表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かけがえのない家族の風景  作者: 逢坂 透
1/2

エピソード1 妻のレポートタイム

6時15分

目覚ましが鳴る少し前

僕も妻も同じように目を覚ます


アラームを解除

ベッドのなかで向き合って、おはようと頬に触れる


囁くように

妻が前日の様子を伝えてくれる


・・・


ケントがね、小学校に行きたくないって


どうしてって、聞くと

藤野先生とバイバイするのが嫌だって


そっか

先生、ケントのことよく見てくれたから


入園したての頃

あの子の描いた絵は、色がなくて、真っ黒だった


僕らは心配になったんだけど

“大丈夫”って言ってもらって

すごく安心したよね


そう

引越してきて、お友達もいなかった

ケンが、楽しく過ごせたのは

藤野先生が2年間見てくださったから


小学校でもいい先生に出逢えるよ

きっとね


そうね


・・・


それから

ユウトがね

オムツが嫌になったみたいで


はかせても

すぐ脱いでしまうのよ


裸で逃げて

追いかけると、喜んじゃって

もう大変


そろそろトレパンかな


トレパンもきっと脱いじゃうけど


・・・


ミオリがね

おっぱい、たくさん飲むようになって

でもミルクは嫌みたいで


ずーっと、乳首に吸い付いてるの

出なくっても


吸引力が凄くて、痛いくらい

おかげで、乳首の形変わっちゃった


胸も、もう全部、吸われて

小さくなってきたみたい


まだこれから、いっぱい飲むから

ミルク飲んでくれなきゃ困る


哺乳瓶の吸い口

気にいるの探さなくっちゃ


・・・


そんな朝の

静かな妻のレポートタイムも

やがて終わりを告げる


近所のラジオ体操の音が流れ出す頃

ミオリが、ムズムズと両手足を動かして伸びをする


ハっと、気づいたように目を開けて

泣き声をあげる


妻は抱っこ紐を装着して準備を整える


嵐の朝がやってきたのだ


ミオリに乳首を与えながら

朝ごはんと、お弁当の準備が始まる


慌ただしくなった気配に

ケントが起き出してくるだろう


朝からきっとおしゃべりが止まらない

ご飯

着替え

トイレ

その度に、おしゃべりを止めなきゃ


最後にユウトの登場だ

今日の報告によると

オムツをせずに走ってくるだろう


トイレで無事おしっこさせられるか

失敗したら大変なロスになる


テーブルの上でも

きっと何かが起こる


食べ物が転がるくらいならよし

コップを倒さないでくれ


妻からミオリを預かり

トントンとゲップをさせる


凄い早技で着替えてくる妻

お化粧は無理だ


僕はそこまで

朝の嵐の中にいる妻にキスをする

その1秒に心を込めて



次に会えるのは夜だ


だが、その時の妻は

こどもたちの間で、斃れて眠っている


だから

また、明日の朝ね


今日のレポートを聞かせてよ

朝の嵐の前の静けさの中で

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ