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39 ドキューダンジョン

よろしくお願いします

 B級ダンジョン難所と呼ばれているドキューダンジョン。ふざけた名前とは裏腹にB級ダンジョン一位の難関コースであり、B級で唯一のネームド・ダンジョンである。大抵、ダンジョンはA級からD級まであり、さらにそのクラスから一位から最下位に分かれている。大抵はC級ダンジョン四位といった難易度の単位で呼ばれていることが多い。新しくダンジョンができれば、位の入れ替えが行われるのである。A級ダンジョンになると、十一ある全てのダンジョンがネームドであり、A級の中でもクリアできていない三つのダンジョンのことをS級ダンジョンと呼んでいるものもいる。つまり、ダンジョンに名が付けられるのは、それだけ難易度が高いことを意味していた。


 最難関だが、ダンジョン事態はそれほど難しくはない。平原地帯や雪原地帯、熱砂地帯等他のダンジョンでもあるのだが、問題はモンスターの質だった。

 B級ダンジョンのモンスターはどこもかしこもモンスター同士で争いをしており、それぞれ縄張りを作り、自分達の領土を守るために戦っている。目的は階層コアを手に入れるためだ。知能や腕力は他ダンジョンと変わりないはずだが、異世界での人間同士の戦争を見ていく内に真似をするようになり、拙いながらの戦術を身につけていったのである。


 僕こと乙橘勇大は、B級ドキューダンジョンクリアのために十階層を潜っていた。そこはC級ダンジョン四十五階層に似ていた。幾つもの川が入り組み、大河へと繋がる。そこから先は大海原が待っている。


 今回もまた自衛隊が用意した船に乗っているが、今回は操舵士が必要になる。何故ならモンスターが凶悪過ぎて、隠蔽魔術や防護魔術、自動操縦だけでは防ぎきれない場所となっているからだ。船を操るには船舶免許が必要だが、僕は取得していない。そのため、ギルド『エウメニデス』が用意してくれた船舶免許を持つ冒険者が付き添ってくれることとなった。


「よろしくお願いします。大間田さん」


「こちらこそよろしくお願いするよ」


 大間田さんは、『エウメニデス』の社長津上さんから紹介された社員だ。津上社長の信頼も厚く太鼓判を押したので問題ないだろうと思われる。

 こうして僕達は、大間田さんの運転で大河を船で渡っていた。すると、探知石より早く人魚のメルジナ・ジ・ネイレス(通称メル)が、モンスターの存在を感じ取る。


「か、かか河の下にモンスターを感じます」


「数と大きさは?」


「お、おそらく三十程で大きさは一体二メートルぐらいだと思います。じ、自分達の縄張りに入り込んできた私達を迷い込んできた餌だと思っているようです」


「そうか」


 僕は少しだけ考えて答えを出す。


「こちらを自分達の領域内に深く入り込ませてから襲うつもりだな」


「え、ええ、私もそう思います。ですが・・・」


「ですが?」


 メルは、僕にあることを伝える。それに対して頷いた僕は船内に入り、船を操っている大間田さんに会う。


「大間田さん、モンスターが現われます」


「ええ?まだ探知石が・・・」


「メルの探知能力は信頼できます」


 少しだけ懐疑的だった大間田さんだったが、すぐにこくりと頷く。


「君の事は津上社長に教えられている。だから、俺は津上社長を信じることにするよ」


「ありがとうございます」


「で、どういう状況なんだ?」


「すでにモンスターの領域に入っています。数は三十体、こちらが深く領域内に入ったところを襲うつもりです」


「さ、三十体?この河に潜んでいるというのか?」


 大間田さんは目を見開いて驚く。


「ええ、おそらく」


「どうする?ここで引き返すか」


「いえ、メルがなにやら策があるようです」


「策?召喚モンスターにか?」


 大間田さんだけじゃない。大抵のギルドや冒険者は、モンスターは凶暴で召喚士の命令がなければ戦うこと以外の思考はないというのが常識だ。実際ダンジョンではモンスターは冒険者を襲いかかることしかせず、唯一コンタクトがとれたのがエルフ族だけだったからだ。


「一体、どんな策が」


 僕はメルから聞いた無謀に近い策を聞いた際、大間田さんは無理だと言ったが、僕は彼女ならできますと応えた。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 僕と大間田さんはじっと見つめ合う。しばらくして折れたのは大間田さんだった。


「津上社長から言われている。乙橘勇大は特別だと、特別ななにかを持っていると。そしてそれに対して口外しないでほしいと、ね。あの人には恩があるし、尊敬もしている。先程もいったが、俺はあの人が信じる君を信じようと思う」


「ありがとうございます」


 といっても、メルの策がそう簡単に上手くいくとは思えないので、僕も気を引き締める。

 僕達を乗せた船はどんどん進んでいく。壮行していく内に河幅が広くなっていく。ここでようやっと探知石が赤く点滅する。


「ここで停めてください」


 僕は大間田さんにお願いして船を停止してもらう。このまま進めば、おそらくだがネットかなにかがトラップとして出てきて船の動きを止めて、一斉にモンスターが襲いかかってくることを想定してのことだった。


 メルが艦橋に立ち、神矛『トリアイナ』を上げて美声を放つ。


「わ、わたしの名はメルジナ・ジ・ネレイス!大海に住むセイレーン!河に潜む者達よ、姿を表しなさい」


 一瞬河が静まりかえり、次にザザザッと半魚人の群れが河から現われ出でる。上半身が人間、下半身が魚の人魚とは違い、人の形をしているものの全身が鱗に覆われ、顔が魚そのものである。それぞれが槍や剣を持って武装しており、こちらを警戒している様子がみてとれる。


「ガッガギャギャ、ギャァギャァ」


 魚人の一人が前に出て、なにかを喋る。メルはその言葉に頷いて、大河に飛び込み人魚の姿となる。


「スキル『眷属召喚』マーメイド・トルーパー!」


 彼女がそう唱えると、魔法陣が浮き上がり、半人半魚のマーメイドの群れが召喚された。


「ガガガ、ギャギャギャ」


 驚きの声を上げる魚人達。メイはチャーム魔法が掛かった歌をうたい、それに会わせてマーメイドが華やかに歌い踊るように飛び跳ねる。実際の『マーメイド・トルーパー』というスキルは人魚を召喚し、踊るためのものではなく、人魚の群れが一斉に攻撃するえげつないスキルであり、メルの『マーメイド・トルーパー』は、甲冑を纏い、槍を持って整然と攻撃する訓練も行っている。さらにメルは特訓の末、人魚達をダンサーとして活かすことを見出した。なんでもアメリカのアニメ映画とインドの映画を観たことがきっかけになったということだ。


 楽しく踊る人魚達を見て、半魚人も魅取れて警戒心を解き、中には手を叩いているものもいる。これもメルの魅了の魔法が効いているのだろう。

 しばらくして、半魚人の群れの奥から三メートルはある大きな魚人が現われる。僕はメイに通訳してもらいながら、会話をする。


「見事だ。人魚ですらこの大河では稀少なのに、これほど見事な踊りはみたことがない。本来人魚族と我等半魚人族は種族が違い、幾度も相争ってきた間柄だが、これを見せられては襲うことも憚れるというものだ。それに人魚の族長メルジナ・ジ・ネレイスと言ったか。貴様の矛は間違いなく神器であり、もし使われれば我等の全滅をありうる。ここは潔く降参しよう。できれば、貴様の従えている人魚を数匹もらい受けたいものだが」


「そ、それは断りますが、こ、降伏は受け入れましょう」


「ふむ、どうやら貴様は族長でありながら、その船に乗っている人間に仕えているようだが・・・」


 そう言って、半魚人のボスは僕を見る。


「は、はい。わ、わたしの敬服すべき主様です」


「ふむ。貴様を従わせているということは、それなりの人の王というべきだろう。よかろう。この先を通るがいい」


「あ、ありがとうございます」


「だが気をつけることだ。この先には凶暴な魔物が多くいるということをな」


 こうして僕達はなんとか半魚人の縄張りを無傷で渡ることができた。しばらく半魚人の一部は僕達の船を囲むように付いてきて弱いモンスターを捕食したりと、僕達を警護してくれた。


次回投稿は4月9日23時頃です

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