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外伝 ハーフリンクの村

よろしくお願いします

 僕こと、乙橘勇大は、今日も今日とてダンジョンを探索する。


 今回のお題は、ハーフリンクだ。


 ハーフリンク。人間よりも身長が低い亜人種だが、隠れるのが上手く、凶暴なモンスターが見失う程に、視覚、嗅覚、聴覚、魔力の認識阻害能力が高い。

 性格は穏やかで、狩猟もするが農業を好む。狩猟はほとんど罠を張り、獲物を捕まえる方法だ。ハーフリンクの住む場所には、彼等しかわからない罠が幾重にも張り巡らされており、一流の冒険者でも罠に引っ掛かり、戦闘不能状態に陥りやすい。

 彼等の里や村に行くには、警戒心の強い彼等の心を懐柔する必要があった。そこら辺はドワーフと同様といったところだ。


 とかく、亜人種は人間種に対しての警戒心が強い。一部では憎悪を持つ者もいるという。

 これは魔王と勇者との戦争で、勇者は人間種と魔王軍に与しない亜人種軍で混成された軍だったわけだが、魔王が滅び、勇者が死んだことで、人間種がモンスターの弾圧とそれまで手を組んでいた亜人種を支配しようとしたことによるという。


 今まで手を組んでいたにもかかわらず、あっさり掌を返すやり方に怒りを覚えた亜人種は多く、以降、人間種と亜人種との関係は悪くなった。

 要するに異世界の人間ではないが、人間である僕は亜人種にとって関わりたくない人種というわけだ。


「ほら、さっさと行くわよ」


 パフェ・ジ・スィートが僕に声を掛ける。

 エルフとハーフリンクは、仲が良い。僕はハーフリンクの印象を少しでも良くしようと、彼女を召喚し、彼等が住んでいそうな場所を歩いていた。


「ていうか、本当にこの辺りにハーフリンクなんているの?どこ見ても木々と草花しか見えないんだけど」


 自分達がいるところは森林であり、人やモンスターの気配はない。


「パフェは、ハーフリンクの里に行ったことはないの?」


「え?あるけど。でも、思い出してみると、そうね、確かに彼等が住んでいるところと似ているかも」


 パフェは、忘れやすい。エルフの特長というより、彼女個人の特長なのだが、どうにも記憶力に難がある。聞かれても応えられないのだが、ふと大事なことを思い出すこともある。


 しばらくすると、ハーフリンクが仕込んだと思われる罠があり、ここいるのは間違いなさそうである。とはいえ、今すぐ、この罠を解いて前に進むわけにはいかない。彼等はドワーフと違い、守りに抗戦的ではない。危険だと思えばすぐに逃げてしまうだろう。

 僕達は、ここに野宿することとした。キャンプのようなオシャレなものではなく、モンスターや獣に見つかりづらい場所を選び、雨をしのぐ程度の迷彩布を被り、交代交代で見張りをして周囲を警戒する。そして、五日が経過した。


 最初に気づいたのは、パフェである。


「弱々しいけど気配を感じるわ」


 エルフは感知能力が非常に高い。さらに異世界で冒険者をしていたパフェは、狩人としても戦士としても感覚が優れている。僕達はすぐにその場所へと向かった。

 そこは波のように高低差のある丘であり、そこにハーフリンクが倒れているのを発見した。


 僕達はハーフリンクに近づき、様子を診る。ハーフリンクは身長が低く、でっぷりとした体付きをしている。しかし、今見るハーフリンクは若干痩せている様に見える。怪我をしているかと思ったが、傷は見つからなかった。顔色が悪く頬痩けており、唇がカサカサだ。


「外傷はないけど、かなり衰弱している。どうやら、なにも食べていないようだし、脱水症状を起こしているのかもしれない」


 僕は持参した布に水筒の水で湿らせて、ハーフリンクの口につける。さらに治癒魔法を掛けていく。弱々しいハーフリンクにほんの僅かだけ力が漲る。一気に上級の治癒魔術を掛けることも可能だが、弱った体を急激に回復させると、後遺症が残る可能性もありうる。少しずつ回復させたほうが無難だと考えた。


「うう・・・」


 僕は時間を掛けて、ハーフリンクを治癒する。パフェには、周囲を警戒してもらう。


「あ・・・、ここは?」


「気がついたようだね」


 意識を取り戻したハーフリンクが、僕を見て驚く。


「う、うわわわわ!に、人間!助けてけれえええ!」


 あたふたと逃げようとするが、体が上手く動かないようで、よたよたと逃げる。


「せっかく助けてあげたのに、逃げるわけ」


 塞がるように、ハーフリンクの前にパフェが立つ。


「えええ、エルフ?どうすてエルフが人間と一緒にいるんだか?」


 ハーフリンクは、突然のエルフで目を大きくする。


「決まってるじゃない。あんた達ハーフリンクに会うためよ」


「どういうことだべ?」


「勇大が・・・この人間種ね。勇大があなた達と友好を結びたいと言っているのよ」


「ええええええ?」


 後は、僕がハーフリンクの前に出て話す。僕が異世界の人間であることを伝える。ハーフリンクは異世界というのが理解出来なかったようだが、彼等が知る人間と違うことは理解してくれた。


「友好なんて信じられねえ。人間はオラ達をこき使うか、見世物にするかのどちらかだべ。どうせ甘え言葉でオラ達を騙して、捕まえる気だべ」


 うーん。あながち間違いではない。異世界だろうが、現世界であろうが、人間のすることに変わりはない。僕に悪意はないが、別の人間が悪意を持って接してこないとは言い切れないからだ。


 BWダンジョンでもハーフリンクや温和なホブゴブリンを見掛けたという噂があり、それをネット配信者が探す動画や中にはツアーを組んだり、週刊誌に記事が書かれたりすることがある。これで、もし本当にハーフリンクが現われたらどうなるのだろうか?

 やはりハーフリンクを見世物のように扱われる世界にしかならないなと思う。


「僕はあなた達を世間に公表する気はない。僕個人として、あなた達と仲良くなりたいんだ」


「そんなの信じられねえ」


「まどろっこしいわね!だったら、あたしをあんた達の住む場所へ連れていきなさい!」


「え、エルフを?」


「そうよ。あたしがあんた達を説得してみせるわ」


 パフェは自信満々に言う。


「パフェ、交渉とかやったことあるの?」


「あるわ。・・・でも、ううん、思い出して見ると、正直上手くいった試しはなかったし。あたしが行こうとすると、いつも誰かに止められていたけど・・・。今回は上手くいくわ」


「わかった。今回は君に任すよ」


 パフェは考え無しに動くから、こういう交渉役には合わないと思うが、僕は彼女に頼りたくなった。


「本当にいいの。失敗してもしらないわよ・・・」


 自分で言っときながら、自信なさげに言う。


「構わないよ。君に任すと決めたんだから、パフェ頼んだよ」


「・・・わかったわ!あたしに任せて!」


 信頼されたのが嬉しかったのか、満面の笑みを自信ある表情で胸を反らす。


「というわけよ!あたしをハーフリンクの村に連れて行きなさい!」


「えええ?なにがというわけかわからないけんども、エルフなら、まあ、わかっただ」


 本当に仕方ないという感じで、ハーフリンクは、パフェの勢いに飲まれて、彼女を自分の仲間達が住んでいる場所へと連れて行くこととなった。その間、僕はここで待機となる。一応、パフェには危ない目に遭ったら、すぐ報せるよう伝えてある。彼女は、その時はハーフリンクの集落が一つ消えるだけよ、と言って、ハーフリンクの案内の元、彼に連れられて消えていった。


 仕方なく、僕はここで待つことにした。数時間後、パフェは先程のハーフリンクと数人のハーフリンクを連れて戻ってくる。


「交渉は成功したわ。あなたもハーフリンクの里に入れるわよ!」


 こうして、僕は無事ハーフリンクの里に入ることができた。その後、ハーフリンク達にパフェがどう接したか聞くと、半ばなし崩しに僕を里に迎えるよう騒いだとのこと。追い出そうとしたが、彼女が以前勇者軍にいたことを口伝で伝えられており、仕方なしに僕を里に迎えることとなったそうな。


次回より新章に入ります


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