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102 メリュジーヌの提案

よろしくお願いします

 中堅ギルド『カリテス』に所属している冒険者クランが、このロックゴーレム三体を倒したが、それは序の口に過ぎない。難しすぎず、されども容易すぎずを目標に作ったファブリケ作のトレジャーラッシュ区域は、中に入れば入るほど、無理ゲーな迷路と罠と使命感に燃えたゴーレムが襲ってくるのだ。


 さて、正直、僕は顔パスで通ることができるわけだが、山門クララがいる以上、そういうわけにはいかない。


 ここは僕も冒険者として、ここを通る必要があるだろう。


 ファブリケが修復したゴーレムと戦うのは、少し気が引けるが、少しでも手を抜いたら、こちらが死ぬ運命にある。本気で戦う必要があった。


「この道は『カリテス』のクランが通るため、不要な諍いになりそうですから、私達は別のルートを通りましょう」


 山門クララの提案に、僕は頷いた。


 僕はギルド『エウメニデス』が配布している地図を頼りに、トレジャーラッシュ場所を探す。


正直、もう知っているが振りは大事である。


僕達二人は、少し遠くなるが、安全な道を選びトレジャーラッシュポイントまで進むことになった。




8メートルはある赤いレッドゴーレムが襲いかかる。


「スイちゃん、お願い!」


 召喚されたドラゴネット、スイちゃんが山門クララを乗せて飛翔する。そして、魔力で生み出した炎弾を放つ。


 ドゴオォオオオオン!


 炎弾が当たっても構わず攻撃を仕掛けるレッドゴーレム。


「くっ」


 赤いロックゴーレムは、大きな岩を振りかぶって、ドラゴネットへと投げる。寸での所でドラゴネットは旋回し、体を傾けつつ岩を避ける。


 さすがのドラゴネットの回避能力と山門クララの操縦技術である。


 確か赤いレッドゴーレムは火に強いんだっけ。ファブリケがアップデートしたゴーレムはそれぞれの魔法属性に対応できるようになっている。


 僕は召喚カードを出して、召喚モンスター、もとい、召喚少女を呼び出す。


「出でよ!メリュジーヌ・ジ・エキドナ」


 僕の呼びかけに召喚カードから、一人の少女が魔方陣から出てくる。


 見た目は幼い少女であり、煌びやかな愛くるしい顔立ちをしているが、その頭部には二本の角、そして額には深紅に光り輝くヴィーヴィルの瞳、背中には竜の翼、仙骨部辺りから緑碧色の竜の尻尾が生えている。


 奇跡の滴の力を使い、各モンスターの遺物を合わせた結果、新たに真化した少女。

 半人半竜のデルピュネである、メリュジーヌ・ジ・エキドナである。


 緑色の竜の皮膚は、青龍により緑碧色へと変化し、さらにこっそり付け合わせたヴィーヴルの宝石により、額には第三の眼となるヴィーヴルの瞳が付いている。それまで下半身が竜の胴体だったが、今は二本足が生えている状態となっている。


「お待たせしまちた、ご主人たま」


「よし、メリュ。空からドラゴネットに乗る少女の支援を頼む」


「わかりまちた!」


 奇跡の滴以後、言葉も覚えてきたように思える。


 僕はマジック風呂敷(仮)から、クロスボウを取り出し、馬のウォーリーに跨がる。


「ステラ、僕達は下から援護を行なう」


「ふっ、任されたぞ、我が君」


 ケンタウレのステラ・ジ・サジタリウスは、人馬形態で弓矢を構える。


 メリュジーヌは翼を広げて空を飛ぶ。


「お手伝いしまちゅ!」


「えっ?」


 いきなり現れた竜の少女に驚く山門クララ。


「ゴア」


 ドラゴネットのスイが、メリュジーヌの言葉に返事をする。


「こちらこそよろしくでちゅ」


 ドラゴネットのスイが竜少女に声を掛け、笑顔で応える竜少女。


「スイちゃん?」


「あたちはあそこにいるご主人たまに仕える、メリュジーヌ・ジ・エキドナでちゅ」


「乙橘くんの?あなたも召喚少女?」


「あい!」


 かけ声と同時に、メリュジーヌは、地中から植物を発生させる。しかし、この区域の植物は育ちがあまりよろしくなく、大きさも疎らだ。それでもレッドゴーレムの動きを止めることに成功する。


 それを見逃さず、僕とステラが矢を放つ。


 矢はレッドゴーレムの両肩に突き刺さり、破壊する。


「ロックゴーレムを砕いた?!」


 中堅ギルド『カリテス』がやっとの思いで倒したロックゴーレムの体を、僕達が砕いたことに驚きの声を上げる。


「山門さん!空から攻撃を!」


「!わ、わかったわ!スイちゃん、火・・・いえ、竜巻を!」


 山門クララの指示により、ドラゴネットのスイが竜巻を巻き起こす。


 両腕を失ない、足が植物で絡まれたレッドゴーレムは、バランスを崩し、盛大に転倒する。


 ズズゥン・・・!


 さて、ゴーレムには核があり、それを源に活動する。彼等は無限に動くわけではなく、周囲にある魔力を吸収して核に溜め込んで動いているのだ。


 だから、ゴーレムの核を打ち砕けば、活動停止するわけだが、胸や腹部、股間に隠されている、どこに核があるのかわからない状態だ。だからこそ、普通の冒険者は全て壊して核ごと打ち砕く必要がある。


 普通の冒険者は、だが。


 僕は躊躇わず、剣をレッドゴーレムの左胸辺りに突き刺す。魔力の流れからここにあるのを理解したからだ。


 レッドゴーレムは足掻くことなく沈黙する。


「ゴーレムが一撃で?」


 山門クララが信じられないといった表情で驚愕する。


「まあ、ゴーレムの魔力の流れがそこに集中しているように見えたんで」


「魔力の流れが?」


「まあ、この話しは秘密でお願いします」


「・・・わかったわ」


 山門クララはしばらく考えた後、頷いた。その後、小声で「これが彼の強さか」と聞こえた気がした。


 正直に言うと、ファブリケが弄ったゴーレムとは何度も修練と言う名の戦闘を重ねているので、どこに核があるのか、おおよそ見当が付く。


 さらに僕は魔力の流れを見ることができる。


 これは魔眼や魔術の類いではなく、アイテムでもない。感覚のようなものに近い。


 ダンジョン超裏技大辞典から得た知識と、自分で得た知識と経験、さらに魔力を練ったり、弄ったりしている内に、魔力の流れを掴むことができたと考えた方がいいだろう。


 津上社長から聞いた話しから、以前の犯罪者冒険者パーティ『コムドレッド』の捕縛作戦の際、ボウクンの核を刺突し倒したことで、僕が魔力の流れを掴むことができるというのを、日本ダンジョン協会や、ダンジョン省が知ったとのことだ。


 一緒に同行した元A級ダンジョン冒険者の山方さん達が、日本ダンジョン協会かダンジョン省と繋がっていることはわかっていたし、知られても問題はないと思う。


 事実、もっとやばいことを僕はしているし、これぐらいの事が露見しても、どうということはないのだから。


 僕自身が疑われているのは知っていたし、これ以上詮索されると、今後のダンジョン探索に大いに影響される恐れがある。


 僕なりに考えに考え、全てを秘密にするより、開示して良い情報は公開して、ある程度緩和させるという応えに至ったのだった。


 山門クララがどこかと繋がっている可能性がなきにしもあらずで、多少わざとらしくも自慢げに見せても良いのではないかと思う。


「取り敢えず行きましょう。ゴーレムが集まる前に魔石がある場所に向かいましょう」


「わかったわ」


 こうして僕達は魔石がある採掘場まで歩を進める。途中、何体かゴーレムが襲ってきたが、なんとか撃退することに成功する。


 さすがに元有名冒険者チーム『ハイ・D・レンジア』所属だった山門クララである。襲ってくるゴーレムに対し、優勢な戦いを繰り広げていた。


 道に途中、僕は気になることを訊いてみた。


「山門さんは、騎手ですよね。ドラゴネットの他に使役するモンスターはいないんですか?」


 そう、騎手のジョブを持つ冒険者は三枚の召喚カードが与えられる。しかし、山門クララが使役するモンスターは、ドラゴネットのスイちゃんだけである。まあ、スイちゃんだけでも冒険者としてのお釣りはくるが。


「・・・」


「あ、話したくないことなら、無理に言わなくて良いですよ」


「ううん。別に話しても構わないよ。実はね、私、スイちゃんに会う前に三体のモンスターを使役していたんだよね」


「へえ・・・」


「結構大事に育ててたし、可愛がってもいたんだけど、ね。ある冒険者パーティに誘われて、クランメンバーとして最下層ボス戦に参加したんだけど。ほぼ全滅で・・・。その時に召喚モンスターも失っちゃって、結構ショックだったなあ。他のモンスターを封印するのも嫌で、そしたら仲間から役立たずって言われるようになって」


 騎手のジョブを持つ者が乗り物を持たず冒険者を続けることに対して、不満を言うのもわかるし、大事に育てて愛着を持った召喚モンスターを失って、しばらく召喚モンスターを持ちたくない気持ちもわかる。


「そうだったんですか」


「そんな時、スイちゃんに出会って、まあ、変われたというか・・・」


「スイちゃんの他には、召喚モンスターを使役しないんですか?」


 正直ドラゴネットの力は強大だが、ソロでやっていくには厳しいものがある。ここはまだ広いから良いが、狭い空間ではドラゴネットの能力を活かすのは難しいものと思われる。


「使役したいと思ったことはあるけど、なかなかいなくて、ね」


「だった良いアイディアがありまちゅ」


 そう言ってきたのは半人半竜のメリュジーヌ・ジ・エキドナである。


「良いアイディア?」


「そうでちゅ。なんだったら、のこりの二枚の召喚モンスターも竜種にするべきでちゅ」


「ええええ、それは・・・、少し無理があるんじゃないかしら」


「そうでちゅか?」


 ワイバーンのような亜竜種を召喚モンスターにしている召喚士はおり、そういう冒険者は大抵A級ダンジョンに潜る腕の立つ者ばかりである。モンスターの中でも亜竜種を使役するのはそれだけ難しいものがある。


「私とスイちゃんはともかく、竜種とコンタクトを取るのは難しいわ。彼等はダンジョンの主と言われるだけあって、プライドが高く、生半可な実力じゃ相手にしてくれないもの。それだけじゃなく、私もそうだけど、スイちゃんとの相性もあるから」


 山門クララは言う。例え、他のモンスターを使役しようとしても、スイちゃんに畏れてカードに封印しないモンスターがほとんどなのだという。


「そのへんは大丈夫でちゅ。スイもそこらへんは理解してまちゅから、それなりに相応しい召喚モンスターなら、納得しまちゅよ」


「思ったのだけど、メリュジーヌちゃんは、スイちゃんの言葉がわかるの?」


「わかりまちゅよ。おなじ竜種ということもありまちゅけど」


 メリュジーヌ・ジ・エキドナは、半人半竜であり、奇跡の滴で合成する際、青龍の遺物の他にいろいろな竜種を合成したため、ドラゴン系の言葉が理解できる等いろいろなスキルを有することができている。少しやりすぎた気もするが。


「スイちゃんは、私が他に召喚モンスターを使役することをどう思っているの?」


「そうでちゅね。ものによりまちゅがおおむね賛成でちゅ」


「そうなの?」


「そうでちゅ。スイはドラゴンライダーとちての資質は、とびぬけて優れていまちゅけど、冒険者とちては、おっちょこちょいで危なっかしくて、見ていてハラハラして心臓に悪いので、他に支えてくれる召喚モンスターがいることに関して助かると思っていまちゅ」


「がーーーん!」


 山門クララが膝を着いてがっくりと落ち込む。


「これは努力ではどうしようもないので、本人が治していくしかないでちゅね」


「そうだね。ははは」


 嬉しそうに感じない笑い声を出しつつ、同意する。


 後日、僕は再び山門クララと一緒にダンジョンに潜り、メリュジーヌと何故かハイエルフのパフェ・ジ・スィートを連れて、ドラゴン探しをすることになるのが、これはまた別の話しとなる。


お読みいただきありがとうございます

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