表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/154

6 奇跡の湧き水という小さいキセキ

よろしくお願いします

6 奇跡の湧き水という小さいキセキ




 僕はとあるダンジョンでモンスターと戦って勝利を収める。そのモンスターをカードに封印して、サマナーカードが一枚完成した。これを十回繰り返し、十枚のモンスターカードを作りあげることができた。だけどこれだけで終わりじゃない。カードのモンスターを召喚する前にするべきことがあった。


 ダンジョンの中でも最難関と呼ばれるダンジョンが存在する。

 ダンジョンはD級からA級まであり、A級ダンジョンが難易度が高く冒険者でもプロと呼ばれる者でなければ攻略できないとされている。

 そのA級ダンジョンの中でもS級と呼ばれている三つのダンジョンである。

 まだ自衛隊でさえ、この三つをクリアしていない。そのダンジョンの深層には奇跡と呼んでいいほどの力が存在し、冒険者に叡智を与えるという。ただし、その情報はネットの噂話程度であり、真相は疑わしいと言われている。


 ただし、普通のダンジョンにも奇跡の一部が存在する。それが奇跡の湧き水だ。その量は微少でチロチロと流れる程度であり、人が触れたとしても少しだけ変化がみられるだけで、すぐに効力は薄れてしまう。本来はS級ダンジョンの奇跡の泉と呼ばれる場所で得られる力で、レベルの低い冒険者では辿り着くことのできない場所である。

 しかし、この奇跡の湧き水なら小さな羽虫程度の大きさのモンスターであれば、奇跡の泉と同じ力を得ることができるのだ。とはいえ、最下級の小蟲なら上級の巨大昆虫に変化する程度である。


もちろん、僕が奇跡の湧き水を浴びても意味はない。でも、サマナーカードに封印されたモンスターは別だ。カードによって縮小化されたモンスターなら、奇跡の湧き水の多大な奇跡を得ることができる・・・と、思う。これは『ダンジョン超裏技大辞典』に書かれていた奇跡の湧き水の能力を、封印されたレベル0のモンスターに浴びせればどうなるかの実験も兼ねている。


 僕はネットで急に出現したという巨大インセクトモンスターの情報を頼りにC級ダンジョンに来ていた。装備は、老戦士の間の師匠から譲り受けた物と、ほぼダンジョンで拾ったアイテムだ。

 大抵の冒険者はドロップアイテムをギルドショップに提出し、鑑識スキルを持つ店員によってどのような効能を持つかを知ることができる。戦闘には向かないスキルだが、アイテムを知るには大事な能力ともいえる。

 僕はダンジョン裏技大辞典にある有効なアイテムがドロップできるエリアで、アイテムをドロップし、売らずに装備している。


 そして噂の巨大インセクトモンスターをD級ダンジョン五層山林エリアで探し、ようやく見つけることができた。

 それは小さな羽虫型モンスターだったのだろう。今では歪な羽のついた巨大な怪物である。本来なら相手をせずに逃げ出すべきだが、自分が来た理由は、あのモンスターの先にある。 

 僕は木々に隠れながら少しずつ巨大羽虫に近づき、一般で売られているクロスボウを取り出して、巨大羽虫に向けてトリガーを引く。矢の鏃には特殊な魔石を仕込んでおり、強い衝撃を与えると爆発する危険物になっている。矢は巨大羽虫に当たり爆発する。だけど、羽虫にダメージはなく、僕の存在に気づいたようで、僕に向かってキシュシュシュシュッと不快な羽音を鳴らし、木々を薙ぎ倒しながら向かってくる。

 僕はその場から離れ、逃げる。矢をクロスボウにセットし、レバーハンドルを回して弦を引く。そして振り向きざまにトリガーを引き、矢を放つ。

ドゥンッドゥンッと爆発するが、巨大羽虫は低空飛行のまま速度を落すことはない。徐々に僕と巨大羽虫の距離は縮まっていく。

 捕まったらおしまいだ。もう少しであの場所に誘き寄せることができる。少しずつ少しずつだけど、巨大羽虫は矢の爆発によって掠り傷を負っていく。これはあの巨大羽虫を守っていた魔力が剥がれている証しだ。本来ならこんなことはないのに、膨大な魔力を御しきれていないため脆いのだ。


しばらくして魔力の防壁を失った巨大羽虫は矢に羽を撃たれて、バランスを崩して落ちる。そこが目的の地点だった。落ちたと同時に、僕は魔術を使いボタンを押す。次の瞬間、シューッと白い煙が幾つも吹き出し、巨大羽虫を中心に白く覆っていく。

 設置型殺虫剤だ。僕は殺虫剤をホームセンターから買い込んで罠として設置したのだ。本来なら巨大羽虫は、魔力で守られてなんの効果もないけど、その守っている魔力が剥がれおちたことにより、羽虫にとっては猛毒と化していた。巨大羽虫は苦しみだして、空を飛ぼうと足掻くが、僕は矢を放つ。今度は爆発しない魔石の矢だ。矢は巨大羽虫に刺さりダメージとなる。

矢が何本も突き刺さり、痛みか苦しさか悶える巨大羽虫。しばらくして巨大羽虫は裏返しになり動かなくなる。もしかしたら再生し動き出すかもしれないが、巨大羽虫を殺すのが目的じゃない。


 巨大羽虫の死骸を避けるように先に進み、安全かどうかを確かめてからガスマスクを外す。しばらくすると、幾多の巨大な虫の死骸が落ちていた。どれも喰われた痕があり、共食いした結果、あの巨大羽虫一匹だけ残ったのだろうと推測できる。まだ生き残りがいるかもしれないと警戒しつつ、ようやく目的の地まで辿り着いた。

 微かにチョロチョロと吹き出ている流水。

 間違いない、奇跡の湧き水だ。だけど今にも途絶えそうな程下へと流れる水は弱々しかった。

 僕は懐から十枚のサモナーカードを出して、念じながら一枚ずつ水に掛けていく。十枚丁度かけ終えたところ、奇跡の水はぴたりと止まった。これで十枚のサマナーカードは奇跡の力を得たはずである。

 僕は急いで山林から出て、ダンジョンを去る。思った以上に順調に進んでいる。まだ始まっていないが、幸先が良いとはこのことだろう。


次回投稿は2月29日13時頃となります

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ