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29 馬

よろしくお願いします

 僕こと、乙橘勇大は、現在C級ダンジョン三十階層の平原エリアに来ている。目的は馬だった。ダンジョンには、モンスターだけでなく、馬や兎に牛、ライオンや虎等も存在している。と言っても、魔力によって強化されているため、地上の動物達よりも素早く強い。普通の猟銃で撃っても体を覆っている魔力で弾も通らないだろう。


 その中に馬がいた。野生の馬だ。


 僕はリリカの芸能活動やダンジョン探索の合間を縫って乗馬の練習をしている。教えてくれる先生はステラ・ジ・サジタリウスとパフェ・ジ・スィートだ。

 ステラはケンタウレであり、馬の扱いは慣れている。パフェは、異世界で冒険者をしていた時、乗馬で移動していたこともあるのだという。


「我が君、乗馬は阿吽の呼吸です。馬を理解すること大事なのです」


「馬ってのはね、ぱぱって乗って、そりゃってやれば勝手にこっちの言うこと聞いてくれるもんなのよ。いい、ぱぱって乗るのよ」


 ステラはともかく、パフェは感覚で喋るためわかりにくい。それでも乗馬は僕よりも数段上手だ。僕は何度も乗馬にチャレンジし、その度に振り落とされる。レベルが高くなかったら、大怪我を何度もしていただろう。地上の馬は生まれた頃から飼い慣らされている馬がほとんどで相性が合う合わないはあるかもしれないが、コツを掴めば誰でも乗ることができる。しかし、野生馬は人を乗せる事に慣れていないため、乗った人を振り落とそうとしてくる。それだけ馬は繊細なのだ。


 何故僕が馬に乗ろうと決めたのか。それはダンジョン移動が大幅に楽になるからだ。特にこういう広大な草原エリアでは馬があるないだけで探索範囲も移動距離も違ってくる。

それに馬は危機察知能力が高い。獰猛なモンスターが狙っていると動物的な感覚で察知することができる。草原に隠れて獲物を襲うモンスターに気付き、モンスターよりも早く逃げることができる馬がいれば、危険に遭遇することも減少する。

 まさに馬に乗るということは、ダンジョンへの最短クリアにも近づけるのだ。


 古代の戦争で戦馬の時代があり、どの部隊よりも扱いづらい馬を乗りこなし、どの軍隊よりも自分達に適した陣地に移動し、敵国よりも早く攻め込むことができれば、まさに無双状態だったことだろう。歴史ものだと誰でも馬に乗れるイメージがあるが、体格があり、人に馴れておらず、攻撃的で乗ろうとした人間を暴れてふり落とす、そんな獰猛な馬を乗りこなすのはさぞ骨が折れたと思う。


 仲間にステラがいて良かったと思う。ケンタウレの彼女がいてくれたからこそ、こうして暴れようとする馬を落ち着かせて、乗馬訓練ができるのだから。普通だったら近づこうとする前に逃げられてしまうことだろう。


 僕が選んだのは赤毛の馬だ。足に長い白靴下を履いたような模様があり、僕はこの馬に『ウォーリー』と名付け手なずけようとしている。

 寝食を共にしてみたり、時間を空けては会いに行ってみたり。まあ、育てているのはほとんど知り合いのハーフリンクさん達だが。

 衝撃吸収の服を着て何度も乗っては振り落とされる。それでもなんとか馬の心を理解しようとして、一ヶ月後、ようやく草原を駆ける程度には乗りこなすことができた。ステラとパフェがいなかったら、もっと時間が掛かっていたことだろう。


「馬と心を通わせるのが上手になったな、我が君」


「まあ、下手っぴが少しは上手になったってところかしら」


「ありがとう。二人のおかげだ」


 ステラとパフェの言葉に素直に感謝を述べる。自分一人ではこうはいかなかっただろう。


「まあ、あ、当たり前のことしただけよ。もう、急にお礼言うのやめてよね、照れくさくなっちゃうじゃない」


「いえ、私も我が君が馬のことをご理解してくれて嬉しく思います」


 何故か顔を赤くするパフェと素直に返答するステラ。


「これからどうする?少し馬を走らせてみる?」


「リリカの海外公演でお疲れではないですか?」


「いや、舞台で歌ったのはリリカだし、ほとんど津上社長と会社の人達ががんばって、僕は見ていただけだしね。海外のダンジョンも日本と違って面白かったし」


 僕は北米公演の合間に出掛けた外国のダンジョンを思い出す。とはいえ、日本と違って情報が少ないので触り程度だったけど。


「そうね、この世界もわたし達の異世界の故郷も同じようなものよ。国が違えば風習も生活様式も変わるわ。まずは知ることと理解することが大事だと思うわ」


「名言だね」


「パフェ殿にしてみれば珍しく博識ですね」


「なに、ステラ。ここでわたしと狩りごっこでもする?わたしが猟師役やるから獲物はあんたね」


 背中から弓を抜くパフェに、ぶんぶんと首を振るステラ。


「いえいえ、すみません。失言でした」


 そんな時、遠くで物見をしていたハーフリンクのヨヨさんが戻ってくる。


「おおい、お前さん達!」


「ヨヨさん」


「もうすぐごの辺りのモンスターが騒がすくなりそうだから、今日は引き上げたほうがいいと思うっぺ」


 僕がハーフリンクの里を見つけたのは、つい最近だ。最初は僕に対して警戒心を持っていたが、ハイエルフのパフェの助力により、なんとか受け入れてくれることができた。まあ、他にもダンジョン探索の片手間にいろいろな種族と知り合ってはいるが、ここでは省くとしよう。


「じゃあ、今日はここでお開きにしようか」


「ええ」


「はい!」


 数日後、僕は冒険者の塔でジョブ更新を行った。馬に乗れるようになった僕は魔法剣士から魔法騎士という称号をもらうことができた。


次回投稿は3月30日23時頃となります

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