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64 亜竜種

よろしくお願いします

 以前から冒険者の間である噂が流れていた。

 現在、自衛隊はA級ダンジョン攻略に望んでいる。武具や防具は魔力の伴う特注品であり、一般の冒険者が使っているのよりも質が高いといわれている。

その研究実験をB級ダンジョンで行っているというのだ。とはいえ、それが事実なのか嘘文なのか、僕の周りに知る者はいない。なにより、B級ダンジョンも危険なモンスターが多数いるなかで、実験なんてできるかも怪しいところだ。そんな噂を少し脳裏に過ぎったが、僕は変わらずB級ドキューダンジョン五十階層に挑んでいた。

 さすがに五十階層だけあって、モンスターの強さも半端なかった。なによりも手強いのは亜竜種の存在だ。


 亜竜種。


 まさしく最強種ドラゴンの別種みたいなものだ。その強さはドラゴン程ではなく、とうか、今の人類にドラゴンに勝てる方法はみつかっていないが、人類がなんとか勝てる存在が亜竜種である。その存在は多岐に渡り、人の膝程の大きさから全長100メートル級まで存在している。草食系、肉食系に魔石や魔宝石のみを噛み砕いて食べたり、ダンジョンに漂う魔力のみを吸収したりと食事方法も様々である。

 C級ダンジョンにも存在するが、一体のみであり、皮膚の堅さや速度に攻撃力も弱く、B級ダンジョンの亜竜に比べて全く違ってくる。一番違うことといえば、その頭脳だろう。人間は肉食動物相手に囲ったり、罠を仕掛けたり、遠距離武器でなるべく獲物に真正面から戦うことを避けて勝ってきた。しかし、ダンジョンのモンスターは知恵があり、罠を張っても破られ、逆に罠を張られて全滅し、囲んでも隙を突かれて突破され、遠距離攻撃も上手く躱されて、為す術無く失敗に終わっている。


 僕はネットの情報で、各国の軍隊や冒険者が亜竜種に敗れたというニュースを何度も見ており、それだけ亜竜種は危険な存在なのだ。

 そして今、僕達は五体の赤竜の亜種と戦っていた。

 大きな翼を広げ、空を飛翔し火炎を吐くレッドドラゴン亜種は凶悪なモンスターである。僕は防御魔法を張り、炎を防ぐ。

 召喚士であり、裏ジョブで魔法騎士である僕は魔法を使えることができる。炎には水であり、厚い水の膜で自分達を覆いなんとか防ぐことができているが、飛び回っているレッドドラゴンを墜とさない限りはどうしようもない。


「リリカ。『歌』を頼む」


「はい」


 リリカは王笏をマイクのように構え、歌をうたう。その歌声が聞こえる一帯が結界のように煌びやかに輝き、一瞬でステージへと変える。

 スキル【ファッサネイト・ソング】は、リリカのサッキュバスとしての能力と天性の美声と音感、大舞台で人々の心を捉えて放さない魅力、そして本人の努力の賜物である。今はBWダンジョンで舞台も控えており、プロのソプラノ歌手に日夜習っており、高音も低音も最高領域まで引き出せていた。

 五体のレッドドラゴンの内、三体は重度の状態異常となり、レッドドラゴン同士で襲い合う。さらに軽度の状態異常となった二体のレッドドラゴンは、先程の勢いはなく、襲い掛かる仲間であるはずの三体のレッドドラゴンの攻撃を躱しつつ、リリカを襲おうとするが、近づけば近づくほどリリカの魅了は強くなり、前に進めなくなる。


「今だ!ステラ」


「はい!」


 ステラ・ジ・サジタリウスが弓と矢を番え、レッドドラゴンに向けて放つ。雷を伴う矢はレッドドラゴンに突き刺さると、内部から雷撃で破壊していく。亜種とはいえ、レッドドラゴンの皮膚は硬い。それでも次々と放たれる矢は、レッドドラゴンの皮膚を貫いていく。無論ドワーフが作り上げた弓と矢に、膨大な魔力を載せたことに加え、狩猟民族であるケンタウレとしての血と弛まない訓練と努力の成果であろう。

 飛んでくる矢から逃れようとすると、リリカによって状態異常となっている、仲間のレッドドラゴンに襲われる。まさに退路を塞がれた状態で、レッドドラゴンは地に墜ちる。そこを僕が剣で止めを刺す。


 本来なら並の冒険者なら太刀打ちできないレッドドラゴンも、特性を鍛え上げた彼女達の敵ではなかった。


「さすがだねえ。あのレッドドラゴンをこうもあっさり倒すなんて」


 岩陰に隠れていたファブリケ・ジ・ダンカイザーが僕達を褒める。


「いやいや、ファブリケが出てくれればもっと早く片付いたよ」


「そうですよ。手伝ってくださいよ」


「ふふん、今日の私は出番待ちなのだよ」


 ステラとリリカは不満を漏らすが、ファブリケはどこ吹く風のように気にはしない。


 彼女、ファブリケ・ジ・ダンカイザーは魔女である。


 僕が彼女と出会ったのは偶然であり、C級ダンジョンで身を潜めながらアイテム探しをしている最中に僕を見つけたのが彼女だった。他の召喚モンスターと違い、自分から進んでカードに封印されたのも彼女が初めてだった。

 封印された理由も外の世界が気になるからであり、僕視点から見てみたいというのが、彼女の理由だった。


「まあ、しばらくはこのままでいさせてくれたまえ、諸君」


 ステラとリリカはなにか言おうとしたが、僕が片手を上げて済まないとジャスチャーすることで口を閉じ、先を急ぐとした。




 僕こと、乙橘勇大は、仲間と呼べる召喚モンスターと共にモンスターと戦い、必要であれば身を隠してやり過ごしながら前を進んでいる。今僕達がいる場所は幾つもの山脈が連なる山岳地帯で、いつもどこかで火山が噴火していた。レッドドラゴンはそういう火山をテリトリーにしており、他にも火属性のモンスターが多く生息していた。そのため、火山灰が酷く、空を灰がいつも覆い、日中でも夜のように暗かった。

 しかし、その先を越えると森林と川、そして海が広がり、比較的安全な地帯が存在していた。無論、凶悪なモンスターも存在するが、B級ダンジョンでは大人しい部類だった。

 僕達はここで休憩を取る。


「出でよ。オオカミ」


 召喚カードを使って、オオカミであるアマテ・ジ・ロックドアーを召喚。


「よろしくお願いします。戦うこと以外はお供します」


 相変わらず臆病な台詞を吐く。

 そして、もう一枚。この頃になると、僕も魔法騎士としてのレベルが上がり、新しい魔術を習得できるようになった。それこそ召喚スキルである。魔法騎士は、レベルが上がることによって、山門クララと同様に召喚カードを五枚手に入れることができるのだ。

 ちなみに騎手ことライダーのジョブを持つ山門クララは、このまま剣の技術を高め、剣士としてレベルを上げることができれば、魔法騎士になることができるだろう。


「出でよ。デルピュネ」


 僕は今まで無かった十一枚目の召喚カードでモンスターを召喚する。カードから新しい召喚モンスター、翼を生やした半人半竜が顕現される。


 そう、ラミアがいた蛇の迷宮に立ち寄った理由は、彼女達の主であった魔女の財宝であったが、その中にいたのが彼女だった。彼女はずっと財宝の保管庫で水晶の中で封印されていたのだ。

 パフェは語る。彼女達のいた異世界では、蛇を信仰する人間が多く、特に半人半蛇は神に準えることが多いのだという。特に人の背中に鳥の翼が生えた半人半蛇は、重宝されていたとのことだ。その中でもデルピュネは、蛇ではなく竜の尾である。

 新しい召喚モンスターであるが、彼女は、前の十体の召喚モンスターとは違い、奇跡の湧き水の力は得ていない。そのため、召喚モンスターとしてのプロテクトは外れていないのが現状である。やりようは幾らでもあるのだが、無闇に外すと召喚カードの契約からも外れてモンスターとして襲ってくるので、注意が必要である。そこはじっくり考えていくとしよう。


 基本召喚モンスターの渾名は、自分達自身で付けて貰っている。


 パフェ・ジ・スィートは、デザートが美味しかったからであり、ステラ・ジ・サジタリウスは、自分達がいた異世界と星の並びと名称が違うことに感銘を受けたからである。

 デルピュネは、彼女達のような自由意思はない。だから自分で勝手に名前を考えることができないため、仕方なく僕がつけることにした。


「メリュジーヌ・ジ・エキドナ」


「あい。ごしゅじんたま」


 メリュジーヌは、水晶の封印から解き放たれたばかりか、精神も体も幼い。まだ十歳も満たない容姿に見える。


「アマテと一緒に周囲の警戒を頼む」


「あい、わかりまちた」


 ぺこりと頭を下げる。デルピュネは護りの能力に長け、アマテの索敵能力を合わせれば、安心して休むことができる。


 僕達はしばらく腰を下ろして、この先どうするかを考える。五十階層の階層ボスまでまだまだ先だろう。ギルド『エウメニデス』から支給された地図を開き、今までマッピングしてきたルートと重ね合わせる。当たり前だがダンジョンは疑似異世界であり、ネットも通じないためスマホも使えない状態である。灰で黒く濁っているものの、その上は青い空が広がっており、海から遠くを見ると地平線も見える。こうして冒険していると、ダンジョンの中では無く別世界そのものである。

 マジカルポシェットから食べ物を出して、食事を摂り、疲れがとれたら冒険を再開するとしよう。そんな時である。


「ご、ご主人様!に、人間が・・・、たぶん自衛隊の人が倒れています!」


 どうやら、僕達に小休止をとらせてくれないらしい。


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