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外伝 クラウ・ソナス

よろしくお願いします

 さて、ダンジョンでは魔力が全てといっていい。ダンジョンに生息するモンスターのほとんどは魔力によって獲物を感知する。もちろん、視覚や聴覚、嗅覚も重要だが、ダンジョンに生きる全ての物は魔力を持っているからだ。


 魔力はダンジョンに生きる生物全ての糧であり、生命の根源であるといっていい。だからこそ、ダンジョンのモンスターが、魔力のない地上に出ると、水のない魚か、酸素を失った生物のように、死んでしまうのがほとんどだった。


 だけど、魔力の恩恵は凄まじい。なにしろ、地上の武器はモンスターの表面を覆う魔力によって防がれてしまうし、身体能力を向上させる。魔力を源とする魔法、魔術も地上の武力では太刀打ちできなかった。


 どうすれば、ダンジョンに抗しえるのか。それはモンスターを倒し、経験値を得て、レベルを上げるしかない。幸い魔力について説明してくれる魔術師やエルフがいる。地上の人間もダンジョンに潜り、モンスターと戦い、勝つことで体内に魔力を取り込むことができるのだ。


 では、魔力がなければどうなるのか?


 先述の通り、ダンジョンのモンスターのほとんどは、視覚や嗅覚に頼るより魔力を感じ取り反応する。なら、魔力のない状態、レベル0のままで、視覚、嗅覚、聴覚を阻害することができれば、どのダンジョンも潜れるのではないだろうか。


 今の僕はレベル0であり、魔力がない人間である。だとしてもモンスターの視覚、嗅覚、聴覚他を誤魔化すことなど普通なら無理だ。だけど、今の僕にはダンジョン超裏技大辞典がある。この知識を頼りにレベル0のまま、ダンジョンに潜ることにした。一見無謀そのものだけど、今も当時も僕は無謀そのものに取り憑かれていた。


 クラスメイトに殺されそうになってから、九死に一生を得てから、ダンジョン超裏技大辞典を手に入れてから、僕は恐怖が鈍ってしまったのかもしれない。

 自分の命が以前よりも軽く感じるようになってから、僕はダンジョンを彷徨い続けるようになってしまったようだった。


 ズシンッズシンッと地響きが鳴り、振動を撒き散らしながら、巨大ななにかが通り過ぎる。僕は息を殺しながら、それが通り過ぎるのを待つ。

 ここでは魔力がない僕という存在はいないモノ扱いだが、一度認識されれば、そういうモノがいると知覚されてしまう。例え五感を攪乱し、見えないモノになったとしても、最小限の注意は払うべきだ。


 ダンジョンの水や植物は、ダンジョン超裏技大辞典で食べられる物と食べられない物と区別がつくが、植物や水に含まれる魔力が蓄積される恐れがあるため、食べるのを控える。

 モンスターが視覚できにくい色調のマントフードを被り、足跡は残さないように靴の上に布で覆う。歩きにくいが滑って転ばないよう細心の注意を払う。

 空を見上げると、このダンジョン一階層特有の二つの月は出ておらず、幾分か空中に漂う魔力濃度も薄い。ダンジョン超裏技大辞典によると、この年月日が、このダンジョンにおいて、一番魔力が薄く、モンスターの出現率が低い日なのだという。


 僕は生えている動植物から、安全地帯を判断し、前に進む。安全とはいえ、A級ダンジョン一階層だ。レベル0の冒険者素人が通っていい道ではない。とはいえ、もし、レベル1~10の魔力を帯びた冒険者が一歩足を踏み入れれば、A級ダンジョンの魔力濃度に汚染され、二歩進めずにモンスターの餌になるだろう。

 歩を進んでいると、目的の場所に着く。それば、どの冒険者も入ったことのない、空気中の魔力濃度が高い森だった。例え、レベル100でもこの森に入った瞬間、昏倒してしまうだろう。魔力を帯びていればの話しだが。


 そこで僕は、目的のモノを見つける。


 本来ならA級ダンジョン一階層にあるはずのないモノ。限定された場所にしかない奇跡の湧き水と同等の価値のあるモノだった。


 光樹。


 A級最下層ににしか生えていないといわれている伝説の樹であり、僕が見つけたのは、その苗である。本来ならA級ダンジョン一階層に生えない伝説の樹、その苗が今、目の前にある。


 この光樹は、敵意や魔力を持つ者に反応し、枝から光りの剣を放つ。無数の枝から放たれる光の剣は、並の冒険者では躱すことはできない。魔術師の防御魔法でさえも、光りの剣は斬り裂くだろう。すでに使い道は考えてあるが、時間は掛かるだろう。

 光樹の苗ゲットだぜ。と、言わんばかりに光樹の苗をダンジョン超裏技辞典に記された鉢植えに入れて、魔力阻害の布を被せる。

 まず誰も立ち入らない、モンスターでさえも近づかないダンジョンの秘密基地に保管しておこう。


 まだ僕には到底使いこなすことができない光りの苗だけど、いずれその時が来るまで枯れさせず大事に育てていこう。




 その後の研究で光樹と枝は、切っても枯れない限りは遠く離れても繋がっており、魔力を込めれば枝だけでも光りの剣を生み出すことに成功した。僕は、この光りの剣を地上の神話に準えて『クラウ・ソナス』と名付けた。


 僕は魔力0のまま、ダンジョンに潜り続け、魔石、魔宝石、魔核石を掘り当て、研究と冒険費用に充てていく。

「伝説の雷の槍ゲットだぜ。名前はケラウノスと名付けよう」

「伝説の海の矛ゲットだぜ。名前はトリアイナと名付けよう」

 こうして僕はレアアイテムを乱獲し続けるのだった。


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