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17 とある冒険者パーティの終わり

よろしくお願いします

 なんでこうなったのか。


 冒険者パーティ『ジェットマックス』のリーダー母淵は、自分達がどうしてC級ダンジョンで全員倒れているのか理解できなかった。相手は一人だ、こちらは6名。しかも全員スポーツ経験者の体育会系冒険者だ。


 そいつはいきなり現われてこう言った。「お前等が拾った魔宝石を俺に渡せ」と。

 その男は全員黒の甲冑を着た戦士であり、フルフェイスの冑を被っていたためどのような顔をしているかわからない。

 母淵達は当初いきなり現われたこの男を甘く見ていた。追い剥ぎかなにかと思っていたのだ。

 確かに珍しそうな魔宝石を拾ったが、何故こいつに渡さなければならないのか。

 どこで噂を聞きつけたのか知らないが、少し痛い目に遭わせれば泣いて逃げていくだろう。そう思っていた。


 基本、ダンジョンで拾ったアイテムは、チームではなく拾った者が原則としてアイテム保有者となる。それを横取りするのは、日本ダンジョン協会が定めたダンジョンルールでは、禁止されているのだ。つまりこいつは、冒険者としてルール破りをしている犯罪者ということになる。


「ああ、持ってる。だからと言って渡すわけがないだろう」


 母淵は身長180㎝、体重は90近くある。ほとんどが脂肪ではなく筋肉でできている。黒の戦士もそれなりに鍛えているようだが、田淵は負ける要素が見つからなかった。

 一度だけダンジョンで絡んできた冒険者5名を一人でのしたことがある。ダンジョン探索中に騒いでいる連中がいるので、うるさいと注意しただけなのだが、気にくわなかったのだろう。その後も自分達の跡を付いてきて、人気の無いところで襲ってきたのだ。


 母淵は高校時代柔道部出身で高校総体に出場経験もある。高校卒業後は普通のサラリーマンになったが、時間があればジムに通っていた。しかし、その日常に耐えられなくなり、自分と同じような知り合いを集めて冒険者になったのだ。

 母淵の実力をなめていた冒険者5名は、投げ飛ばされて意識を失い、日本ダンジョン協会によって冒険者の資格を剥奪された。


「それを渡せ」


 その言葉にメンバーはいきり立つ。


「ふざけてるのか」


「渡せるわけないだろ」


「取れるものなら取ってみろ。貴様のような奴はダンジョン警備隊に突き出してやる!」

 それぞれ己が持つ武器を出し構える。メンバーには総合格闘技の経験者もいる。人間相手ならば負ける要素が見つからなかった。


 母淵の得物は棍棒だ。これを両手で持ち、力強く振り回す。これだけで並大抵のモンスターは吹き飛ばすことができる。なのに、黒い戦士は片手で棍棒を受け止めたのだ。


「ぐぎぎぎぎぎ、うごかねええ!」


 母淵が棍棒で振リ払おうとするが、どんなに力を込めても全く動かない。母淵の異変に気付いた仲間は、持っている剣で黒い戦士に斬りつけようとするが、黒い戦士は寸でのところで避ける。その際棍棒が手から黒の戦士の手から離れ、母淵は盛大にすっ転ぶ。


「うぐぐ、みんなこいつかなりやるぞ!」


 顔面から地面に突っ込みつつも母淵は堪え、痛みを我慢しメンバーに声を掛ける。メンバー五名は、彼の声ではっと気付き黒の戦士を取り囲む。


「なめたことしやがって、もう二度と冒険者ができないよう再起不能にしてやる!」


 だが、結果は惨敗だった。

 相手の圧倒的な力に吹き飛ばされ、力でねじ伏せられた。

 あれは技術と呼ぶものではなく、ただの腕力によるものだった。

 大学でアメフト出身者が強烈なタックルを黒い戦士にかますが、黒い戦士の拳で衝撃吸収に優れたジャケットごと倒される。その後も黒い戦士は剣を抜くことなく、嵐のように自分達を殴り倒していく。


 ダンジョンでは地上の格闘技の技術よりもダンジョンレベルの向上こそが必須だと聞いていた。それでも自分達はスポーツで鍛え上げた才能と技術に勝るものはないと内心思っていたのだ。それがことごとく砕かれていく。

 しかし黒の戦士の力は異常だった。棍棒やハンマーで殴られても倒れることなく向かってくるのだ。そしてこちらが防御しても、その上から一撃を放ってくる。盾で防いだはずなのに、盾を砕き、吹き飛ばされる。


「なんなんだ、こいつは。なんなんだこいつはよおおおお!」


 母淵はひしゃげた棍棒を捨てて、黒の戦士に掴み掛かる。そこから大外刈りで投げるのが、彼の選手時代のセオリーだった。だが、黒の戦士は甲冑を掴んだ腕を掴み、握りしめる。


「うぎぎぎぎぎぎぎ、い、痛いてえええええ」


 自分の腕を握りしめられ悶絶する母淵。ゴキリッと音がして骨が折れたことを知る。そのまま投げ飛ばされる。

 黒の戦士はすでに戦意を失っている魔宝石を持った仲間から無理矢理奪い取った。そして、この男はあろうことかこう言ったのだ。

 これじゃない、と。


「ドコダ、ドコダ、ドコニアル!アオムラサキノマホウセキ!」


 母淵は、その男の咆哮を聞きながら意識を失った。

 冒険者パーティ『ジェットマックス』が他のパーティに保護されたのは、それから十分後であった。どうやら気を失う前に押した救難信号を他の冒険者が気付いたため、モンスターの餌になる前に全員救助することができた。あと少しでも過ぎていたら、彼等の痕跡が残ることなく、全てモンスターの胃の中に納めされていたかもしれなかった。

 入院中の病院で母淵は冒険者を辞めようと心に誓った。


次回投稿は3月15日23時頃です

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