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8 冒険者達①

よろしくお願いします

8 冒険者達①


 早朝、薄暗い朝を僕は走る。走り込みを終えたら、腕立て、スクワット、上体起こし、体幹トレーニング、そして素振り。雨が降ろうと風が強かろうと、体調を崩していようと欠かさず行う。ダンジョンでは途中で体調を崩して休んでいても、モンスターは待ってはくれない、逆に好機として襲ってくる。


 ダンジョンにはレベルシステムがある。

 ダンジョンでモンスターを倒すうちにレベルが上がり、身体能力が上がるというものだ。ただし、これはダンジョン内だけのもので、地上に上がったらレベルシステムは使えない。女性や十代の子供でも危険なダンジョンに入ることができるのは、このレベルシステムのおかげともいえる。そして国と大手企業が力を合わせた結果、レベルのステータスがわかるステータスベルトを完成させ、冒険者でも自分のステータスの向上を見ることができるようになった。


 しかし、と僕は思う。

 レベルが上がり、運動能力、腕力、スピードが上がっても、技術と基礎体力が変わらなかったら意味がないと。一般人がレベル10になるのと、スポーツ選手がレベル10になるのとでは、能力に開きができてしまう。だからこそ、レベルが低い内から基礎体力をあげておくべきだと思う。僕にはスポーツの才能はないが、持久力や腕力ぐらいは上げられるはずである。


 今自分が所属している『エウメニデス』は、それなりのギルドになり、現在音楽部門と冒険者部門に分かれて動いている。僕はどちらにも所属し、今は冒険者としてダンジョンに潜ろうとしていた。

 実際はダンジョン超裏技大辞典を使って、かなり深くまで高難易度ダンジョンに潜ってこそこそとモンスターに気付かれないようにアイテム回収を行っているのだが、それでは自分が持っている召喚モンスターのレベルが上がらないから、今回はダンジョン攻略を普通にこなしていこうというわけである。

 D級ダンジョンは初心者コースのようなもので、あらかたクリアできたので、今回はC級ダンジョンクリアを目指していこうと思う。




「ギャ、ギャ、ギャアッ・・・、違うな。ギャ、ギャ、ギャァアかな」


 C級ダンジョン階層で僕の声が響く。それを見て、僕のカードモンスターが気味悪そうな表情をするが華麗にスルーする。


「我が君よ、いきなり変な声を出すのは止めてもらえないだろうか」


「私も吃驚しちゃったよ。とうとうマスターがおかしくなったのかと思うもん」


 そこにいるのは二人の美少女だった。一人はスラリとしたルックスにスーツを纏い、金色のくせっ毛のある髪と碧眼のエレガントが似合う中性的な美貌。もう一人はピンク色の髪と幼さが残る可愛らしい中背の少女。デニムの上に長袖のワンピースを着ており、街中だったら似合っていただろうけど、ここはダンジョンだ。


「ごめんごめん、ゴブリンの喋る言葉を勉強しててさ」


「我が君はゴブリンの言葉を覚えたいのか?」


 すらっとしたスーパーモデルのような高身長の少女、ステラは眉をひそめる。


「そうだね、彼等がなにを喋っているのか、気になるかな」


「ゴブリンは凶暴だし、下品だし、あまりなにを喋っているのかなんて知りたくないなあ」


 ピンク髪の少女アンティアも困ったような仕草を見せる。


「そうだね。まあ、なにかの役に立つかもしれないし、今後ずっと役に立たないかもしれない。だけど知識として知っていても害が及ぶものじゃないから」


「我が君は変わった趣味を持っているな。まあ、ダンジョン攻略に役立つかもしれないが、いきなりゴブリン言葉の練習はやめてほしい」


「ごめんごめん」


 現在、僕達はC級ダンジョン6階層に来ている。D級ダンジョンのモンスターと違うのは、強さや凶暴性もそうだけど、モンスターが武装や武器を所持していることだろう。ゴブリンでさえ、鎧を着用し剣を持って襲い掛かってくる。並の冒険者の装備だと苦戦してしまうだろう。さらにやっかいなことがある、それは・・・。

 その時、腕輪がブルブルと震える。ダンジョン二階層以上はスマホが使えない。これはある一定の距離に近づくと電波が繋がるトランシーバーのようなものである。この震えは救難信号のようだ。


「どうやら冒険者が救けを求めているみたいだ」


 さて、どうするべきか。ダンジョン攻略とは、早い者勝ちの争奪戦のようなものである。奥に進めば進むほど危険が増し、怪我人も増えてくる。そうなると他の冒険者の事などかまう余裕がなくなってくる。いちいち人助けしていたら先に進めないのだ。

 僕は善意で現ギルド社長である津上正愛さんを救けた。それが上手く嵌まって繋がりをもって僕もギルドに入ることができたのだけれど、今回がそう上手くいくとは限らない。罠であることも考慮しなければならない。


「二人とも、ここはどうするべきか意見を聞こうと思う」


「無論、騎士として救けに行くべきだろう」


 ステラは当然のように言う。


「私も美少女剣士として救けに行くべきだと思います。むしろ、私達の活躍を他の冒険者に見せるチャンスです」


 拳を握り胸の前でガッツポーズをとるアンティア。まあ、この二人ならそういうだろうと思った。


「よし、救けに行こう。念のため、助っ人を用意しておこう。

召喚!出でよ!『オオカミ』!」


 僕はサマナーカードからモンスターを召喚する。そこに顕れたのは純白の大きなオオカミだった。


「ご主人様、お待たせしました。なにか御用でしょうか?」


 純白のオオカミは人語を器用に喋る。


「救難信号を受けた、これから戦闘に入ると思う」


「わかりました。お願いですが、またカードに戻して下さい!」


「どうして?」


「怖いからです。できれば戦いたくないです、カードの中で引き籠もっていた方がましです」


 純白のオオカミはその外見とは裏腹に臆病な言葉を吐く。とても召喚モンスターとは思えない屁垂れっぷりだった。


「アマテ」


 僕は純白のオオカミに付けた名前を呼ぶ。


「嫌な物は嫌です!怖いです、痛いの嫌です!」


 仕舞いにはぶるぶると震えだすアマテ。若干腰が引けており、本当に戦いたくないのだろう。


「今回は戦闘に入ってもらうことはないよ、ただ戦闘中に横入りや危険だと思われるものはないか、索敵してほしいだけだよ」


「本当ですか?戦わなくていいんですね」


 嬉しそうに尻尾をパタパタするアマテ。ううん、育て方を間違えただろうか。


「ああ」


「なら参加します。ほら、早く救けないと、救難信号出している冒険者さん達全滅しますよ」


 アマテはオオカミだけあって索敵能力が優れている。すでに冒険者の場所も嗅ぎつけているのだろう。こうして僕達は、二度目のダンジョン人助けをすることになったのだった。


次回投稿は3月3日23時頃です。

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