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71 裏ギルド

よろしくお願いします

 そろそろ潮時か・・・。


 スガチャンは、この稼ぎの締め時を感じていた。


 彼は、冒険者ギルド『ゴルゴン』に所属するパーティメンバーである。


 しかし、冒険者ギルドの中でも『ゴルゴン』は、裏ギルドと呼ばれる、ダンジョン内の違法密売、殺人を行なう犯罪集団と生業としていた。彼の所属するパーティ『コムドレッド』もギルドの指示で犯罪に手を染めていた。


 スガチャンが所属するパーティは五人。そして、B級ダンジョンに入るには、最低でも二三十名、階層ボスを倒すには、五十名程必要だ。しかし、コムドレッドは階層ボスを倒すのが目的ではない。『ゴルゴン』は、ダンジョンで違法とされている薬草やモンスターの密売に海外への密輸が目的である。さらに冒険者パーティを襲い、アイテムを奪い、殺人にも手を染めている。警察や日本ダンジョン協会が行き届かない程にダンジョンは広く、自分達のような犯罪者でも自由に横行できる場所である。スガヤン達は、ダンジョンで稼いだ金で、地上で派手に遊び回る。


 しかし、近頃、ダンジョン内が厳しくなっている。ダンジョンの違法薬草やアイテム、モンスターの持ち出し等、取り締まりが厳しくなっているのだ。


 ダンジョンを出るとき、出口で待機している違法アイテム検査に引っ掛かりそうになっている。自分達はまだ捕まっていないが、知り合いのパーティが摘発されたのを聞いている。ダンジョンで行方不明になった冒険者パーティの捜査も行なわれ、例えモンスターに捕食されたとしても、残存思念を呼び出すことができるアイテムを使用し、どのように殺されたのかも綿密に調査している。


 いずれ自分達に殺された冒険者の思念が見つかるのも時間の問題かもしれない。ここらでギルド『ゴルゴン』を抜けて、海外に逃げる準備が必要であると、スガチャンは考えているが、『コムドレッド』のメンバーには一切話すことはない。


 冒険者パーティとしては腕が立つかもしれないが、メンバーの人格形成は最悪だからと言わざるを得ない。罪のない人間を殺して、死体からアイテムをあさり、女冒険者を見れば暴行することしか考えていない連中と地上でもつるむ気はなかった。


 特にボウクンにだけは知られるわけにはいかないだろう。


「どうした、スガチャン。浮かねえ顔してよ?」


「んでもねえよ。人の顔ジロジロ見んじゃねえよ。ホ○か、おめえ」


「アホか。てめえが女でも吐き気がするわ」


 声を掛けてきた人物、通称ボウクン。


 こいつは危険だった。


 こいつは人を殺すことも、奪うことも、犯すことも、ためらいがない。もし、上が隣にいる自分を斬れと言ってきたら、ためらいなく斬るだろう。そして、腕っ節が強い。


 190を越える身長に均整のとれた体格。並外れた運動神経に強靱な肉体。違法アイテムによる強化。さらにある凶悪なスキル。C級ダンジョンでオーク相手に素手で殴り殺すことができるのはボウクンだけだろう。


 冒険者パーティ『コムドレッド』がB級ダンジョンで、好き放題できるのも、ボウクンがいるからだろう。モンスターとの戦いの最中、メンバーが少しでも怯えを見せれば、ボウクンの私的な制裁が行なわれるため、皆本気で戦うしかない。


 そういう性格だから、何度も寝首をかかれそうになるが、全て返り討ちにしてきている。


 スガチャンはコミュ能力が高く、皆が怯えるボウクンとも会話ができる希有な特技を有しており、パーティの面々は話したいことがあると、スガチャンに相談するため、いつの間にか取り纏め役になっていた。


「取り敢えず、コレをどう売り捌くか考えていたただけだ」


 そう言って、あるカードを取り出す。


「ああ、それか」


 それは違法の封印カードだった。召喚カードのようにモンスターを召喚して戦わせることはできないが、召喚士でなくともモンスターをカードに封印できる優れものだ。

 そこにはあるレアモンスターが封印されている。これを売ればかなりの金額が手に入るだろう。


「売り捌くって、ギルドに持っていって金に換えて貰うだけだろ?」


「俺達のギルドに持っていっても、安く買い叩かれるだけさ。これぐらいの上物なら、もっと別のルートに持って行ってもいい」


 実際、ギルド『ゴルゴン』の裏流通ルートも怪しくなってきているし、ここはギルドとは関係のない、地上のルートを使用してもいいだろう。


「そこらへんはお前に任せる」


 ボウクンにしろ、パーティの面々にしろ、大金が手に入ればそれでいい連中ばかりである。金が手に入れば豪遊して使い果たし、再びダンジョンで危険な冒険を繰り返し、レアアイテムを手に入れて換金する。他の冒険者パーティでは、金銭の分配で喧嘩ならまだしも、殺し合いになった冒険者パーティも多い。このパーティは、ボウクンに圧倒的な強さに、スガチャンのメンバーを纏めるコミュ能力でなんとかパーティとして成り立っていた。


 このままボウクンの強権指揮で進めていきたいが、社会がそうさせてくれない。人間である以上、個人の圧倒的暴力では、法律には太刀打ちできないのだ。


 いずれにしろ、規制が激しくなれば、自分達がしてきたことは報いを受けなくてはならない。だが、そうならないために立ち回り、逃げることも重要になってくるのだ。


 いつまでも、このパーティ『コムドレッド』で稼いでいきたいが、事態が大きく変わろうとしていくのを、スガチャンは情報と勘で感じ取っていた。



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