27 モンスターシンガー
よろしくお願いします
ダンジョンモンスターシンガー『リリカ』。
ダンジョンの会場に彼女の歌が響き渡る。
ライブ会場に来た観客達は、彼女の美しき容姿に魅惚れ、その美声は人々の心を奪われ虜にする。まさにダンジョンの美しき歌姫といったところだろうか。
彼女は自分の事をサッキュバスと名乗っている。確かにその絶世の美貌は、人の域を越えており人外と言われても仕方ないのかもしれない。そしてダンジョンでしか見たことのない彼女を奇異に見る人々がいることも確かなのだ。
三流のゴシップ誌や彼女に対するネットアンチは、彼女の歌声には魅了の魔術が掛けられており、皆惑わされている。実際の彼女は、人の精気を吸うモンスターなのだと。
しかし、最新の魔力計測器で測定したところ、彼女の歌声には多少の魔力を感じられるものの、それはこのダンジョンのレベルを上げた冒険者によくある程度であり、魅了の魔術は感じられないというものだった。
実際今も魔力計測されており、少しでも大きな魔力量が測定されれば、すぐにガーディアンが現われる。ダンジョンの中では比較的安全なニューヨークのダンジョンでさえ、いつ凶暴なモンスターが現われるかわからないのだ。無論凶暴なのはモンスターだけとは限らないが。
ライブは最高潮であり、涙を流す観客もいた。
リリカの周囲を光り輝く妖精が踊り飛び交う。妖精を使ったアトラクションもリリカのライブ演出の一つであり、他の歌手にはできない演出だった。わたしの傍にも赤や青に光り輝く妖精が笑顔で手を振りまいている。幼い頃に思い描いたピーターパンのティンカーベルを想起させる。これは現実なのだ。現実に妖精は存在し、わたしを含めた観客に幻想的な風景を見せてくれる。
さらにリリカのバックダンサーが妖艶なダンスを踊る。
新しく加入したこの三名のバックダンサーは、皆美しい美貌と体躯を誇らしげに見せて、重力を感じさせない動きで観客を魅了する。リリカが召喚したサッキュバスのリリムという設定になっている。
ネット情報では特別観覧席にいる大統領が大層お喜びで、奥方や息子夫婦孫を巻き込んでシャンパン片手に騒いでいるらしい。本来止めるべきボディガードもリリカの演出に我を忘れて見入ってしまっているという。二十万人を容れることができる、このニューヨークダンジョンは、まさに奇跡そのものの最高の一夜となったのだった。
断言しよう、この後も行われるリリカのワールドツアーは、世界中に奇跡を見せることになるだろう、と。
次回投稿は3月28日23時頃です




