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41 クラーケン、そして・・・

よろしくお願いします

 B級ダンジョン十階層の階層コアは小島にあるという情報は掴んでいる。僕は地図と空に微かに見える星の位置を見ながら、小さく見える島がそうだと確信する。

 しかし、そのまま安全に進めるかというと、そうでないのがB級ダンジョン『ドキュー』である。ふざけた名前とは裏腹にネームド・ダンジョンに相応しく難易度が高く、何人もの怪我人や死傷者を出しているエリアであった。


「来ます」


 最初に気づいたのは、やはりセイレーンのメルだ。大間田さんはどうするか聞いてくると、僕はそのまま進みましょうと応える。

 その時、長さが三十メートルはある鞭状のものが幾つも海面から現われた。

津波に押し潰されそうになりながらも船は猛スピードで突っ切り、なんとか鞭状の物から逃れる。


「あれは?!」


「あれはクラーケンだ!かなりでかい」


 それは巨大な蛸だった。二十人は軽々と入る自衛隊の船が小さく見えるほど、クラーケンは大きかった。クラーケンは船を捕まえようと八本の足をこちらに向ける。人間の漁師が床に引っ付いた蛸を引き剥がすことができるのは、人間より蛸が小さいからである。今は大きさが逆転しており、クラーケンの足の吸盤が船に付いたら、引き剥がすのは不可能だろう。そのまま捕まり、足の奥にある口に食べられてしまうのは明白だった。追い迫るクラーケンの足を大間田さんは見事な操船技術で避けていく。


「あ、あ、主様!」


「どうした、メル!」


 僕は船の手摺りに捕まって振り落とされないように必死だった。他の面々も同じだったが、メルがなにかを察知したようで、僕に対して必死に報せる。


「もう一体、大きいのが来ます!」


「なんだって!?」


 僕達を捕食しようとするクラーケンに、逃げる僕達の他に別のモンスターがいる?

 その時である。僕達を足で捕まえようとするクラーケンの動きが止まる。そしてなにかに体当たりされたかのように、大きく跳ね飛ばされる。

 それは巨大な鯨のようであったが、凶悪な鋭い牙と長い腕を持っていた。


「あ、あれは?し、信じられない?ここはB級ダンジョンだぞ?出現するのはまだA級ダンジョンのはずだ!」


 大間田さんは信じられないものを見たかのように、目を見開き、口を大きく開ける。


「大間田さん?」


「あ、あ、あ、あれはケートスだ!神話級のモンスターだ!」


 大海獣ケートス。鯨に牙と両手が生えたような巨大モンスター。その名はダンジョン超裏技大辞典にも書いてあった。

 体当たりをされてよろめいたクラーケンだったが、すぐに体勢を立て直しケートスに襲い掛かり、八本の足はケートスに絡みつく。ケートスの体にクラーケンの八本の足の吸盤が張り付き、ケートスは両腕で引き剥がそうとしても剥がせず、そのまま窒息死に追い込まれる。しかし、ケートスはその鋭い牙でクラーケンの胴に噛みつき、ガシガシと食べていく。まるで怪獣映画を見せられているようで、二大巨獣の決闘は凄まじく、僕達の乗る船は荒れる海に飲み込まれるのに抵抗することしかできなかった。


 そして負けを認めたのはクラーケンで、足を引き剥がして逃げようとするが、ケートスは両腕で羽交い締めにし、クラーケンの胴の下にある脳に食らいつく。クラーケンは抵抗するが、最後には食べられ、八本の足は海に沈んでいく。


 クラーケンを食べ終えたケートスは、次は僕達を標的に定めて襲いかかってくる。クラーケンと違い、ケートスは明らかに泳ぐのが早い。このままではすぐに追いついてしまうだろう。だけど、その時には、エイレネの準備はできていた。


「エイレネ!」


「ウォール・オブ・アイスバーグ!」


 エイレネが叫んだ瞬間、巨大な氷山が幾つも連なって、ケートスの行く手を塞ぐ。ケートスは潜って氷山を越えようとしたが、氷山の一角を示す通り、海下にはさらに大きな氷の塊がケートスを塞ぐ。


「ヤタ!」


「おおよ!」


 ヤタは黒い翼を出して空を飛ぶ。そして羽団扇を大きく振る。


「召喚『大天狗』!」


 彼女の言葉に応えて、晴れ渡っていた空が徐々に暗雲に覆われ、そこから巨大な天狗が現われる!


「大天狗『風刃嵐舞』じゃ!」


 大天狗が団扇を振ると、竜巻がケートスを包み、そこから発生する風の刃がケートスを斬り刻んでいく。

 それは大間田さんにとって壮絶な光景だったろう。あの、クラーケンを食べたケートスが、エイレネが出した氷山に阻まれ、さらにヤタが召喚した大天狗によって竜巻の中で斬り刻まれていくのだから。

 ケートスの巨体から血飛沫が上がる。それでもケートスは全身創痍にも関わらず竜巻を潜り抜け、さらに氷山を壊そうと体当たりをする。


「マイロード・・・」


「エイレネ」


「すまない。能力を使いすぎた」

「わっちもじゃ。まだまだ修行が足りんのう」


 エイレネとヤタを見ると、二人とも疲労困憊で船に腰を下ろしていた。召喚された大天狗もすでに帰っている。


「ありがとう、二人とも」

 僕は二人にマジックポーションを渡す。彼女達が出したスキルはEX魔術で、かなりの魔力量を消費する。


「あとは僕とメルがなんとかする」


 僕はメルを見る。彼女は大きく頷くのだった。


次回投稿は4月11日23時頃です

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