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106 なんか全て僕の所為

投稿が遅くなりました

もうしわけございません

よろしくお願いします

山門クララ・・・元『ハイ・D・レンジア』のメンバー。現ギルド『エウメニデス』所属冒険者

 僕こと、乙橘勇大は久し振りにB級ダンジョンに潜っている。といっても、五十階層なのだが。


五十階層といえば、自衛隊の実験場で四聖の内の三聖の竜と戦った思い出の地だ。ここで僕達は山門クララの召喚モンスターを得るために来ている。


 なんで山門クララの召喚モンスター捜しを手伝わなければいけなくなったかというと、エルフのパフェ・ジ・スィートと半人半竜であるメリュジーヌ・ジ・エキドナの強い意向によってである。


 彼女達の半ば強引なお願いにより、僕も彼女の召喚モンスター捜しを手伝うこととなったのだった。


 そして今、僕達の頭上には十頭の飛翔するドラゴンがいて、獲物を狩る獣のように様子を伺っていた。


 岩陰に隠れながら、僕達はかなりのピンチに陥っているのだった。


 飛翔する亜種ドラゴンは、空砲を撃ち威嚇する。僕達を守ってくれている岩が、空気圧によりどんどん削られていく。普通の冒険者であれば、一発くらっただけで吹き飛ぶだろう。


 今岩陰に隠れているのは、山門クララと僕、そしてメリュジーヌ・ジ・エキドナである。パフェ・ジ・スィートは、推しとはパーティを組まないという信念を崩さない様子だ。


 実際、それはいきなりだった。


 山門クララが、ドラゴネットを召喚することも、僕が臨戦態勢をとる暇もなく、いきなり襲ってきたのだ。


「それにしても、どうしてドラゴンは僕達目掛けて襲ってきたんだ」


(それは全てご主人たまの所為でちゅ)


 いきなりメリュジーヌ・ジ・エキドナの声が脳内に響き渡る。


(僕の所為?ていうか、メリュ、お前、念話ができるようになったのか?)


(そうでちゅ。奇跡の滴の効果でもありまちゅが、この状況を生んだのも、ご主人たまの所為でもありまちゅ)


(それは一体、どういうことだ)


(ご主人たま、あたちに奇跡の滴を使用する前にいろんな半人半竜を合成ちまちたよね)


(うっ・・・)


 メリュジーヌの言葉に僕は思わず詰まる。


(いつの間にやら手に入れたのか、有名なのは、あのエキドナ種からジョカ種まで,ありとあらゆる半人半竜の爪や牙、鱗等を合成ちましたよね)


(まあ、そうだな)


 僕は正直に話す。ここで嘘吐いてもしょうが無いと判断したからだ。


細かい所は省略するが、最初の召喚モンスターの一枚に半人半竜を加えようと思っていたのは事実である。


しかし、その課題は難航した。


ダンジョン超裏技大辞典にドラゴンを捕まえたり、コミュニケーションをとる方法は書かれていたが、ドラゴンを捕獲する方法は、当時の僕では無理無理の無理であった。それでも運良く半人半竜の体の一部をあれやこれやで手に入れることができた僕は、しばらく保管することにしたのだった。


(前のあたちだったら、特に亜種ドラゴンも騒がなかったでちゅけど、今のあたちの姿と魔力を感じて、亜種ドラゴンが危機感を抱いたんでちゅよ)


 元々、ドラゴンは自分達の領域に侵入するものに対して警戒する生き物である。ただ通り過ぎるだけなら問題ないが、敵意を持つものに対して容赦はしない。


 亜竜とはいえ、メリュジーヌ・ジ・エキドナの異質な半人半竜の魔力に畏れを感じたということか。


(これは半人半竜とはいえ、ドラゴンを弄んだ罰と思ってくだちゃい)


(厳しいなあ・・・)


そういうわけで、全て僕の所為らしいので、亜種ドラゴンに変な警戒心を持たれていたりするのである。


(しかし、この状況だと、ドラゴンを召喚モンスターにするのって、無理じゃないか?)

 こんなドラゴンが群れをなして襲ってくる状況で、どう山門クララの仲間にしろというのか。


(ちょうどいいとおもいまちゅよ。これで今まで身を潜めていた強いドラゴンも出てくるとおもいまちゅから)


 なんていうか、奇跡の滴の能力を使用して合成した結果、ドライな娘になっちゃったなあ。


 しかし、この状況をなんとか打開しなければならない。


 当の山門クララを見るが、槍を持ったままどうすればいいか困惑している状態だ。


 僕は一枚の召喚カードを取り出す。


「出でよ!リリカ・ジ・モリガン!」


 僕の声に応えて、甘栗色の流れる髪、白い肌、アメジストの瞳。まるでこの世界に存在し得ない、絶世の美しさを持つ少女が現れる。


「わーん。勇大様ぁ!会いたかったですぅ!」


 リリカは召喚されるなり、僕に抱きつく。


「ちょ、リリカ」


「もう、近頃、歌詞作りに写真撮影にレコーディングやテレビやネットの出演ばかりで、サッキュバスなのに寝る暇もなく仕事仕事仕事ばかりで、どう考えても労働基準法違反ですよ、い、は、ん!マスコミの張り込みも鬱陶しいし、ネットの動画作成者は馴れ馴れしいし、テレビ局は尊大だし、もう、セクハラとモラハラとパワハラのジェットストリームですよ!もう、勇大様に会いたくて、会いたくて、何度抜け出そうと思ったことか!」


「ご、ごめんよ」


「もう今日は離れませんから、ずっといますから、ずっとずっとずっといますから!」


 リリカは一歩も退かぬという形相で、ぎゅっと僕を握り締める。


「リリカ様―」


 そこにすぅっとスーツ姿のくすんだ黄金色の髪をした美少年が現れる。身長は僕と同じぐらいで、ケンタウレのステラとは違った、中性的で蠱惑的な容貌である。


「ありがとう、リコ」


「どういたしましてー」


 彼はそういうと、クラシックドレスを着た美少女へと変わる。ちなみに背も小さくなっている。


 彼女の眷属である、リリムのリコである。


 彼女は、僕の代わりにモンスターシンガー、リリカのマスター代行として付いてくれている。他にも眷属のリノはマネージャーとして、リタは護衛としての仕事をダンサー以外にも兼務してくれていた。


「リリカ様―、今日はいいですけど、ライブのスケジュールは溜まりにたまっていますからねー」



「ううう・・・、仕事つらい、仕事嫌だ、ずっとずっと勇大様の隣にいたい。いたいいたいいたい」


 リリカは、涙目でリコを睨む。


 ふう。どうやら彼女達を頑張らせてしまったようだ。


 最初は、リリカ・ジ・モリガンのサッキュバスとしての魅了を上げるための芸能活動だったが、いつの間にかそれが本職のようになってしまった。


「まあ、津上社長に頼んで休みを増やしてもらうよ」


 実際は、リリカ・ジ・モリガンは、ギルド『エウメニデス』の社員ではなく、僕の召喚少女である。だからここまで社畜でなくともいいと思うのだが、売れっ子も大変というわけである。


「やったあ!じゃあ、今度BWダンジョンで一緒に買い物に行きましょう!」


 僕の言葉にリリカが目を光らせる。まるで世界が滅ぶのが回避したぐらいの大喜びである。


「あ、ああ」


「絶対ですよ!忘れないでくださいね!」


 リリカは、思いの外強く僕を抱きしめる。そろそろ離してくれないと、背骨の辺りがミシリッと音が鳴りそうである。


 く、くるしい。


「ああー、リリカ様が仕事疲れですっかりヤンデレにー」


 リコが溜息をつきながら言う。そのジト目の表情は、とても心配している様には見えない。


 そして、もう一人、この状況に戸惑っている少女がいた。


「リリカ様?あのダンジョンシンガーの?!」


 山門クララは、目を見開いて驚きの声を上げる。


「ええ、ああ、まあ・・・」


 さ、様?


僕は山門クララに対して曖昧に返事をする。


「ほ、本物?AI疑惑とかあったけど、本当に存在しておられたんですね」


「山門さん、リリカのこと詳しいんですね」


「私、リリカ様のライブ配信は必ず視聴していて、一日十回以上は聴いています!公式と非公式のファンクラブにどちらも加入しているんです!リリカ様のSNSは必ずチェックしていますし、公式のグッズは必ず購入してます!」


「そうなんですね。いつも応援ありがとうございます」


 リリカ・ジ・モリガンは、先程の我儘はどこへやら、整然とした態度で山門クララの前に出る。


「ああ、本物・・・。本物のリリカ様・・・。なんて、なんてお美しいの」


 まるで、なにかと遭遇した信者の様相である。


山門クララって、こんなキャラだっけ?


なんも考えずリリカを召喚したのはまずかったかな。


「私の本当のマスターが、勇大様というのは内緒ですよ」


「は、はい!絶対に申しません!わ、わたくしめとリリカ様との秘密ということで!リリカ様との秘密・・・ぐふふふふ」


 山門クララは、天にも昇るような恍惚とした表情で舞い踊る。


「それよりも、外のドラゴンをどうにかするぞ」


 僕は大分逸れてしまった現状を修正する。


「わかりました」


 ドラゴンは岩陰に隠れた僕達が出てくるのを待っている。少しでもそこから出るものなら、一斉に襲い掛かるつもりだろう。


 僕は作戦内容を説明し、行動に移すことにした。


お読みいただきありがとうございます

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