20 凶戦士
遅れました
よろしくお願いします
僕はカフェに襲いかかっていた凶戦士の前に立つ。構えからして剣道の有段者だろう。かなりの腕前だとわかる。さらに悪い妖精によって魔力と身体能力が格段に上がっている。カフェが手こずるのも無理はない。
「あ、あ、あ、青紫の魔宝石をよこせえええええええええ!」
この男は、異世界の伝説にある将軍ではない。この世界の人間だ。なのに青紫の魔宝石を狙っている。しかも凶戦士になってまで。
「そうか、君が・・・、いや君のパーティが見つけたんだね。最初に青紫の魔宝石を」
おそらく、この凶戦士となった彼のパーティが偶然ダンジョンで見つけてしまったのだ。青紫の魔宝石を。そして現われたのだろう、大剣を持った将軍だったもののモンスターが。
「君がしたいことは、あのモンスターへの復讐か」
「お、お前、知っているのか!あの化け物を!」
「知っているよ。君が、君達がどうしてこうなってしまったのかも、ね」
「そ、そそそ、そうだ!俺はあの化け物を倒す。俺自身の手で、俺の剣で!
だからこそ、俺は妖精に力を貰った。奴に復讐する力を、奴の屍を仲間の弔いにするために!」
やはりというか、青紫の魔宝石の伝説を聞く限りじゃ、元人族の将軍のモンスターなんて、一介のC級ダンジョンを攻略中の冒険者パーティが倒せるわけがなかった。
それこそ偶然青紫の魔宝石を拾った者達への厄災、不特定のエキストラモンスターなのだろう。そんなモンスターに凶戦士になったとはいえ、仲間を失った冒険者が勝てるわけがない。
「残念だけど、この魔宝石を君に渡すわけにはいかないよ。これは正式な場所に送り届けなくちゃならない。君達みたいな不幸を二度と出さないために」
「ワ、ワアアアタアアアアアセエエエエ!!」
凶戦士は叫ぶ。それだけで空気が振動し辺り一面がざわつく。
凶戦士の剣が僕を襲う。疾く、そして力強く凶暴な一撃が。
まともに受けたら剣ごと折られて斬られるし、盾で防いでも同じ事だろう。僕はなんとか躱し、距離をとろうとするが、それよりも早く二撃目がくる。これもなんとか盾で防ごうとしたが、体ごと吹き飛ばされそうになるのを堪えて捌きつつ、剣で応戦しようとするが、それよりも早く三撃目が襲ってくる。
強い。
地上では剣道で、ダンジョンで実戦を磨いた結果だろう。
だけど粗い。凶戦士バーサーカーの呪いで人外な肉体と力を手に入れたが、その魔力により自我を失いかけており、荒々しいが剣技の一つ一つが力任せになっている。
まさに復讐の鬼か、このまま相手をしてもどちらも無傷では済まない。相手は凶戦士で、こちら倒れるまで戦い続けるだろう。ただし、その器と燃料があればの話しだけど。
僕には剣が二振り持っている。今持っているのは片手持ちのグラディウスである。もう一振りあるが、これは持久戦には使えない一撃必殺用だ。なんにしろ、今使うべきじゃないだろう。
激高した凶戦士だが、その瞬間、糸が切れた凧のように力を失う。
「あ、あが?」
膝を着き、弱々しくなる凶戦士。時間切れ丁度だな。無理もない、それだけの凶大な魔力だ。今よりも余程の練度と経験、訓練を重ねた実力のある冒険者でなければ、凶戦士バーサーカーの力に耐えることはできないのだ。中の人は剣道の有段者で基礎体力も申し分なかったのかもしれないが、そもそもダンジョンにおける魔力を扱う実力にはレベルが低かったと言うべきかもしれない。そして、もう一つアンティアだ。花の妖精人の彼女は、自分と凶戦士が相対している時、ずっと花粉を凶戦士の周りに撒きデバフをかけ続けていたのだ。
凶戦士は弱々しく倒れ動かなくなる。
僕は倒れた普通の冒険者に戻ったことと生きていることを確認する。
「アン、彼をしばらく眠らせてくれ。それに蔦を使って彼を縛り上げることもよろしく頼む」
「・・・・」
愛称であるアンと呼んでも、アンティアは黙ったままだ。そうだった、その格好では魂のキャラ名だったな。
「いや、チアフラワー」
「わかったわ。チアフラワーにおまかせよ」
彼女は花粉を両手から出して彼に振りかける。それと同時に蔦を地面からだして縛り上げる。
「ちっ、なんか拍子抜けだぜ。まるでうちがやられ損じゃねえか」
「そんなことはないよ。カフェが頑張ってくれたから、こうやって手際よく捕縛することができた。カフェのおかげだ」
「・・・ふん、たりめえだ」
そう言ってそっぽを向くカフェ。心なしか長耳が赤くなっている気がする。
「これからどうするんです。ご主人様、このまま帰るんですか?」
そう聞いてきたのは、アマテだ。
「いや、せっかくだから、このまま決着をつけようと思う」
「決着?」
「この青紫魔宝石伝説の決着をね」
僕はカフェから青紫の魔宝石を受け取り、ダンジョンの奥をみつめるのだった。
次回投稿は3月18日13時頃となります




