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111 クラン契約

よろしくお願いします。


社マジメ・・・今回のクランリーダー兼冒険者パーティ『ゼラ・ν・ム』のリーダー

 B級ダンジョン。


 A級ダンジョンがプロなら、B級ダンジョンはセミプロと言われているダンジョンである。だが、ほとんどの冒険者はB級ダンジョンで挫折し、C級ダンジョン一本に絞るか、B級ダンジョンをクリアしても、A級ダンジョンに上がらず、難易度の低いB級ダンジョンで済ませてしまう者がほとんどである。

 それだけ、B級ダンジョンは難易度が高いダンジョンといえよう。


 そして、そのB級ダンジョンの中で唯一ネームドが付くダンジョンが、ドキューダンジョンである。


 本来なら、B級ドキューダンジョン最下層に普通の冒険者パーティは行くことができない。大手ギルドの広範囲のマッピングルートと、優れた物資と支援がなければ、短くて八年、長くて十年掛かると言われている程である。


 しかし、唯一中小ギルドの冒険者でも行ける方法がある。


 クランによる一時参加である。クランによる契約を結べば、転送石により最下層へと行くことができる。


 クラン参加者は、スクロールの魔術紙に契約のサインを記入する。


 これで、クランとしてB級ダンジョン最下層に転移することができる。


 確かに手柄は、社マジメがほとんど手に入れることになるが、クランメンバーとして参加したとなれば、その恩恵は大きい。なにしろ、B級ドキューダンジョン攻略というステータスを手に入れることができるのだから。社マジメのネームバリューが上がれば上がるほど、この恩恵は大きい。


 とはいえ、僕と山門クララは、B級ダンジョン最下層へは自力で行き、最下層ボスのいる場所で落ち合うこととなった。


 僕はB級ドキューダンジョンを探索したかったし、山門クララは、元『ギガス』という負い目がある。他クランメンバーから、どんな嫌がらせや悪口を言われるかわからないからだ。


 山門クララがいるので、階層ダンジョン攻略は時間が掛かってしまったが、それでも最下層ダンジョンに到達することができた。ちなみに山門クララとは、仮デュオという形で組んでいる。


 彼女も新しく入った召喚モンスターと仲良くやっているようだ。


 水竜のアオと麒麟亜種のクロ。


 山門キララは、適材適所にドラゴンを使い熟し、手懐け、モンスターを倒していく。


 冒険者としての山門クララはともかく、ドラゴンライダーとしての山門クララは一流だといえるだろう。あと、レベルも上がり、ジョブもドラゴンライダーから、魔法も覚え、ドラゴンナイトへと昇格している。


 B級ダンジョン最下層は、湿地帯で森林と川が多く、天候も不順で雨が降りやすい。まさに蛇が好むエリアといえるだろう。


 以前クリアしたC級ダンジョンで、同じような階層があったが、槍のような痛い雨が降り続き、一歩踏み外したら泥濘が腰まで沈んでしまう、この階層とは比べものにならない。


 モンスターも凶悪で、気配を消すのが上手く、泥濘に嵌まれば一口で食べられる可能性が高かった。


 特に危険なのが中型のワームだろう。


 深い泥に潜み、冒険者が泥沼に足をとられて身動きがとれなくなった瞬間、足元から襲い掛かる。哀れ冒険者は気付いた瞬間、食道の中で窒息死し、胃液で溶かされていく。


「ご主人様、右十歩目に注意してください。ワームが潜んでいます」


「ありがとう、アマテ」


 オオカミのアマテ・ジ・ロックドアーの感知能力がなければ、罠を避けることができなかっただろう。


 僕達は、二馬力の免許不要艇のゴムボートに乗り、川から進むことにした。川から襲ってくるモンスターに関しては、アマテの感知能力と、セイレーンのメルジナ・ジ・ネレイスの歌声で牽制し魅了していく。


 さすがにダンジョン最下層とだけあって、川は急流で、一歩運転を間違えると岩にぶつかるか渦に巻き込まれるか、潜んだモンスターに襲われてゴムボートごと口の中に食べられてしまうのがオチだが、メルジナの魅了により、川のモンスターを手懐けて、危険な航路を避けているため、スムーズに進んでいく。山門クララが何十回か船酔いで嘔吐し、一時ストップすることがあったが。


 大きな川では、山門クララの召喚モンスター、水竜のアオが大いに役に立った。巨大な蛇や鰐に襲われることがあったが、水竜のアオは山門クララの指示により、モンスターに立ち向かっていく。


「アオ!ウォーターランス!」


 水竜は水を操り、巨大な蛇に攻撃を仕掛ける。サッキュバスプリンセスのリリカ・ジ・モリガンのデバフ効果のない本気の攻撃だ。


 巨大な鰐は、固い皮膚をさくさくと斬り裂かれていく。


「ゴアアアアア!」


巨大鰐は最後の特攻とばかりにタックルしようとする。当たればただで済まないだろう。ひるんだ瞬間、噛みつかれて引き千切るまで離さないのが目に見えていた。


「アオ!首!」


 山門クララの短めの合図を即座に理解し、水竜のアオは、突進を避けて逆に巨大鰐に噛みつく。ブチリッと音がして、巨大川鰐を倒すことができた。


 メルジナのデバフ効果で巨大鰐を弱らせていたとはいえ、見事なまで山門クララの的確な指示と短めな合図を即座に理解し行動に移せる水竜のアオとの連携である。


 そういえば、パフェが山門クララにドラゴンの飼育を教えたと言っていたな。それも関係があるかもしれない。


 そんなこんなで僕達は社マジメのクランが二ヶ月掛かったダンジョン走破を、二日掛けて、最下層ダンジョンボスがいる場所まで辿り着くことができた。


   ◆★●


 当初からいた大手ギルド『ギガス』のクランメンバーは二十名。最初は五十名近くいたが、B級ドキューダンジョンの進行の難しさにより、次々と離脱し、今の人数となった。これでは、最下層ボスに勝つことは不可能に近い。


 そこで社マジメは、苦肉の策でクランメンバーを募集することにした。


 所属するギルド『ギガス』には伝えていない。


 個人でクランメンバーを募ること自体、違反ではないからならだ。しかし、暗黙のルールとしては存在する。


 今回のB級ドキューダンジョンを攻略しても、ギルド『ギガス』に自分の居場所は、なくなるかもしれない。それでも冒険者として、なんとしても攻略したかった。


 運が良いのか、ギルド『ギガス』から注意も妨害もなかった。


 もしかしたら即刻辞めるよう言われるかと思ったが、ギルドからの通達はなかった。


 募集して、集まった人数は四十名。


 それなりに凄腕の冒険者パーティが集まってくれた。


 B級ドキューダンジョンが最後にクリアされたのが十五年前。


攻略した冒険者の名前は津上正愛。彼は三十名のクランメンバーで攻略することができたのだという。


その後、幾つかのクランが挑んだが、攻略されることがなかった。聞けば、津上正愛がクリアした時よりも、難度レベルが上がっているのだとか。


 集まった冒険者パーティを見ると、ギルド『グライアイ』から、冒険者パーティ『D・Z』がいるのを見つける。リーダーの八上儀武は、飄々としているが凄腕の冒険者と聞いている。以前、ギルド『ギガス』にいたことも知っている。


 その彼が自分のパーティを率いて、クランに入ってくれたのは嬉しいコトだ。


「ギルド『ノルニル』の所属の冒険者パーティ『L・ベンダー』だ。よろしく」


「ギルド『プライアデス』所属の冒険者パーティ『リリィ・BeLL』です。よろしくお願いします」


「ギルド『グライアイ』所属の冒険者パーティ『D・Z』だ。よろしく」


「ギルド『ブリガンティア』所属の冒険者パーティ『ディ・an・サス』です』


 他にもそれなりに名のある冒険者パーティの名が上がる。総勢八組。


 そして、珍しいデュオ冒険者に彼女はいた。


「ギルド『エウメニデス』所属の山門クララです。今回は同じギルド所属の乙橘勇大くんと一緒に最下層ボス攻略に参加します。よろしくお願いします」


 山門クララの自己紹介にクランからひそひそ話が上がる。


(山門クララ?あの?)

(ギルド『ギガス』を抜けたのは本当だったのか)


(確かここのダンジョン攻略中脱退して、『ハイ・D・レンジア』も事実上解散て聞いたいたけど)


(なのに、出戻りのようにクランに再び参加?)


 グランメンバー全員が、山門クララを見る。


 大手ギルド『ギガス』は、脱退者に対して厳しい対応をする。


 だからといって、目に見える罰を与えるわけではない。


 他ギルドへの移籍を裏から潰したり、依頼をなかったりする等、彼等から冒険者としての仕事を奪っていくだけだ。『ギガス』を抜けるには、裏でトレードされるか、冒険者を辞めるしかなかったのが、今日までの現状だった。


 そのギルド『ギガス』を抜けた山門クララが『ギガス』の冒険者である、社マジメのクランに仮加入したことは、『ギガス』になにかあったことを示すこととなった。


 中には、社マジメと山門クララに対してやましい想像を巡らす者もいたが、それは少数派か、冒険者というものを知らないマスコミか、ネット民だけだ。


 本当に恋仲であるなら、これほど危険な場所に連れて行くはずがないのだから。


 山門クララへの視線を逸らすために、社マジメが前に出る。


「クランに参加してくれた皆、本当にありがとう!これから俺達はB級ドキューダンジョンの最下層ボスと戦う!すでに聞いていると思うが、最下層ボスはヒュドラです」


 その名前が出たときに、外部から来た冒険者パーティも、元々のクランメンバーも気が引き締まる。


 外部からクランメンバーを入れる際、気をつけなければいけないのが、情報伝達と連携だ。同じギルド内のクランメンバーなら、対策や合同の訓練も可能だが、外部からクランメンバーを募る際は、こちらの対策と役割分担を伝えなければならない。中には、外部に伝えず前衛の盾役に差し向けることもあるという。


 外部から来たメンバーが好き勝手に動いて、こちらの作戦の邪魔にならないよう、情報の共有は必要不可欠になっていく。


 すでにヒュドラ対策は伝えてあるし、どういう動きをするかも伝達済みだ。


 B級ドキューダンジョンという、難関ダンジョンを攻略する以上、それなりの覚悟が必要になってくる。外部から入ったメンバーであろうとも、手を抜くことは許されないのだ。


「全員にヒュドラ対策は伝えてある。皆、頭に入っているな」


 社マジメの言葉に全員が頷く。彼は言葉を続ける。


「ヒュドラは強敵だ。異世界でも畏れられた英雄殺しといわれた毒の牙がある。しかし、エルフと魔術師、そして、日本の製薬会社のお陰で新しい解毒ポーションも作られ、対策もしっかりしている。俺が以前負けた時とは状況が違う。今回は勇敢な仲間と共に俺達が勝つ!」


 少し古風な物言いだが、これから強敵に立ち向かう冒険者にとって、これほど心地の良いものはなかっただろう。


 おおおおおおおおっ。


 全員が腕を上げて、声を上げて威勢を張る。

 誰が死んでもおかしくない。B級ドキューダンジョン最下層ボスとの戦いが幕を切るのだった。


お読みいただきありがとうございます。

応援してくれると励みになりますので、よろしくお願いします。

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