32 ギガギンの過ち
よろしくお願いします
B級ダンジョンは確かに手強いモンスターが多いが、大したことはないというのがギガギンの感想だった。今回ダンジョン探索に当たって集めた冒険者は三十名、それなりにC級ダンジョンで名を上げた連中ばかりを集めている。
ギガギンの目的は階層クリアではなく、アイテム収集だと伝えると嬉々として集まった連中だ。腕は立つが金には目がないといったところである。
初のB級ダンジョンということで、最初は緊張の色が隠せなかったが、モンスターを倒しアイテムを見つけると気の緩みも出てくる。特にアイテムが魅力的だった。見つけるアイテムがC級ダンジョンではレアと呼ばれるものばかりで、気がつけば仲間同士で争奪戦になっていた。ここで仲間同士の不和が生まれるものだが、モンスターがなかなかに手強く協力しないと倒せないので、仲間同士思うところがあっても口に出さず、先に見つけた者がアイテムの所持者というルールに則り、なんとか進むことができていた。
ギガギンやスタッフも大喜びだった。なにしろ、緊張感あるバトルにレアアイテムの収集と映える動画を撮ることができるのだから。
しかし、ギガギン達はまだ知らなかったのだ。まだそれがB級ダンジョン一階層の入り口でしかなかったことに。
(こいつはいいぜ。モンスターは強えけど、このメンバーならなんとかなりそうだし、アイテムはレアばかりだし。もっと奥に行けばもっと高価なレアアイテムが手に入るかもしれねえ)
最初はすぐにダンジョン入り口へ戻れる付近を数日掛けて探索していたが、もっと奥までいってみたいという欲望に駆られ始める。それは他メンバーも同様だった。ここにいる冒険者は、遊ぶ金目当てに冒険者になった連中ばかりだ。遊ぶ金に際限等ない、遊べば遊ぶだけ楽しいし、それだけ減っていく。ギガギンは皆を集める。スタッフがカメラを回し、ギガギンがもっとも映える角度から撮影する。
「君達のおかげで、このダンジョン探索は滞りなく進めている。今持っているアイテムも外に出て売ればかなりの金額になるだろう。だが俺は、君達とならもっと奥に進めると確信した。今までは危険性を考えて、すぐにダンジョンから出られるよう配慮していたが、もっと奥に進んでみようと思うのだが、どうだろうか?」
皆こくりと頷く。覚悟のあるいい表情だ。何度も撮り直しただけはある。
三十名の冒険者達は腕を上げて賛成する。これも打ち合わせ道理だ。
上手くいけば最高視聴者数になるかもしれない。今まで炎上して批判ばかりくらっていたが、これからは適度に真面目なダンジョン動画を上げていっても悪くないと考えていた。
先行隊を三名出し入念に周囲のチェックを行って前に進んでいく。
B級ダンジョン二十六位と呼ばれているこのダンジョンは、B級ダンジョンの中では比較的安全と呼ばれている。それでもC級ダンジョンに比べるとモンスターの強さは、ダンジョン入り口にも関わらず、深層にいるC級ダンジョンモンスター程の強いモンスターが潜んでいるわけだが。ギガギンとそのスタッフはともかく、三十名の冒険者の中にはC級ダンジョン四十階層をクリアしている者もいるため、レベルの高いモンスターでもなんとか倒すことができた。
変化はその時起きた。
石が飛んできて先頭の冒険者の頭に当たったのだ。とはいえ、その冒険者は額当てを着けていたため、怪我をすることはない。
「なんだ?」
飛んできた石の方角を見るとゴブリンが二体、こちらに向けて石を投げてくる。冒険者は盾で防ぐが、やはり目がいくのはその着ている高価そうな甲冑だろう。宝石が飾られており、キラキラと光っている。かなりのレアアイテムだとわかる。
五名の冒険者が隊列を離れてゴブリンを捕まえようと動く。その動きを察知したのか、ゴブリン二体は逃げ出す。冒険者達はゴブリン二体を捕まえようと追いかける。
「お、おい、隊列から離れるな」
辺りは雑木林であり、獣道を歩いているが道は細く一列でしか通ることができない。そんな中隊列を離れて林の中に入るのは危険である。しかし、五名の冒険者達はゴブリンの甲冑に目がいって聞く耳を持たずゴブリンを追いかける。
その姿をギガギンも見る。ゴブリンは重そうな甲冑を纏っているにも関わらず俊敏で、雑木林の奥へと逃げていく。このまま五名の冒険者を放って置いて先に進むか、それとも追って行くかが問われる。探知石に反応するのは二体の逃げるゴブリンのみで、他にモンスターはいなさそうである。
「先を行こう。あいつらはゴブリンを捕まえたら、先行隊との合流地点に来るだろう」
ここで五人の冒険者のために時間をとっては隊が崩れかねないため、無難な判断を取る。とりあえず先行隊と合流するのが大事だった。
しかし、合流地点に先行隊もゴブリンを追った冒険者五人も来ず、再びどうするか検討することとなった。だが、その時間を与えられないまま、探知石は周りがモンスターに囲まれていることを伝える。相手はゴブリン数十体。数は多いが包囲を突破できない相手ではない。
「よし、一端ダンジョン入り口まで戻るぞ!ゴブリンが相手なら戻れない距離じゃない!皆、必ず地上に戻ろう」
スタッフがカメラを回し、ギガギンは剣を上げる。この期に及んでなおカメラ映えを気にする余裕はあった。
襲ってくるゴブリン。それに応戦するギガギン達、身体能力、リーチ、腕力、レベルともにギガギン達の方が上であり、決して数に押されようとも相手にできないわけではなかった。
(だけどおかしい。なんでゴブリンがこんなに統制できているんだ?それに槍や盾の使い方に慣れている)
ゴブリン達は一糸乱れず動きで徐々に包囲を狭め、冒険者一人に対し五体で相対している。さらに槍と盾を上手く使い、こちらの攻撃を捌いている。
「ぐあっ」
槍で足を突かれて膝を着く一人の冒険者に対し、一斉に囲んで槍で叩いて戦闘不能に追い込んでいく。そうこうしていく内に一人、また一人と倒れていく。
(これはダメだ!)
ギガギンは逃げた。仲間を置いて、スタッフを置いて一人で逃げることを選択する。
(もうすぐだ、もうすぐダンジョン入り口だ。そこまで逃げれば地上に出られる)
しかし、一本のロープが張られ足に当たり盛大に転ぶ。立ち上がろうとしたが、ゴブリン達に囲まれ、無惨にも槍で何度も叩かれ戦闘不能となるのだった。
次回投稿は4月2日23時頃となります




