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10 ゴブリン捕殺作戦

よろしくお願いします

ダンジョンの階級を直しました

10 ゴブリン捕殺作戦




 それは、とある田舎の交番にもたらされた。

 その日夜間勤務をしていた鈴木巡査(31)は、ある緊急の電話を受け取ることとなる。

 ダンジョン外で緑色の化け物を見たというのだ。

 電話の主は、巡査も見知っている中学生だ。わざわざ二駅離れた塾まで自転車で通っており、その帰り道に奇妙な物体が自転車の前を横切るのを見たという。


 さっそく巡査は車を駆り、その見たという場所に向かう。着いた場所は、どこにでもある田舎の畦道だが、携帯ライトを当てて畦道の端を見渡すと、子供のような小さな裸足の足跡が残っていた。その二時間後、近くのコンビニがゴブリンに襲われ、食料品が奪われたという一報が入るのだった。


 鈴木巡査は急いでコンビニに行く。店員は逃げて無事であり、戻ってきた店員と共に防犯カメラの映像を視聴する。そこには三体のゴブリンが店内に入り、荒らされている様子が映っていた。巡査は急いで署に連絡をとり、すぐさま対策本部が築かれるのだった。




 二日後、冒険者と自衛隊によるゴブリン捕殺作戦が行われる。

 参加する冒険者は、C級攻略中とD級攻略中の冒険者達併せて五十名、そしてS級ダンジョン攻略予備軍三十名の自衛隊である。E~F級ダンジョン攻略中の冒険者達は、ほとんど素人か初心者のため、今回の作戦に対し外されている。A~B級ダンジョン攻略中の冒険者パーティは、深くダンジョンに潜っていて不参加という形になっている。

 そこに僕こと、乙橘勇大も参加している。昨日、ギルドからメールが来て、ダンジョンから出たゴブリン捕殺作戦に参加募集に応じたのだ。


 ダンジョンからモンスターが出てくることは少ない。何故ならダンジョンの外であるこの世界では魔力がごく少量しかないからだ。モンスターは、人は酸素が無ければ生きていけないように、モンスターは一定量の魔力が無ければ生きていけない。外に出た瞬間、水から出た魚にように死んでしまう。さらに外世界の空気や水の悪さや紫外線の強さもモンスターにとって有害となっている。皮肉なことに現代社会の問題が、ダンジョンモンスターを外に出さないようにしているのだ。しかし、極少数だけ外世界に出ることができるモンスターが存在する。


ドラゴンとゴブリンである。

 ドラゴンはいうまでもなく最強種族であり、その体表に覆われた魔力は絶大で、ダンジョンを出ても世界を喰らい尽くすことができる。

 ゴブリンは、少量の魔力でも生きることができ、空気や水の悪さにも適応できるのだ。ただし、ダンジョンと違い魔力が護ってくれるわけではないので、かなり衰弱するわけだが。

「では冒険者の皆さん、これからあなた達の役割をご説明しますので集まって下さい」


 自衛隊の方が拡声器を持って冒険者達を呼び、ぞろぞろと冒険者が集まる。僕が他の冒険者達と一緒に並んでいると、一際大きな声が聞こえていた。


「HEYYO!渡る世間は金ばかり、炎上するから金をくれ!で、お馴染みのギガギンだ!今日は、ダンジョンから出た馬鹿なモンスター、ゴブリンぶっ殺し作戦に参加するぜ!

要は一冒険者として、人様に迷惑をかけようとするモンスターをぶち殺しにきたわけだ!

まあ、俺様程の冒険者ならゴブリンなんてイチコロだから。活躍といえるほどじゃねえけど、気になる奴はチャンネル登録よろしくな!」


 自衛隊の説明かと思ったら、ネット配信者の声だった。ギガギンと名乗る配信者の周りにはスタッフと思われる仲間が彼を撮影している。どうやら売名目的でゴブリン捕殺作戦に参加するつもりのようだ。よく見ると、他にもネットに配信か、ネットに写真を載せようとスマホで自分と背景を撮る輩など多く存在していた。

 

 しばらくすると、自衛隊の隊員が台に上がり、作戦を説明する。

 冒険者はC級冒険者、D級冒険者に分かれてそれぞれの役割を与えられた。

 その役割とは、ゴブリンがいると思われる山に入り、ゴブリンを発見したら自衛隊に即知らせるというものだ。発見した冒険者はリストバンドの昨日で自衛隊に連絡し、待避する。あとは、自衛隊が僕のリストバンド機能にあるGPSで居場所を把握し、即座に移動しゴブリンを排除するのだ。

 C級冒険者や自衛隊は山深く、D級冒険者は麓近くでゴブリンの捜索を行うこととなった。


「それでは冒険者の皆さん、無理のないように、なにかありましたらすぐに我々に連絡し、下山するようお願いします」


「「「はい」」」


「それでは始めます。皆さん所定の場所に行って下さい」

 こうしてダンジョン外でのゴブリン探しが始まったのだった。




 与えられた山麓近くでゴブリン探しをする。

 今回はいつものダンジョン装備ではなく、山登りに適した格好だ。そして、武器。

 武器といっても、ダンジョン外での銃刀の使用は禁止されているから、竹刀やバット等の打撃武器だ。ダンジョンなら役に立たない代物だが、魔力で皮膚を強化されていないゴブリンに対しては有効な武器といえる。ちなみに僕の武器は三段警棒だ。


 そんな弱体化しているゴブリンをなぜ八十名の自衛隊と冒険者達で捕殺しようというのか。それは十五年前、ある老夫婦一家が二体のゴブリンに襲われる殺傷事件が起こった。警察官数名が現場に辿り着いた時、ゴブリンが老人男性を捕食し、老人の妻は意識を失ったまま輪姦されていたのだという。以降、ダンジョンからゴブリンが出てくることが数回起こり、何人もの犠牲者がでている。もともとゴブリンは、冒険者を襲うモンスターではなく、老人や女子供を襲うモンスターであり、ダンジョンから出たゴブリンは、自分達の習性に則り、弱者を襲っているともいえる。


 しかし、それが許容できるほどこの世界の人間は甘くなかった。ゴブリンがダンジョンから出てきたら排除するのが基本だ。でも冒険者以外でゴブリンを見た人間は少なく、その異形の姿に強盗犯や殺人犯逮捕に場慣れした警察官ですら臆してしまう。

だからこそ、ゴブリンがダンジョン外で出現した際には、自衛隊と警察官、そしてゴブリンを知る冒険者がゴブリン退治に加わっているのだ。


 開始から三十分、ゴブリンが出たという報告はない。

 僕はゴブリンの足跡はないか、木に登って隠れていないか、前後左右上下に意識を集中する。するとゴブリンの足跡らしきものをみつけた。小学生の裸足の足跡のようにも見えるが、足指の爪痕が大地を抉るようであり、明らかにモンスターの足跡である。この足跡が数分か、数時間前のものかはわからないが、足跡を追って確かめる必要がある。

 その時、微かだが人の叫び声が聞こえた。僕はすぐに腕輪の緊急救難スイッチを押し、その場に向かう。見ると自分と同じぐらいの年齢の少女がゴブリンに襲われているのを発見する。装備からみて僕と同じ冒険者だろう。ゴブリンは一匹しか見当たらず、残り二匹の気配はない。


 少女は腰が引けながらも持っている木刀を振り回し、ゴブリンに威嚇していた。対するゴブリンは今にも襲いかかりそうである。

僕は手頃な石を拾い、ゴブリンに向かって思いっきり投げる。額に石が当たったゴブリンは緑色の血を吹き出し、うずくまる。


「ギャギャギャギャッッツ」


「こっちだ、ゴブリン!こっちにこい!」


 大声で叫び、ゴブリンの意識を少女から僕に向けさせる。そして、後ろに振り返り一目散に逃走した。ゴブリンが叫び声を上げて僕を追ってくるのがわかる。僕は振り返ることなく、走る、走る、走る!

 リストバンドを見ながら山の拓けた場所に出ると、僕は立ち止まって振り返り、手持ちの警棒を持ってゴブリンが来るのを待つ。すると、疲労困憊といった様子のゴブリンが木々の中から出てくる。魔力という恩恵のないゴブリンは体力すら失っていた。

 ゴブリンは額に血を流しつつも、牙と両手の爪を出して襲いかかろうとする。

 その時、パンッと音が鳴り響き、ゴブリンがドサリと倒れる。額には小さな穴が開いていた。

 森から自衛隊の男性が顔を出す。持っているライフルの銃口から煙が出ており、今ゴブリンを撃ったのが、この男だとわかる。連絡した通り腕輪に付いているGPSでこちらの場所を特定し、逃走経路を把握し、射撃ポイントで待ち伏せしてくれていた。まあ、逃げている最中になんの合図もなしに撃つとは思わなかったが、それだけ危険な存在なのだろう、地上に出たゴブリンは。大地に転がるゴブリンの死体、ダンジョンでよく見た景色だが、ダンジョンの外では全く違って見える。


「大丈夫か、君」


「はい。同じ冒険者の方がゴブリンを見つけて、引きつけてくれたので、なんとかこの場所に誘導することができました。彼女のおかげです」


「そうか」


 こういうダンジョン外で起きたモンスター事案に貢献した人は、国とダンジョン協会から表彰される。僕はそれほど興味がないから、第一発見者の彼女が受け取ったほうがいい。

 自衛隊員は、携帯無線で本部に状況を伝える。どうやら残り二匹も自衛隊が見つけて処分することができたようだ。

 その後、冒険者は集められて今回の騒動が終了したことが告げられた。

 僕はいつも通り家に帰って、今日は早めに寝ることにした。


お読みいただきありがとうございます

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