらく、おそらくだが、日本ダンジョン協会や国が動いている気がする。でなければ、こんな大がかりな包囲網は作れないだろう。


 遠目からボウクンがモンスター化した時は驚いたが、あんな隠し球をボウクンが持っていたとは驚いた。裏表ない奴だと思っていたので二重三重の驚きである。


 その後どうなったのか知らないが、あのモンスター化による暴れっぷりでは、いずれ魔力と体力が尽きて死んでしまうだろう。せっかくモンスターとして生き返ったのに、命を粗末にするやつである。


(今、俺の手札には封印カードがある。これを持って逃げて、高く売りつけて逃亡するか、このカードをネタに投降して、罪を軽くして貰うか)


 逃げたとしても捕まりそうだし、長い逃亡生活はスガチャンの性格に合わないので、却下した。であれば、後者の投降が一番都合がいいだろう。


(ダンジョンでの犯罪は足が付きにくいし、証拠もほとんどモンスターの餌だ。逃げるより観念して捕まるほうが良策だろう)


 こうしてスガチャンは、近くの冒険者パーティに投降することにしたのだった。


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