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42 トリアイナの矛

すみません

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 大間田は信じられないものを見て、少し混乱していた。

 普通の魔術師なら氷の塊を出すことはできるだろう。風の刃も見たことがある。しかし、巨大な氷山を幾つも出し大海獣ケートスを留めるなんて誰ができようものか、あまつさえ、二十メートルはありそうな巨大天狗を召喚して、ケートスを竜巻で斬り刻むなんて異常過ぎる。一体彼女達のレベルはいくつなのだろうか。


「大間田さん」

 そして、その二人の召喚士である乙橘勇大が船内に戻り、大間田に声を掛ける。


「凄まじいな、君の召喚モンスターは・・・」


「大間田さん、ここでケートスを倒します」


「ええ?!」


 あれだけの攻撃を受けながら、なおもこちらに向かってくるケートスを倒せるのだろうか。


「ケートスは満身創痍です。倒すなら今しかありません」


「しかし、どうやって倒す?あれほどのモンスターを倒すなんて、神話級の武器である神剣か神槍の類いでなければ無理だ」


「できます」


 乙橘は、後ろに控えていたメルジオを見る。彼女の手には槍を携えていた。


「彼女、メルジナ・ジ・ネレイスと、彼女の手に持つ神鎗『トリアイナの矛』なら」


「神鎗?どこでそれを・・・」


「それは、まあ秘密です」


 乙橘は左手の人差し指を口に当てる。

大間田は少し逡巡した後、こくりと頷いた。ここで時間を掛けて悩まなかったのは、時間を掛けて悩むだけ手遅れになる、自衛隊としてダンジョンを潜ってきた経験によるものだろう。


「わかった。君の指示に従おう」


 今この難局を乗り越えるには、乙橘勇大という冒険者に賭けるしかなかった。




 ガガガガガガッ。

 氷山の一つが崩れ去る。ケートスは傷だらけになりながらも前に進む。本来ならここで退いてもよかったのかもしれない。しかし、ケートスにはできなかった。それは彼にとって驚異となる敵が現われたからだ。


 『英雄』と呼ばれる敵が。


 今ここで倒さなければ、より大きな力を持ってやってくる。モンスターとしての本能と呼ぶべきだろうか、ケートスの危機察知能力は、あの小さな船に対して危険を告げていた。

 氷山の壁を抜けると、いつの間にか濃霧がケートスの周囲を覆い尽くす。それが人間の魔術であることにすぐに気付いた。この霧で視界を遮り、このまま逃げ切るつもりだろうか。だがこれくらいの霧ではケートスの感知能力を防ぐことはできない。

 視界が見えずとも、船がどの方向に逃げているか等わかっているのだ。逃げる船、追うケートス。しかし、逃げる側よりも追う側の方が早かった。


「【オーシャンズスピアー!】」


 船から海に落ち、人魚に戻ったメルジナが矛を構えて叫ぶ。

 ケートスに向かい、三本の大きな水柱が上がりケートスに向かってくる。本来なら避けることもできたはずだが、怪我が癒えないケートスはもろに水柱を受けてしまう。水柱ごときケートスの巨体は揺るぐことはない、自身の強固な皮膚と肉体に対する自信がケートスにはある。が、三つの水柱は鋭利な刃へと変わり、ケートスをいとも簡単に貫く。


 グオオオオオオオオオ!


 ケートスが叫ぶ。それだけで海が大きく揺れる。致命傷ではないが、ケートスの動きが止まる。

 理解できなかった。連なる氷山から始まり、次は切り裂く竜巻、そして鋭利な水の刃だ。あの船にはどんな魔物が乗っているというのだ。


次回投稿は4月13日23時です

次は間違えないよう気をつけます

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