101 ロックゴーレム地区復興作戦
よろしくお願いします
「乙橘君が、どうやってB級ダンジョンまで最速で行けたのか、わかった気がするわ。普通の冒険者が徒歩で進んでいるのに、一人だけ新幹線を使っているようなものだもの」
「そうですか?」
馬や大きな犬等、乗り物系動物を召喚し、移動を得意とする騎手や騎士等のジョブを持つ者はいるが、ほとんどが斥候として使われることが多い。パーティ全員が動物に乗って移動できるわけではないため、一人だけ動物に乗って移動しても、囲まれて餌食になるだけである。
A級ダンジョン攻略している中には、全員騎乗スキルを持ち、馬に乗って移動している冒険者パーティがいるらしいが、ウォーリーのように、ケンタウレに鍛え上げ、『ダンジョン超裏技大辞典』の情報を元に魔改造・・・もとい、育てたわけではないので、普通の馬の速度で進行しているらしい。それでも普通の徒歩での進行より格段に早いわけだが。
地上の道は舗装されて歩きやすくなっているが、ダンジョンはでこぼこ道であり、草木が生い茂り、泥濘んだ道もあるため、非常に歩きにくい。
そして、モンスターが潜んでいるため、確認を繰り返しながら進まなければいけないため、遅々として進まないのである。
では、道路を作り、舗装し通れるようにしたらと考える人もいるかもしれない。
だけど、これで道路を作るものなら、モンスターにここを通りますと教えるようなものでもあり、罠が張られること間違いなしである。
全長5メートルはあるロックゴーレム三体が冒険者クランに襲い掛かる。
彼等は、僕とは違うギルド所属であり、与えられたデータによると、中堅ギルド『カリテス』の所属する冒険者クランだ。C級ダンジョン踏破の経験もある。
重戦士がハルバードを持ち、ロックゴーレムに一撃を与える。
しかし、ロックゴーレムの皮膚には傷一つ付くことがなく、巨大な拳が重戦士を襲う。
重戦士は盾で防ぐが、その威力は凄まじく、倒れることはなかったが二メートル程後ろに下がる。
前衛五人は大きな盾を構えており、その後ろから弓手達が魔力を込めた矢を放ち、攻撃している。ロックゴーレムは、放たれる矢をものともせず前進し、盾持ちと射手はじりじりと後退していく。
このまま押し潰される勢いだったが、あるポイントに来た瞬間、盾持ちと射手は散開する。ロックゴーレム三体が構わず前進しようとした時、大地に描かれた魔方陣が光り、大きな爆炎が湧き上がる。
ドゴォオオオオオオオ!
周囲には魔法使い数名が潜んで配置されていたのだ。彼等は、魔方陣を作り、罠を張って待ち伏せて、盾持ちと射手がロックゴーレムを誘き寄せる形で、爆炎魔法を放ったのだろう。その威力は凄まじく地形が変わる程だった。
魔法使いは爆炎で見えない中、さらに魔法による爆破を行なう。
ドガァアアアア!
ドォン!
ゴォオオオオ!
まるで戦争映画のような光景に、遠くから見ている僕達も唖然として見ている。
それから五分後、爆煙が晴れたが、ロックゴーレムが歪ながらも健在だった。
「そんな?!」
「効いていないというの?」
「嘘だろ」
驚く周囲の中、重戦士の一人がロックゴーレムの攻撃を掻い潜り、大剣を振りかぶり一撃を加えると、ロックゴーレムのヒビ割れた脛が崩れ、転倒する。
「安心しろ!俺達の攻撃はロックゴーレムに効いている!ここから一気に叩くぞ!」
自分達の攻撃が通じることがわかったクランメンバーが、総力戦でロックゴーレムを叩いていく。魔法使い達もマジックポーションを飲んで、魔力を回復させると、再びロックゴーレムに攻撃魔法を仕掛ける。
十分後、重戦士の放つハルバードが、ロックゴーレムの頭部を砕き、三体のロックゴーレムは沈静化した。
おおおおおおおおおおおおおおおぉ!
中堅ギルド『カリテス』のクランメンバーが勝利の雄叫びをあげる。
「・・・すごい」
僕の隣でその様子を見ていた山門クララが呟く。
確かに凄いことだと僕も思う。
自衛隊や他冒険者クランが探索を断念して、迂回せざるを得なかったロックゴーレムを倒すことができたなんて。
しかし、ここで勝った事に喜ぶのはまだ早いのだ。
何故なら、彼等が勝ったロックゴーレムは低級ロックゴーレムであり、進めば進む程レベルは上がり、ロックゴーレムは強さも堅さも速さも格段に上がっていくのだから。
どうして、僕が知っているかって言われれば、まあ、僕達がロックゴーレムを強くしたわけだし。
あれは二ヶ月と少し前のことである。
僕は絡繰りの魔女ファブリケ・ジ・ダンカイザーを伴い、このロックゴーレムが護る区域に足を運んでいた。
レアな魔石や魔宝石、鉱石を鑑定する。『ダンジョン超裏技大辞典』に記載された記憶を頼りに、僕は一つ一つを見ていく。形、魔力総量、肌触り、硬度、重量、色、これらを精査し、レアの中でもさらにレアな魔石、魔宝石を選んでいく。
全てのレアを奪うつもりはない。
そんな時である。
「ここを護っているロックゴーレムが劣化している?」
「そうだね。おそらくこの地球に転移する以前より、この魔石や魔宝石が発掘される宝物庫を護っていたのだろうね。さらにこの国の自衛隊との戦いで、ほとんどのロックゴーレムが半壊したと思われるね。勇大くんがこの場所に忍び込めている理由も、この区域の警備システムが動作不良を起こしていると考えたほうがいいね」
深くフードを被ったファブリケが頷く。
低身長な彼女は、幼い少女のような姿をしているが、立派な魔女である。
「だったら、僕以外にも足を踏み入れている冒険者がいてもおかしくないんじゃないか」
「それはありえないね。幾らゴーレムが魔力を感知して襲ってくると理解していても、魔力0の状態で、ここに足を運ぶなんて命知らずなこと普通は考えないさ。そして、レベルが上がった今も、この私を連れて結界を無力化するなんて、思いもしないだろうさ」
そう、この区域を護っている警備システムともいえる結界は、ファブリケに頼んでオフ状態にしてもらっている。とはいえ、僕達が帰るときにはオンにしているわけだが。
「つまるところ、ここのロックゴーレムは、本来の力を100%引き出せていないわけだね」
僕は彼女の言う意味を理解しつつも問う。
「で、どうするつもり?」
「勇大くんがいいと言うのであれば、ここのロックゴーレムと結界を修復して、さらに強化したいと思っているのだが」
とんでもないことをさらりと言うファブリケ。
「理由を聞いていい?」
「しばらく放っておけば、ここのロックゴーレムは劣化し、数年と待たず崩壊することだろう。それはそれでいいと思うのだが、声が聞こえるのだよ」
「声が?」
「自分達はまだやれる。この地を護りたい。それが自分達の使命だ、とね」
「なるほど」
ここのロックローレム達は、最後までこの地を護っていく覚悟なのだろう。おそらく、彼等を作った魔術師の命令なのだろうが、それでもそれが彼等の果たすべき指標なのだ。
「どうかね、勇大くん」
この採掘場で劣化したロックゴーレムを修復することは、今後ここを通る冒険者達の最大の壁となるだろう。
つまりは、ファブリケがすることは、ダンジョン踏破を阻むことに他ならない。
いずれ、放っておけば、ここで待機しているゴーレムは動かなくなり、ここを守護するという役目を果たさぬまま、終了する。
本当にそれでいいのだろうか?
冒険とは戦ったり、潜んだり、逃げたり、隠れたりすることによって、得るものがあるのではないだろうか。ただ、相手が勝手に無力化することだけが、本当に冒険することなのだろうか。
「わかった。どうせ、この地には自分達しか足を踏み入れないし、好きにするといいよ」
「ありがとう、それでこそ私の勇大くんだ」
こうして、絡繰りの魔女、ファブリケ・ジ・ダンカイザーによる、ロックゴーレム復興作戦が行なわれた。
ほとんどのゴーレムを修復し、さらに強化する。さらに警備の要となる結界もより緻密に改造を施す。ある意味ネズミ一匹通れない程に結界網を広げていく。
「私達以外の最初の冒険者に対しては、簡単に忍び込めるようにしたいね。それで噂を聞いた冒険者が大量にやってくるという寸法さ」
「別にこの地を護りたいだけなんだから、そこまで罠を張らなくてもいいんじゃないか?」
誰も立ち入らないなら、問題がないように思えるけど。
「わかってないねえ。放っておけば朽ちてしまうゴーレム達だよ。彼等が欲しいのは、なにもせずに風化するよりも、この地に入る不届き者に対して罰を与える仕事を与えることが、彼等の使命に繋がるわけだよ。戦って、この地を護りきる。そういうロマンをゴーレムは求めているわけさ」
「いや、それ君の願望も含まれてない?」
「答えは言わないでおくよ」
工房を作り、自分の手足とも呼べる自家製修理専用ゴーレムとメイド型ゴーレムを用い、半ば娯楽と趣味でロックゴーレムと結界を元通りにし、さらにレベル上げしていくファブリケ。それはまさしく『絡繰りの魔女』の異名に相応しかった。
「修復している間、君も暇だろう。ここにある在り合わせの物で面白い物を作っておいたよ」
「え?」
「対ゴーレム用の修練用ゴーレムさ。ちなみになんでも有りの設定にしておいたから、手加減したら、最悪死ぬから気をつけてね」
そこに用意されたのは闘技場のような広場と無数の異形のゴーレム達だった。皆、剣や盾、槍を持ち、完全武装した兵士の像のようでもある。
大きさは三メートル級~十メートル級。腕が六本あるものや、獣のような牙を持つゴーレムもいる。
「ちょっと待って、ファブリケ!」
こうして僕は、この地の復興している間、ゴーレムと死に物狂いで戦わされるハメになるのだった。
「うふふ、これで完成・・・と」
三日後、ほぼ徹夜でロックゴーレムと結界を修復強化し終えたファブリケは、満足そうに眠りについた。
「本当に修復しやがったぞ、あいつ・・・」
手伝っていたダークエルフのカフェ・ジ・ビターは呆れたように、すやすやと眠るファブリケを見る。
「うう・・・終わった・・・」
満身創痍になりながらも、異形のゴーレム群を倒し、崩れ落ちる僕。
「おめえもあんまり無茶すんじゃねえよ、馬鹿野郎!」
カフェは、僕を抱きかかえる。
「いや、僕が望んだわけじゃ・・・」
正直死ぬかと思った。まさか最高難易度に設定してあるなんて、思ってもみなかったよ。
こうして、この重要度危険区域であり、トレジャーラッシュの中心地となっているこの地の改善に成功したのだった。
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