本殿
朝になって学校に着くと、昨日と同じグループでみんな盛り上がっていた。反省を生かせずに、話しかけられずにいると
「おはよ!村崎さんだよね!」
2つ結びの綺麗な子が話しかけてきた。確か名前は南 麻里さんだ。
短いスカートが良く似合うすらっとした手足をしている。
「おはよう、南さんだよね?」
「名前覚えててくれたんだね!昨日さ、ギリギリに着いちゃって、グループにはいれなかったんだよね。せっかく出席番号近いし仲良くしてほしいな!」
「ほんと!?私もグループに入りそこねちゃって、息苦しい高校生活送ることになると思ってたからすごく嬉しい!麻里ちゃんって呼んでいい?」
「いいよいいよ!私も月乃ってよばせて!月乃ってめっちゃ可愛いよね!目がくりくりしてて、タレ目で、、、守ってあげたくなっちゃう顔って言うの?」
ストレートに褒められたことがあまりない私は、自分の顔が赤くなるのが分かって、顔を伏せた
「月乃ってば可愛いー!」
その後も麻里ちゃんと他愛のない話をしながら、楽しい一日を過ごすことが出来た
校門の前で手を振って別れた先に、手を振りながら河童が待っていた
「お嬢!迎えに来たっす!」
「河童!」
突然の河童に驚きつつも、周りに生徒がいないことを確認して安心した。
河童のことが見えない人からすれば、私は独り言を話す変な女だ。
そのせいで友達が少ないのもあるのだけど。
「お嬢、これ、昨日のことやっぱり申し訳なくって…」
河童が私に摘んできていたタンポポをくれる。
「昨日は私こそごめんね、ありがとう!うれしい」
思わず笑顔が溢れる
「お嬢の笑顔はやっぱりいいっすねぇ〜、ほら、あそこで猫又もみとれてやがるっすよ!」
指さした方を見ると2本のシッポを生やした猫が頬を赤く染めてこちらを見ていた。見た目は猫なのだが、そういう表情をしていた。
「お嬢様、高校入学おめでとうございます。」
「こちらこそありがとうございます。」
高い塀から降りてきて、近づいてきた猫又が深々と頭を下げたので、私もつられて頭を下げた。
「お嬢様、この後予定はおありでしょうか?」
猫又が可愛らしい表情で首を傾げる
「んーん、特にないよ!どうしたの?」
「いえ!もしよろしければ私めについていただきたく…」
「晩御飯までに帰れるなら、大丈夫!」
「ありがとうございます!こちらです!」
猫又のフリフリとおしりを振って歩く姿が可愛いが、長く生きていてプライドの高い猫又に、可愛いなどと言っては失礼なので、我慢がまん!
河童も我慢している私を見て、猫又の歩き方を真似して、クネクネ歩いていた。
「河童は別に可愛くないよ」
私が河童に耳打ちすると、「ガーンッす!」とか言ってしょぼんと歩いてた。
そんなこんなで猫又に案内されたのは私の家から徒歩5分程の水の神様祀られている神社だ。
龍神様を祀っているとはいえ、廃れていて管理も十分に行き届いてはいない。
「お嬢様、少し目を閉じていただけますか?」
鳥居をくぐる直前にとめられて、猫又から言われるがまま目を閉じた。
直後水の中に沈んだような、でも心地よい感覚に襲われる
「良いですよ。」
目を開けると、先程見ていた神社とは程遠い綺麗な境内が目に入った
「…ここは?」
「綺麗っすねえー!おいらこんな場所はじめてっす!」
そこかしこにひと目で妖怪と分かるろくろ首や、のっぺらぼう、1つ目小僧などが境内を掃除している。
「こちらは水龍神さまのお社にございます。お嬢様方が住む世界とは隣同士の世界に存在しており、不思議な力で普段はみえないようにしてありますが。」
いつの間にか綺麗な男の人の姿に変わっている猫又が答えてくれた。
人化しても2本のシッポは消えないらしい。
「水龍神さまがお待ちでございます。」
私は本殿へと案内された。