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21 漆黒の将軍

よろしくお願いします

 ダンジョンは持ち回りで、我が君こと乙橘勇殿に付き従う。今回のパーティメンバーは、ハイエルフのパフェ殿、ゴーレムのダンカイザー殿、そして私、ケンタウレのステラ・ジ・サジタリウスとなる。

 なんでも青紫の魔宝石という物珍しい魔宝石を手に入れたのだとか。そのために大剣を持った将軍の亡霊に襲われるかもしれないとのことだ。

 確かC級ダンジョンクリアで動いていたはずなのに、何故こんなことになっているのだろうかと思うが、探索好きの我が君のことだ、余計なことにちょっかいだして、余計なことに巻き込まれたのだろう。

 我が君は物見として私を行かせることとした。モンスターの気配を感じたらすぐに報せるようにとのことだ。


 今現在C級ダンジョン十階層だ。ここはサバンナエリアであり、獣のモンスターが多数存在する。サーベルライガーやポイズンジャッカル等、危険な獣が獲物を狙っている。まあC級ダンジョンのモンスターだし、私の敵ではないが。

この階層から上は、モンスター以外に他の冒険者と遭遇する確率が高くなる。下半身が馬状態ではモンスターと間違われて襲われる可能性があるため、魔術で人間の足に変えておくのも忘れない。


転移石を使えばすぐに地上に戻れるのに、なぜか我が君は十階層をうろうろしている。なにか理由があるのだろうが、ダンジョン攻略しないのなら、早くBWダンジョンに戻りたいものだ。BWダンジョンにあるギルドに報告するだろうし、戻ったらなにしようかと思案する。ネットで2.5次元の舞台か、娘子の歌劇団を視聴するのもありだし、今月発売の少女雑誌を我が君にねだるのも悪くない。

 その時である。異様な魔力気配を感じ取ったのは。


「なんだ?」


 空間が歪み、晴れ渡っていた空は黒い雷雲に覆われていく。

 そこに顕われたのは、大きい黒馬に跨がった漆黒の甲冑を着た大柄な騎士だった。背中には160はありそうな大振りの大剣を背負っている。


「貴公が我が君が言っていた漆黒の将軍とやらの亡霊か!」


 私はすぐに下半身を馬形態に戻し、槍と盾を構える。


「何者だ、貴様!」


「ホ、ウ、セ、キ、ワ、タ、セ」


「ふん、貴様が漆黒の将軍の亡霊とやらか。もう知能は残っていないようだな。青紫の魔宝石とやらは残念だが私は持っていない」


 私の言葉にピクリと反応する漆黒の将軍。あ、しまった。魔宝石のこと言っちゃった。ここは駆け引きで私が持っていることにしとくべきだったか。

 どうする。すぐに我が君に報せるべきか?いや、この状態で敵に後ろを見せるのは危険だ。ここは一度剣を合わせてから距離を取って退くのが無難だろう。


「しかし、貴公を魔宝石の元に行かせるわけにはいかない。何故ならここで貴公は我が槍の露となるのだからな」


 私は魔力を開放する。槍が光り出し、バチバチと雷を放つ。私が持つ槍『ケラウノス』は、雷を操る神槍だ。正直、私はこの槍の能力を引き出していない。訓練で多少使いこなすことができたが、この槍の能力はまだまだこんなものじゃないだろう。


「スキル【迅雷】!」


 【迅雷】は超高速で駆けるスキルだ。人馬である私の速度と合わせて超超高速で漆黒の将軍に突進し、槍を突き刺す。この速さに敵の動体視力は追いつくことはできまい。


 ガキッ。


「なに!?」


 しかし、漆黒の将軍の冑を突き刺すはずだった槍は盾によって捌かれる。カウンターで襲い来る相手の大剣。私はなんとか盾で受けるが、上手く捌ききることができず、重い衝撃が襲う。


「ぐうう!」


 私の動きが視えていたのか?私はなんとか距離をとろうとするが、それを読んだかのように敵は大剣を袈裟懸けに振るう。戸惑いつつも盾で回避する。

 違う。この漆黒の将軍は、私の動きが視えているわけではない。私の動きを読んでいるのだ。逆に私は相手の動きがつかめず後手に回っている。要するに私の動きは速いだけで単調だということを示していた。


「くそ!」


 神槍『ケラウノス』の電撃は、奴の盾によって阻まれ効いていない。一撃でも入れば動きを止めることができるのに、鉄壁の盾の前にどうすることもできない。

 それにあの大剣。魔剣であるのは確かだが、まだスキルを使用していない。おそらく神槍を警戒しているためだろう。それでも一撃一撃が重く、バランスを崩しそうになる。

 漆黒の将軍が己の魔力を開放し、黒馬を駆りこちらに迫ってくる。

 自分はそのもの凄い魔力に震え上がりそうになりながらも、負けじと槍から電撃を放ち突進する。長引けばこちらが完全に不利だ、この勝負に賭けるしかない。

 槍と大剣が交差する。相手の大剣を盾で逸らそうとするが、完全に防ぐことができず、その威力に盾と肩当てが吹き飛ばされる。


「きゃっっっ」


 強い!ただ魔力が強いだけじゃない。魔力なら私も負けてはいない、むしろ勝つ自信がある。だけど、これは高度な馬上の技術、血の滲む修練、実践から得た経験の差だ。我が君に拾われるまで狩人でしかなかった自分にはない、騎馬戦の実力差が明確に出てしまっている。

 漆黒の将軍も無傷というわけではなかった。私の槍を擦ったのだろう、軽い電撃を受けて動きが鈍い。

 漆黒の将軍は距離を取る。再度黒馬を駆ってこちらに向かってくるのだろう。今こそこちらが退くべきなのだろうが、私の足は最初の一撃で痺れてしまっている。これでは長く走ることができない。

 漆黒の将軍が黒馬と共にこちらに向かってくる。私も力を振り絞り疾る!

 槍の間合いに入ろうとしたとき、漆黒の将軍が馬から飛び降りた。そして馬だけがこちらに突進してくる。


「しまっ・・・」


 このまま大きな馬と衝突したら無事では済まない。運が悪ければ転倒もありうる。最悪転倒は骨折の可能性が高い。起き上がれない私にトドメを刺すなんて容易なことだ。

 大きな黒馬と私がぶつかろうとした瞬間、一筋の矢が黒馬のこめかみを射貫き、私は難を逃れ避けることができた。


「助かった」


 いや、本当に。

 見ると遠くからハイエルフのパフェ・ジ・スィート殿が弓を構え、素早く二射目を放っていた。普通の矢ではない異常な速さで矢は漆黒の将軍に向かっていく。だが、漆黒の将軍の大剣は見事矢を打ち落としていく。

 この漆黒の将軍の亡霊強すぎる。さすがは故郷の人間種の軍を率いる将だけはある。単体でも強いし、もし亡霊じゃなくて生前の強さだったら、英雄に準えてもいいんじゃないだろうか。C級ダンジョンのモンスターではなく、どのダンジョンにも属さないEXモンスターなだけはある。

 はたで見ると、パフェ殿の矢がはじかれ追い詰められているようにみえる。だが、パフェ殿は速射でパフェ殿自身に注意を引かせているだけのようだ。どういうことだ?

 いや、これは陽動だ。

 瞬間、光弾が漆黒の将軍の左肩を撃ち抜き、左腕が吹き飛ばされる。草原に隠れていた我が君乙橘勇大が魔光石をエネルギーにして放つマジカルマグナムで撃ったのだ。その漆黒の将軍に見つからないようにここまで隠れて忍び寄るとは大したものである。

 しかし、左腕を失った漆黒の将軍は、片腕だけでも軽々と大剣を振るう。その大剣を下から潜るように我が君は躱し、柄から光の剣を生み出す光刃クラウ・ソナスで横薙ぎに斬り裂く。

 左脇から右肩へと下から上で切り裂かれる漆黒の将軍。


「ホ、ウ、セ、キ!」


 それでも、なお剣を振るい我が君を襲おうとする漆黒の将軍。私は神鎗ケラウノスで、漆黒の将軍の頭部を穿つ。電撃の後に雷鳴が鳴リ響く。


「グオオオオオオ!」


漆黒の将軍にダメージを与えることができた。魔力を含んだ雷は、亡霊さえも滅ぼすことができる。


「オ、オ、オオオ・・・オ」


 漆黒の将軍の亡霊は、少しずつ体が崩壊していく。

 強かった。恐らく伝説も眉唾ではなかったのだろう、多少の脚色はあったとしても、漆黒の将軍は亡霊として存在していたのだから。


次回投稿は3月19日23時頃です

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