110 召喚少女会議
よろしくお願いします
一般人でも気軽に入れるダンジョン。
通称『BWダンジョン』。
そこは見たこともない異世界風の街並みが広がっていた。
家の造りは、全て石レンガであり、中央部には大きな屋敷や城が建っている。さらにそこに住んでいる人々もシックな麻の服を着ており、まるで異世界の住人のようでもある。
そこにある邸宅の一室に、十四名の男女が集まっていた。
部屋の主は、今や兼任で異世界風衣装デザイナーとしている芸能人が借りており、盗聴対策や盗撮対策がしっかりとられている。その一室を借りて、話し合いが始まろうとしていた。
サッキュバスプリンセスのリリカ・ジ・モリガン。
ハイエルフのパフェ・ジ・スィート。
ダークエルフのカフェ・ジ・ビター。
ケンタウレのステラ・ジ・サジタリウス。
花の妖精のアンティア・ジ・チアフラワー。
オオカミのアマテ・ジ・ロックドアー。
フローズンのエイレネ・ジ・アイスリヴァー。
女天狗のヤタ・ジ・ハイペリオン。
セイレーンのメルジナ・ジ・ネレイス。
絡繰の魔女のファブリケ・ジ・ダンカイザー。
ウェアタイガーのティガ・ジ・ドゥルガ。
冥醒の魔女のペルセ・ジ・ナイトウォーカー。
デルピュネのメリュジーヌ・ジ・エキドナ。
そして、僕、乙橘勇大だ。
彼女達は、各々用意された椅子に座り、会議は始まる。
「では、本日、皆に集まってもらった理由は、今後のB級ドキューダンジョン探索についてだ。皆の中には召喚カードから聞いていた人もいると思うけど、別のギルドのクランに傘下しないかとの提案が出ているんだ」
「どうして、私達が他のクランに傘下しなくてはいけないんだ?」
そう応えたのは、ケンタウレのステラ・ジ・サジタリウスだ。中性的な美貌の少女で、ワイシャツにスーツパンツがよく似合っている。
「そうですよ。せっかくここまで階層クリアしてきたのに」
花の妖精、アンティア・ジ・チアフラワーも頷く。可憐な美少女という言葉がよく似合い、来ている洋服もフリフリのゴスロリチックである。
「し、しばらく本格的な踏破もお休みでしたしね、ふひひ。ま、まあ、お陰でゲーム三昧できましたけど。やっぱり痛いのは嫌ですけど、冒険もご主人様となら楽しいですし」
オオカミのアマテ・ジ・ロックドアーも同意のようだ。背の高い美女だが、その美しい瞳の目元には寝不足のためのクマができており、着ている服もTシャツにジーンズとラフな格好である。おそらく昨日も徹夜でゲームでもしていたのだろう。
「今回の件にいたっては、僕が急ぎすぎたのが原因だ。ソロ探索でほぼ半年強でB級ドキューダンジョンを最下層近くまで進んでしまったことが、周囲に知られるようになってしまったからね。僕としては、このまま静かにダンジョン探索を続けて行きたいんだけど」
「静かにねえ。無理じゃね、それ?」
ダークエルフのカフェ・ジ・ビターは、テーブルに肩肘をつきながら事も無げに言い、さらに続ける。キラキラと光る白銀髪色に黒肌の魅惑的な美少女であるが、上下ジャージ姿が台無しにしている。しかもサンダルだし。
「うち等けっこう目立ってるし、えらい奴等には知れ渡ってんだろ。だったら、世間の連中もうち等のこと知り始めると思うぜ。なにせ、この世界は情報化社会だからな」
「そうですねえ。私達が前にいた世界と違って、情報の流れが凄いですし、前の世界だったら一週間や一ヶ月掛かる話しが、ここだと数秒で知れ渡りますからね」
そう語るのは、ネットアイドルをしているセイレーンのメルジナ・ジ・ネレイスだ。パーカーにデニムスカートとラフな服装である。ネット配信の方は上々で、BWダンジョンで行なっているライブも好調だ。
「その分、あらぬ誤報やデマも多いわね。なによ、エルフがダンジョンを牛耳っているなんて!」
ハイエルフのパフェ・ジ・スィートが憤る。光り輝く金色の髪に、歩けば誰もが振り向く美貌の美少女は、チェックのワンピース姿を着ており、それがよく似合っている。
「クソ雑魚エルフの考えそうな事じゃねえか」
「なに、カフェ、ここでやる気?」
「上等じゃねえか、ここでボコってやんよ」
席から立ち上がり、威嚇し合うパフェとカフェ。
「はいはい、二人とも、そういうのは別の場所でやってくれたまえ。今は私達の今後の進路を決める話し合いだよ。話しをぶらさないでね」
パフェとカフェが席から立って、睨み合うところを、絡繰りの魔女ファブリケ・ジ・ダンカイザーが間に入る。幼く愛らしい容姿ではあるが、れっきとした大人の女性である。
「とりあえず、知名度の件は置いといて、本題に入りたいんだけど。このままB級ドキューダンジョンを攻略して、A級ダンジョンか、A級ダンジョンの中でも攻略できていたない未知のダンジョン、S級ダンジョンを目指してもいいと思う。だけど、僕としては、ダンジョン攻略も大事だけど、BWダンジョンのように上階層だけでも、普通の人間が住みよい場所を作っていきたいと思っている。さらにダンジョンクリアを目指す冒険者が、集中して進めるように、悪辣な冒険者の数を減らしたいと思っている」
「それで、一旦ソロでのB級ドキューダンジョンを諦めて、他ギルドに属している冒険者のクランに入って内情を探ろうということか」
ステラ・ジ・サジタリウスが先に答えを言う。
「そうなるね」
「BWダンジョンのように人間が住みやすい場所を作るというのは、悪くないかもね。現に私達もBWダンジョンに依存していますし」と、メルジナ・ジ・ネレイス。
彼女もネットの動画配信からアイドル活動をしており、さらに趣味は、少女漫画である。彼女の部屋には、少女漫画で埋め尽くされている。その一部にBLと百合が入ったらしい。よく、少女漫画の内容について議論しているとのことだ。
「私達もすっかり依存しちゃってるしねえ、この世界に」
「娯楽多いしのう、ここ。日本酒もワインもビールも美味いし」
「私もすっかりこの世界の俗世間の波に揉まれています。サッキュバスなのに・・・」
アンティア・ジ・チアフラワーとヤタ・ジ・ハイペリオンとリリカ・ジ・モリガンが頷き合う。しかも、ヤタはすでに飲んでおり、出来上がっている状態だ。
リリカ・ジ・モリガンは、今の自分の現状に慣れすぎて、どうしようもない状態に見える。なにしろ、彼女は地上でも有名なシンガーであり、歌のダウンロード数は、月末ランキング一位を獲得している。
「とはいえ、そのためにB級ドキューダンジョンのソロクリアを辞退するのももったいないな」と、エイレネ・ジ・アイスリヴァー。透き通るような美しい容貌の彼女は、ゴシックのスーツがよく似合っていた。
「オレもそう思うぜ。オレはまだこの世界の事を知んねえだけかもしれねえけどよ。異世界でも、ダンジョンクリアは名誉の勲章だと言われてたぜ。それをソロクリアを捨てて、他と手を組むなんて、もったいねえ気がするぜ」
そう言うのは、新規参入組のティガ・ジ・ドゥルガである。可愛らしさと美しさの中に獰猛さが同居したような、野性的な顔立ちをしている。Tシャツの上にデニムジャケットと下はデニムパンツといった彼女にぴったりの服装をしている。
彼女はまだ日が浅く、BWダンジョンに溶け込めていない。それでも、近頃ボクシングやプロレスをネットで観戦しているらしい。パフェとカフェが通っているジムにも通い、近々試合が組まれるといわれている。
「そうだねえ、メリュやペルはどう思う」
ここで僕はメリュジーヌ・ジ・エキドナとペルセ・ジ・ナイトウォーカーに声を掛ける。全員の意見は聞きたいところだ。
「うみゅ。たしかに人間にとってダンジョン攻略は一種のステータスときいたことがありまちゅ。しかし、今回の最下層ボスには裏がある気がしまちゅね」
「裏?それは、今回のクラン攻略のことで?」
大手冒険者ギルド『ギガス』が、罠を張っているというのか?
「そうではないよ、ご主君。このB級ドキューダンジョンの最下層には、大きななにかが隠されている気がするのじゃ」
蠱惑的な雰囲気を持ち、誰もが虜にされそうな美貌と雰囲気を持つ美女であるペルセが応える。
「なにかが隠されている?」
「あたち達もそれがなにかはわからないでちゅが、なにか異質ななにかが最下層には隠されている気がするんでちゅ」
うーん。これはどうしたらいいんだろう。なんかソロ攻略するか、クランに入って攻略するかの話しなのに、いきなりB級ドキューダンジョンが怪しいなにかあるダンジョンになってしまったぞ。
しかし、最下層になにかある?
確かに15階層辺りで隠し迷宮があったが、それは他のダンジョンでもよくあることだ。
「実はうちも嫌な予感がしてるぜ」
そう応えたのは、カフェだった。
「あんたも?」
パフェも驚いたように、カフェを見た。
「パフェと同意見なのは腹立つけどよ、まだ最下層に行ってねえけどよ、くせえ臭いがプンプンするんだよな」
「私もよ、この感じ、あたし達の故郷の世界で魔王と戦っていた時に感じたことがあるよのね」
「魔王と戦っていた時?」
僕にとっては異世界、彼女達にとっては故郷である異世界。
そこでパフェは勇者軍に、カフェは魔王軍にいたことは知っている。
「そうよ。いつの時かは忘れちゃったけど、なんか歯に小骨が挟まった嫌な感じがするのよ」
「おお!あの勇者軍にこの人有りと謳われたハイエルフと、魔王軍では支配の魔女の後継者と呼び声の高かったカフェが言うのだから、妾とメリュジーナの危惧もあながち気のせいではないのではないか?」
「別に気のせいとは言っていないよ」
とはいえ、気にしすぎと少し思ってはいたけど。
メリュジーナの半人半竜としての勘と、冥醒と謳われたペルセの経験は馬鹿にはできない。さらに僕はパフェとカフェを信頼している。二人の言葉を信じたほうがいいだろう。
だけど、B級ドキューダンジョンで最下層になにかあるなんて聞いたことがない。もしかしたら、ドキューダンジョン自体がここ数年で変容したとも考えられる。ダンジョンは日々変化しているのだから。
「そんなに怪しい最下層なら、僕達で最下層ボスをクリアしたほうがいいのかな?」
もし、クランに傘下したら、社マジメや山門クララを含むクラン参加者を危険にしてしまう可能性がある。ここは自分達で最下層のなにかを探る必要があるんじゃないだろうか。
「その必要はないと思うぞ。むしろ、クランには傘下すべきだと思うわ」
そう応えたのは、ペルセだった。
「その理由は?」
「おそらくだが、あちらさんも妾達の動きに気づいておろう。であれば、表の最下層ボスはソロで戦って消耗する必要はあるまい。ここはできるだけ温存に徹し、ダンジョンの秘密を妾達で解決すればよいことじゃ」
僕は最初彼女がなにを言っているのか理解できなかったが、すぐに理解する。
「つまり」
「あちらさんの狙いは、御主君ということじゃ」
その言葉で、僕達のクラン参加が決まったのだった。
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