45 召喚モンスター会議
よろしくお願いします
一般人でも気軽に入れるビッグワイドダンジョン、通称BWダンジョン。
ここの一階層と二階層は、もっともファンタジーと称してかまわない街並みだ。レンガ、といっても普通のレンガではなく、地上の技術で作られたレンガは古代中世の物と比べても強固で丈夫にできている。そのレンガの建物が建ち並び、さらに幾つもの商店が路上を賑わし、冒険者やそうでない一般人が行き交いしている。
城と呼ばれるものまでが幾つか存在し、日本ダンジョン協会や大手ギルドが使用し、BWダンジョンの見世物の一つとなっている。
まさに大アミューズメントパークと化しているBWダンジョンの片隅に小さな建物があり、乙橘勇大という冒険者が一人で借りていた。その建物にフードを被った人物が数人ぞろぞろと入っていく。
「これで全員集まったかしら」
建物の一室に大きなテーブルがあり、そこに九人が集まり席につく。
一人がフードを外すと、それはハイエルフのパフェ・ジ・スィートだった。そして次々とフードを外す。
ダークエルフのカフェ・ジ・ビター。
サッキュバスプリンセスのリリカ・ジ・モリガン。
ケンタウレのステラ・ジ・サジタリウス。
花の妖精人のアンティア・ジ・チアフラワー。
フローズンのエイレネ・ジ・アイリヴァー。
オオカミのアマテ・ジ・ロックドアー。
女天狗のヤタ・ジ・ハイペリオン。
セイレーンのメルジナ・ジ・ネレイス。
席が二つほど空いているが、乙橘勇大は地上の学校で勉学に励み、もう一人は欠席である。こうして、円卓会議と呼ばれている話し合いが行われた。
実際召喚モンスターである彼女達は、召喚士である乙橘勇大が近くにいないと召喚できないのだが、奇跡の湧き水の力により遠隔で行動することができるのだ。これが露見すると、かなりの大問題が起きるので彼女達は見バレしないように集まる必要があった。
「というわけで、先のケーネス戦の後、勇大があなたの仲間達に貞○を奪われそうになった件なのだけど」
「ち、ちょっと、ま、まってください!」
ハイエルフのパフェの言葉にセイレーンのメルジナは真っ向から反対する。メルジナは首と手首を嵌めるギロチン枷を付けられていた。
「か、彼女達は主様の貞○を奪っていません!確かに襲おうとしたかもしれませんが未遂ですぅ」
「この報告書を見ると、ケーネスをぶった斬った後、人魚の群れに囲まれてパンツを脱がされていたということだけど・・・」
パフェはメルジナを睨む。メルジナは真っ青になりながらも反論する。
「うう・・・、で、でも、彼女達人魚ですよ。わ、私みたいに足を魔術で作れないですし、尾ヒレですから、そういう行為は無理ですよ。しかも、こちらの船に戻ってくる時間なんて数十秒ぐらいですよ。いくらなんでも無理ですよ」
「人魚ってあれだろ、別に行為しなくても卵にピーッを掛ければガキが生まれんだろ?その間にやったわけじゃねえよな」
そう言ったのはダークエルフのカフェだ。
「そういえばそうですね」
ケンタウレのステラも頷く。
「で、で、で、でも、それだとご主人様が早○だということに・・・」
アマテはゲームをしながらニヘラと笑いながら応える。今の彼女はオオカミの姿ではなく、背が高く髪が腰まである美少女の姿である。怖がりの彼女は人前では獣の姿でしか表さない。
「いや、いくらなんでも早過ぎじゃろ、アマテ」と、ヤタ。そして続けて言う。
「それはさておき、これはしょうがなかろう、ヒック。奴等は人魚じゃぞ。メルジナとお頭の訓練により、ダンスやコーラス、ある程度の槍の扱いや集団隊形ができるようになったのは、たいしたものじゃ、ウィイ。それ以上の人間の道徳観念を教え込むのは難儀なこっちゃ」
「ヤタさん、また朝から飲んでるわね」
パフェが呆れ顔でヤタを見る。ヤタはダンジョン攻略に出ない時は、酒を飲んでいる日がないというぐらい飲んでいる。日中はコンビニのビールを買い、夜はBWダンジョンにある飲み屋で呑んでいることが多く、勇大が迎えに行くのがザラである。
「いや、まあ、ちょっとな、ちょっとだけじゃぞ。というか、話しを逸らすなパフェ。わっちが言うとるのは、眷属達を躾けるのは大変じゃということだぞ」
「そ、そうですよ!彼女達をここまで育てるのは本当に苦労したんですから」
「うう、そう考えると、私の眷属のリリム達も心配です。あの子達、勇大様の連絡を買って出てしばらく戻ってこないことがあるですよぉ。もしかしたら勇大様となにかしているのかと思うと」
サッキュバスプリンセスのリリカは夫の不倫疑惑に悩む新婚妻のようなことを吐露する。
芸能人として多忙な日々を送るリリカは、ついついリリムであるリノ、リコ、リタの三人の内の一人でメッセンジャーとして勇大の所に言ってもらうことが多い。その所為か、勇大とこの三人は仲が良く、やきもきしてしまうことが多い。
「ほらほら、こういうことは疑ったらキリがないじゃろ。今回の事は手打ちということで、二度とこういうことが起きんようにするのが一番じゃろ、うぃっく」
「確かに・・・、これ以上の内容は、わたし達にはきつすぎるわ」
パフェが両手で顔を押さえる。これ以上この話をしていると、皆暴走しかねない。なんていうか倫理に触れてしまいそうだ。
「すーっ、はあーっ、ふう。よし、話しを変えましょう。ケートスを倒した時、勇大はあれを使ったと聞いたけど本当なの?」
「あれとはレベル倍加拳か?」
フローズンのエイレネが応える。
「・・・あれを拳というのもあれだし、ネーミングセンスが問われそうだけど。そうよ。スキルやバフを使わずに一時的に体内で練った魔力を増幅させレベルを上げる。正直、眉唾ものだと思っていたけど、勇大は実践本番でやったのよね」
「ああ、一瞬だが魔力が増大し、あの大海獣ケートスを真っ二つにしたな。少し信じられないことだがな」
「そういうことができるのって、半神半人くらいじゃねえの?人間種にそういうことできんのか?」と、カフェ。
「ううん、不可能じゃないと思う。人間種ってなんだかんだ未知数なことが多いから。だから勇者なんてものも生まれてくるわけだし」
「で、でも、あの時の主様は凄い疲労だったわ。生半可なポーションやヒーリングじゃ効果なかったし、ハイヒーリングやハイポーションを使ってやっとって感じだったし」
人魚のメルジナは、ケートス戦を思い出す。大海獣ケートス戦後の乙橘勇大は疲労困憊で、レアアイテムや高度な魔術を使わなければ、自分で立つことも難しかっただろう。
「つまり使いすぎると命に関わるかもしれないということね」
「なくはないのう」
「まあ、命を削って最終奥義を放つのは少年漫画の王道だがな」
「エイレネ。我が君は漫画の主人公ではない」
「わかっているが、ロマンはロマンだ」
フローズンのエイレネは少年漫画を読み漁っている所為か、かなり毒されていた。とはいえ、窘めたケンタウレのステラも娘子歌劇団や2・5次舞台の影響をかなり受けているが。
「普通はリリカちゃんみたいに王冠や錫杖を付けたりしてレベル上昇をするべきなのよね。私が好きなアニメも衣装が変わったりして明確なパワーアップをしているし、もしくは訓練によるレベル上げをするとか。瞬間的にレベルを上げるなんて体に悪いと思うわね」
ううん、と首を傾げる花の妖精人であるアンティア。
「とにかく、勇大にはそんな無茶なレベル倍加なんてしないよう言い含める必要があるわね」
パフェの締めの言葉に、皆うなずき賛同する。カフェだけが、なんでパフェが仕切っているのかと不満顔だが。
その後、乙橘勇大の学校の先輩である稲実アスカの話題になる。目下のところ、彼女達のライバルは人間種の稲実アスカであろうと。稲実アスカと自分達のマスターが同じ学校に通い、同じギルドに所属し、仲が良いことで、これ以上の進展はあるのかが議論された。会議は異様に盛り上がりを見せ、最後に何故かハイエルフのパフェとダークエルフのカフェとの殴り合いが始まり、後日試合で決着ということで会議はお流れとなった。
こうして召喚モンスターによる報告会議は終了したのだった。
次回投稿は4月16日です




