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81 ボウクンvsウェアタイガー

よろしくお願いします

 純白の毛並みに黒の縞模様のウェアタイガーと、ボウクンの戦いは一進一退だった。


 ボウクンが大剣を振るごとに暴風が起こり、刃を躱した純白のウェアタイガーの爪がボウクンを切り裂こうとするが、皮一枚で避けられる。


 ボウクンは剣を振った勢いのまま蹴りを放つ。その蹴りをウェアタイガーは受け止めるが、その重さに後退する。その隙を見逃さず、ボウクンの剣がウェアタイガーの首を狙う。ウェアタイガーは、後ろに避けず前方のボウクンに向かって突進する。横薙ぎの剣を躱して、ボウクンの腹部に向かって牙を向けた。しかし、ボウクンは片手で相手の首根っこを掴んで投げ飛ばした。


「くそが、くそが、くそがあああああ!どいつもこいつも俺の邪魔すんじゃねえ!

獣人だろうが、化け物だろうが、俺の前に立ち塞がる奴は全部捻り潰す!」


 ボウクンの斬撃が純白のウェアタイガーを襲う。だが、ウェアタイガーは避けつつ木々の間に入り込む。リーチの長さではボウクンの方が上だが、この大樹に囲まれた森林の中では、その長さが邪魔になっていた。その木々の間を這うようにウェアタイガーは、ボウクンに襲い掛かる。


「うぜえんだよ!」


 木々が邪魔で大剣が思うように振れず、怒りをそのままぶつけるボウクン。ウェアタイガーは、粛々と獲物を狩るようにボウクンを狙う。


(これほどとはな。元の世界の人間達より劣るものの、それに近づいてきている)


 ウェアタイガーは自分達が育った故郷の世界を思い出す。


 自分達の世界の人間、特に戦士や騎士と呼ばれる者達は、狡猾で倒すためには卑怯も辞さない者達ばかりだが、恐ろしく強い者達ばかりだった。この人間もそれに近い強さを持っているが、残念ながら一番大事な必要なものを持っていない。


 それがなくては自分を倒すことなどできない。


 ウェアタイガーは、ただ己の強靱な肉体と相手を殺傷する技術だけを持つボウクンを、経験と研ぎ澄まされた感覚で追い込んでいく。


「くそがっ!」


 徐々に自分の剣が、拳が、蹴りが、当たらなくなることに苛立つボウクン。今まで自分を抑えつけてきた強者と搾取してきた弱者を捻り潰してきたボウクンと、生きるために一族を護るために強大な相手と戦ってきた獣の戦士との差が露わになる。


 ボウクンの武装した軍人でさえも吹き飛ばしてきた拳は、白きウェアタイガーには当たらず、ウェアタイガーの爪と牙が確実にボウクンの首に届いてきていた。


「俺を見下すんじゃねえ!」


 焦りからか、攻撃が雑になってきたのを、ウェアタイガーは見逃さない。


 ウェアタイガーの爪がボウクンの心臓を貫いた。


「ぐっ・・・くそが・・・」


 ボウクンは最後の力を振り絞り、ウェアタイガーの頭部を掴み、握り潰そうとするが、その前にウェアタイガーはその場から離れた。


「ガァアアアアアア!」


 ウェアタイガーが吠える。それは自分が勝利した、仲間への合図だった。


 その遠吠えとともに、周囲の獣人達も退いていくのだった。



「あ~らら、やられちゃったか」


 スガチャンは、魔法使いのクズオと共に、ボウクンの遺体を発見する。


 地上では無双状態だったボウクンが、あっけなくやられるとは予想外だった。それだけダンジョンが危険に溢れているということだろう。それだけに稼げる場所ではあるのだが。

 どの社会でも稼げる場所というものは、悪臭漂う権力の中枢か、死臭漂う危険地帯と相場が決まっている。


 自分達をつけていたウェアタイガーの気配もないのはどういうことだろう?


 スガチャンは、この件に対して嫌な予感がよぎった。


(あれれ、もしかして、俺達やばい立場にいるのかも?)


 本来なら自分が持つカードを奪いにくるはずだ。なのに奪い取らずに襲ってくることもなく、白いウェアタイガーと共に撤退している。これは、なにかきな臭い謀略を感じた。


 スガチャンは自分の勘を信じた。この勘があったからこそ、ここまでやってこられたのだから。自分が死ぬときは勘が外れた時だということも理解することができた。


 ここは一刻も早く退いた方が得策と考えた。


「おい、行くぞ。クズオ」


「いや、ちょっと待てよ」


 そう言ったクズオは、ボウクンの遺体を見下ろしている。


「俺はこいつが嫌いだった。少しでも歯向かえば殴るし、腕と足を折られてそのままダンジョンに置き去りにされた奴もいた。レアアイテムで稼いだ金の配分もほとんどこいつが持っていっていたし、俺達には死体処理ばかりだった」


 クズオのドス黒いなにかを感じたスガチャンは、クズオが何をしようとしているのか、察した。


「ほどほどにしとけよ。俺は少し周囲を索敵してくっから」


「ああ」


 まあ、クズオの言うこともわかるスガチャンだった。ひたすら暴力でチームを纏めてきたボウクンを恨む者も多い。スガチャンもボウクンが恐ろしく強くなかったら、知り合いにすらなりたくなかっただろう。


 それだけボウクンはやりたい放題だったのだ。


 スガチャンは、仕方ねえなと思いつつ、その場を離れた。






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