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108 亜種麒麟

よろしくお願いします。

山門クララ・・・元『ハイ・D・レンジア』のメンバー。現『エウメニデス』の冒険者


 僕こと、乙橘勇大は、山門クララの召喚モンスター探しを手伝うこととなり、亜種ドラゴンが多く棲まうB級ダンジョンに潜っている。


 そこで遭遇した水竜。


 水魔法を操る水竜の水流カッターが僕に襲い掛かる!


 僕は盾を持ち、水流カッターを防ぐ。あまりの威力に吹き飛ばされそうになるのを堪える。


「ぐぎぎぎぎ」


 なんとか耐えられそうだけど、盾が持たない。それでも亜種ドラゴンである水竜の威力は落ちているのだから、驚きだ。


 それも全てリリカの歌の効力が続いているという証拠だ。


 歌だけではない。彼女の存在自体がドラゴンのデバフを掛けている。


 僕は彼女に目で合図を送る。


 あまり本気になるなよ、と。


 正直、今のリリカ・ジ・モリガンの魅了とカリスマ力は、以上なほど高まっている。


 歌唱力を高め、美声を極め、歌詞に思いを乗せ、所作から立ち振る舞い、周囲に注目を向けさせる演技まで習得した。さらにダークエルフのカフェ・ジ・ビターから、魔術を習い、魔眼や魔手等を会得している。


 本当に隠し球みたいな存在と化していた。


 隠し球になりすぎて、どう扱っていいか迷う程である。


 所謂強くなりすぎて、公に見せられないのである。


 芸能人としても有名になってきたし、このような強大な力を持っていると、マスコミやネットユーザーから脅威認定されても仕方ない。皆、芸能人の暴言や過ちに対して、過剰に反応し、徹底的に叩こうという気質がある。


 このことが露見すると、どのような反応が返ってくるか目も当てられない。


 だからこそ、半分以下の力加減に抑えてもらっているのだ。


 かといって、水竜が手を抜くことはなく、水の魔力で攻撃してくる。


 幾つもの水流カッターが襲いきり、山門リリカも先程の感動はどこへやら、ドラゴネットのスイに乗り攻撃を避ける。


 彼女は折りたたみ式のクロスボウを数秒で組み上げて、水竜に向けて矢を放つが、水流カッターから逃れるため、距離が遠すぎて威力が落ちていることと、当たる直前に透明ななにか弾かれてしまう。スイによる攻撃も遠すぎて無効だ。


 どうやら、水竜の周りには薄い水の結界が張られており、ある程度の攻撃は防がれてしまうらしい。


「やりまちゅねえ。だけどあたちには無意味でちゅよ」


 メリュジーヌが、地に手をつけると、植物が生え大樹となって壁となり、水流カッターを防ぐ。さらに大樹は、水竜に向かって攻撃を行なう。


 水竜が大樹の枝に胴体を絡め取られていく。


「今でちゅ!」


 メリュジーヌの言葉を受けて、山門クララは、自身の持つクロスボウで矢を放ち、ドラゴネットのスイが口から火炎球を放つ。


 亜種ドラゴンは、ファイアードラゴンのように火属性特化のドラゴンになることが多いが、純種のドラゴンは火、水、木、土、風等の魔術を操ることができる。


 ドラゴネットの火炎球は、水竜の水の壁を吹き飛ばし、山門クララの魔法の矢が突き刺さる。


 ギュオオオオオオオオオオオオオ!


痛みでのたうち回る水竜。


「やった」


「いや、まだいる!」


 僕は安堵の顔を浮かべる山門クララに声を掛ける。


「え?」


 山門クララは、僕の言葉に理解できない様子だ。


 そうだ、まだいるのだ。水竜の他に、身を潜めてこちらの動きを観察し、油断したところに、その牙を喉元に噛みつき、引き裂こうとする竜が。


 僕がその方角に盾を構えた瞬間、木々から亜種ドラゴンが飛び出したのだ。


 それは馬にも似ており、獅子にも似ていた。だが、その顔は竜であり、角と凶悪な牙を見せている。


 一見、麒麟かと思われたが、本来の麒麟は馬の蹄をしており、今目の前にいるのは肉食獣のような手足に爪がある。唐獅子に似てなくもない。それに麒麟は、海外のダンジョンで発見されたが、攻撃的ではなく温厚な瑞獣とのことだ。敵意を向ける人間のところには現れないとも聞いている。


 おそらく麒麟の亜種であろう。頭髪は金色で、全身の毛は黒い。その佇まいは獰猛そのものだ。


 麒麟の亜種は、牙を剥いて水竜を捕縛している大樹に噛みつき、引き千切っていく。信じられない咬合力である。


 自由を得た水竜は再び水流カッターを放つ。山門クララは再び水流カッターの届かない場所まで下がる。


 僕は、水流カッターを避けながら、麒麟の亜種とも戦わざるを得なくなった。


 麒麟の亜種は僕に襲い掛かる。獰猛な爪と凶悪な牙が僕の体を抉ろうとするが、僕は盾を押し出して防ぎ、剣で応戦する。


 僕の後ろには、リリカとその眷属であるリリムがいる。彼女達は敵意を向ける亜種ドラゴンのみに聞こえる魅了の歌を歌い続けている。リリカ・ジ・モリガンの魅了魔術は、麒麟の亜種にも影響があり、動きに精彩がみられない。


 亜種麒麟の爪を盾で捌きながら、剣を突き、亜種麒麟を斬り裂く。


 その時、ドラゴネットのスイの『竜の咆哮』が水竜に直撃する。メリュジーヌの木属性の魔術に押された水竜の攻撃が弱まり、山門クララに反撃の余地を与えたのだ。


 さらに再びメリュジーヌの大樹によって捕縛されてしまう。


 水竜を助けようとした麒麟の亜種だが、僕に阻まれる。


 麒麟の亜種も『竜の咆哮』を放つ。


「つっ!」

 盾で防いだつもりだったが、水流カッターを耐えた盾は、大きくひしゃげて崩壊する。その隙をついて、亜種麒麟が飛び掛かる。


 ドスッ。


 しかし、亜種麒麟は僕に噛みつくことなく、倒れる。その大腿部には、空からその様子を見ていた山門クララが放った矢が突き刺さっていた。


◆★●


「封印!」


 山門クララが唱えると、水竜と亜種麒麟が召喚カードに封印される。


 メリュジーヌによる交渉とドラゴネットのスイの威圧により、二体の亜種ドラゴンは、山門クララの召喚モンスターとなった。


 水竜をアオちゃん、麒麟亜種をクロちゃんと名付け、山門クララは見事三体のドラゴンを手に入れることができたのである。


「どうもありがとう。あなたのお陰で亜種ドラゴンを手に入れることができた」


「いや、山門さんの実力でもありますよ」


「ううん。私一人だったらこんなに強い召喚モンスターを手に入れることはできなかった。報酬の金額の他に、あなたになにかお礼をしたいのだけど」


 今回の手伝いは無償じゃない。それなりに提示した報酬を受け取ることとしている。


「そうですか。じゃあ、メリュとパフェになにか奢ってあげてください。今回の発案者はメリュですし、パフェの後押しもありましたからね」


 パフェ・ジ・スィートは、推しとはパーティを組まないという信念を持っているため、今回の冒険には加わらなかったが、今回手伝う運びとなったのは、彼女の強い後押しがあってこそだ。


「本当にそれでいいの?」


「ええ、かまいませんよ」


「それで、本当にいいのなら・・・」


 山門クララは申し訳なさそうに、ありがとうと頭を下げた。


「これから山門さんはどうします?」


 純粋種のドラゴネットに、亜種ドラゴンとはいえ、かなり強力なドラゴンを手に入れた山門クララだ。単独でもレベルの低いC級ダンジョンなら攻略できるだろう。


「実は、その件について、津上社長とも話したんですけど。とあるクランに参加しようと思ってるの」


「とあるクラン?」


「うん。前のギルドで世話になった人でね。個人的ではなく『ハイ・D・レンジア』としてよく面倒見て貰っていたの」


「前のギルド・・・」


 前のギルドというと、大手ギルド『ギガス』である。基本津上社長と自分は、この『ギガス』を潰すことで動いている。たとえ潰すまではいかなくても、この大手ギルド『ギガス』の横行を止めて弱体化させるのが目的だ。


「それで、その人のクランが、別のギルドの冒険者パーティに、ダンジョン攻略に参加しないかって、募集をかけているの」


 僕もギルド『ギガス』の事をあまり知っているとは言いづらいが、『ギガス』はダンジョントップギルドを誇っているだけあり、他ギルドと連携をとることはない。どちらかというと、傘下に入れて言うことを聞かせることのほうが多い。


 クランに関しても、自分達の冒険者パーティで組ませることが多く、他冒険者パーティを加えることはしないはずだ。


 もしかしたら罠か?


 クラン参加を呼びかけて、他冒険者パーティに圧力を掛ける気だろうか。


 大手ギルド『ギガス』は、実力主義でのし上がるのがモットーだが、対抗する他ギルドに対して、脅迫めいた嫌がらせや、無理矢理な引き抜きをしてきたのも事実である。


 ここで他ギルドに対し、露骨な罠を張ったと思うこともできる。


「募集を?『ギガス』がですが?」


「いえ、どうも彼個人で募集をかけているみたいで」


 彼個人?

 それも予想外過ぎる。


 大手ギルド『ギガス』は、全て上の指示のみで決定すると聞いたことがある。


 個人での独断は禁止されているのだ、と。


「その冒険者の名前はわかる?」


「ええ、社マジメよ。マジメ隊長と呼ばれているわ」


マジメ隊長?どこかで聞いたことがある名前である。


「ええと、クララさんは、本当に参加するの?」


「正直どうしようか迷っていたんですけど、もう別のギルドですし、前のギルドには良い思い出がなかったですから」


 彼女、山門クララは、以前所属していた冒険者パーティ『ハイ・D・レンジア』に対して、呪いを仕掛けられた経緯がある。冒険者として一から踏み出そうとしている今でも、トラウマの一つなのだろう。


「――で、迷っている所、津上社長に相談してみたら、参加していいって」


「津上社長が!?」


 僕は、その言葉に耳を疑う。


 あの人はなにを考えているんだろうか?


 大手ギルド『ギガス』は、潰すべき相手である。


 その『ギガス』所属の冒険者クランの募集に対して、参加していいと了承するとは。


 まさしく敵に塩を送るようなものである。


 これは、あれだな。


 一度津上社長に会って理由を聞いとかないと。


お読みいただきありがとうございます。

励みになりますので、応援よろしくお願いします。

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