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35 お出掛け

よろしくお願いします

35 お出掛け



 休日の土曜日。

 僕は何故か稲実アスカ先輩と地上で買い物に出掛けていた。


 スマホに土曜日会えないかと連絡が入り、面白い映画があるから観に行かないかと誘われたのだ。

 久し振りに家で休んでいた僕は、先輩だったら友達の二人や三人はいそうなものだけどなあと思いつつ了承することにした。


 駅前で待ち合わせすることになり、僕はパーカーにデニムといったラフな格好で行くことにした。ダンジョンに入り浸っている所為か、おしゃれな格好を着たことがなく、どちらかというと、召喚モンスター達の方が僕よりもおしゃれに詳しいぐらいだ。

 待ち合わせ時間の少し前に駅前で待っていると、アスカ先輩が現われる。アスカ先輩はさすがモデルだけあっておしゃれな格好をしていたが、顔は帽子とサングラスでわからないようにしていた。


「有名人は大変ですね」


「まあ、一応ね~」


 そう照れくさそうにアスカ先輩は応えた。

 二人で観た映画は、ダンジョンの崩落に巻き込まれた家族が、モンスターに逃げたり戦ったりしながら、なんとか地上を目指すというもので、コメディありシリアスありでまあまあ面白かった。その後、先輩の買い物に付き合い、喫茶店でお茶をした。


「やっぱりギガギンのスタッフを助けたのって、乙橘くんだったんだ」


「まあ、そうですね」


「結構ニュースになってたし、B級ダンジョンに入れる冒険者って、うちの事務所だと限られているから、そうなんじゃないかと思ってたんだ~」


「運がよかったんですよ」


「津上社長もかなり喜んでたよ~」


「そうですか」


 僕が言葉少なめに応えると、アスカ先輩は不思議に思ったようだ。


「なになに、そんなに嬉しくないの~?」


「まあ、生き残りがいたのは良かったですけど、やっぱり本業は冒険者なんで。これから本格的にB級ダンジョンクリアを目指さないと」


「でも、人助けしたんだからそこは自分を褒めないと~」


「そうなんですけどね」


 これから先の事を考えると、少し気が重くなる。ギガギンというネット配信者は冒険者としてはかなり無茶なことをしたと思うが、これから先のB級ダンジョンは、金儲けのために危険に命を張り、自分自身を含めて人やモンスターの命等なんとも思わない連中が多数出てくるだろう。そういうことを話して、アスカ先輩とのお茶を濁すのも悪い気がする。


「まあ、そうですね。アスカ先輩が褒めてくれるのは嬉しいことですし、良かったことだと思います」


「またそういうこという~」


 アスカ先輩は照れそうに笑う。まあ、それで良かったと思っておこう。


「そういえば私のクラスにも冒険者がいたんだけどね~」


「そうなんですか?」


「うん。なんていう名前だったか忘れたけど、自分でシグゾーって名乗ってたし」


 シグゾーか、どっかで聞いたような名前である。実際、D級ダンジョンを潜れば冒険者なのだし、そういう生徒は学校にもちらほらいる。


「へえ、僕は知りませんけど、相当名のある冒険者かなにかですか?」


「それが解散したらしいの」


「解散ですか」


「ネット配信者としても、結構名の知れていたみたいだったんだけどね~。C級ダンジョンのモンスターと戦って、結構大怪我を負ったらしいんだよね~。それでけっこう高いハイポーションを使うしかなかったらしいけど、今の実力でC級ダンジョン攻略は難しいのと、大怪我する度に高額のハイポーションを使用するには、割に合わないって判断したんだって」


「そうなんですか」


 ダンジョンでドロップするアイテム『ポーション』。

 国が囲っているエルフが言うには、魔術師や魔女が作るマジックアイテムであり、精製するには優れた魔術が必要とのこと。中でもポーションは怪我をすぐに治す即効性があり、ハイポーションは大怪我でさえ治癒してしまう。ここでいう大怪我は腕や足が千切れても、ハイポーションを飲めばすぐにくっつく程であり、スポーツ選手が高い金を出して購入するほどだ。さらに凄いのがエクスポーションであり、瀕死の人間を生還させるほどで国家の首相や大統領に富裕層が大金を叩いてオークション等で購入する程である。


 ダンジョンの登場で医療面が大きく変わった。それまで手術や入院期間、リハビリ等を全てすっとばして、ポーションを飲めばある程度の怪我は治せるのである。とはいえ、一般人には手に入れられない程高額なため、医師や看護師がなくなるわけではないが。

 稼ぎがほとんどの冒険者がハイポーションを使うのは、かなりリスキーな話しといえる。とはいえ、人知を超えた存在であるモンスターと戦うのだ。大怪我を負うのは当然であり、レベルを上げて強くなるまでポーションやハイポーションに頼るのは至極当然ともいえる。


「そう考えると、冒険者で食べていくのはかなり難しいよね~。自衛隊でもダンジョン攻略では死傷者は少なからず出てるっていうし」


 自衛隊がダンジョン攻略で疲弊すると、国を守り、災害に対しての救助に支障が生じる。だからこそ一般人が冒険者になれるわけだが、シグゾーやギガギンの例を見ると、その危険性は浮き彫りになってしまう。という僕も『ダンジョン超裏技大辞典』を手に入れるまでは、かなり無茶をしていたと思う。


 無論国がなにもしていないわけではない。ダンジョン攻略のため、企業や防衛省に国にお抱えのエルフや魔術師が協力して、武器や防具などのマジックアイテムを作成しているのだ。ポーションも僅かながら生産している。噂ではダンジョンのどこかで秘密裏に試験運用を行っているとのことで、見つけてみたいものである。


「まあ、僕も冒険者ですからね。大怪我しないように気をつけますよ。高いアイテムを使い続けたらこっちが破産してしまいますから」


「そうだね。ダンジョンの広告している私が言うのもなんだけど、無理はしないほうがいいよ~」


「はは、気をつけます」


 その後、先輩の仕事の話しをしたり、ダンジョンで起こった事などを話して今日のお出掛けは終了した。


「また、誘っていい?」


「いいですよ」


 先輩も仕事で忙しく、こんな風に付き合える友達も少ないのかもしれない。少しでもリラックスできるよう力添えしていこう。


次回投稿は4月5日23時頃です


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