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魔王種  作者: のんびりMUCC
終末戦争編
99/104

第95話 悪夢の正体

神殿入口にいたグルナを見て、カラは一安心した。

しかし、よく見ると全身傷だらけになっているではないか。


《グルナ様!一体何があったのですか!?》

「サタンが現れ、刹那は連れ去られてしまった…」

《オルフェ様も一緒だったのでは?》

「オルフェは殺されてしまったのだ…アレクシアも…」

《…そんな》

「サタンの力は強大だった。刹那の身体を手に入れたサタンは、最早俺達の敵う相手では無い…」


自分達の上司であり、森の国最強の兵士であるグルナがボロボロの状態なのだ。

その様子は、今の発言が紛れもなく事実であると証明していた。

天空の神々と争う程の力を持つ巨神族を退け、セレネの最強結界さえも怖気させたグルナが諦めているのだ。自分にどうこう出来る相手ではないと、戦わずして自覚させられたカラは落胆しきっていた。

最早、視点も定まらないカラ。

そんなカラに、グルナはある提案をする。


「カラ、俺と月の神殿へ行かないか?」

《…?月の神殿へ?》

「月の神殿へ行けば、悪魔は手出し出来ない。安住の地なのだ。

そこで、2人で暮らそう」

《……グルナ様、私は…一緒には行けません》

「…何故だ?」

《ディーテ様はどうなさるのですか?ディーテ様を残して我々だけが月の神殿へ行くなど…》

「ディーテも死んだのだ…」

《……!?》

「サタンが此処に来る前だ。ディーテは運悪くサタンと遭遇し交戦したらしい…これを見ろ、サタンから何とか奪い返した物だ」


それは、ディーテが婚約指輪と言って自慢していた指輪だった。

何故ディーテ様は国を出たのか…一瞬そう思ったが、グルナの元に行って役に立ちたいと以前言っていたのを思い出した。

何処かで生きているに違いない。そう思いたいが、汚れ破損した指輪はディーテの死をハッキリと伝えている。


「サタンが言っていたが森の国も壊滅したそうだ。ムックとの絆が切れている…認めたくはないが事実だろう」


なんと言う速さなのだ。

自分達が苦労して築き上げた全てが、こうも容易く消え去ってしまうとは…

小刻みに震え、涙を零すカラをグルナは抱き寄せる。


「一緒に月の神殿へ行こう。俺は、お前まで失いたくないのだ…」

《グルナ様…》


カラは不思議な感覚の中に居た。

安心感?恐怖?葛藤?

しかし、カラはサタンに一矢報いる決意を固める。

勝てなくてもいい。でも、せめて最後に…一瞬だけでも恐怖を与えてやる。


《グルナ様…やはり一緒には行けません。

この後、私はサタンの前に立ちます》

「そうか…カラ、さよならだな」


グルナの手は優しく頭を撫でる。

(最後にもう少しだけ、温もりを感じたい…)

カラは、愛しの人であるグルナに抱きつき最後の別れとする。

そんなカラの腹部に激痛が走る。


《!?。どうして…》


カラが見たのは、慈愛に満ちた眼差しで自分を見つめながらも、短刀を突き立てるグルナの姿であった。

血を吐き倒れるカラ、短刀は正確に何の躊躇いもなく心臓(コア)を破壊していた。


飛行部隊長 カラ 死亡。



……………………………………



神殿内部を移動するグルナは怪しい部屋の前に居た。

その部屋に辿り着く前に、何度となく悪魔の襲撃を受けたのだ。

まるで、その部屋に近付けまいとするかの様に。


扉を開けると、目も眩む様な光に包まれた。


「先生!!目覚められました!!先生!!」


「……?」

「…何で俺は横になってるんだ?」


目を開けると、そこには見知らぬ天井があった。

腕には点滴…プライバシーを保護するカーテン…どう考えても病院だ。

医者と看護婦がやって来て、俺が過労で倒れ4日程目を覚まさなかった事を告げる。

装備していたはずの鎧や専用武器は無い。


「良かった…もう目覚めないかと思っちゃった…」


俺のベッドの横に座り、涙を流して喜んでいるのは、俺の元を去った元婚約者。

何がどうなっているのか未だに理解出来ない。


「あれから色々考えたんだ…自分勝手だと思われても仕方無いけど、やっぱり私は貴方が好き…」

「何で俺が入院してるのを知ってるんだ?」

「家で待ってたけど、戻らないから会社に電話したの…そしたら入院してるって言われて」

「…そうか」

「着替えよっか。魘されてていっぱい汗かいてたから。着替え持ってきてるよ」


夢だったのだろうか…

あの日々は…夢?


「ねぇ、もう一度やり直りてくれる?私は本当にバガだったよ…今度は絶対に貴方を支えられるように頑張るから…」

「………」


俺の手をそっと握る元婚約者。

よく考えろ…今までの時間は何だったのかを。

ディーテと過ごした時間は?森のみんなとの時間は?

………。


いや………夢だったのかも知れない。


夢の中に現れたディーテという名の女性は、夢の中の世界で唯一俺を癒せる存在になる為に、とても努力してくれていた。

とても焦れったく、何も応えてあげる事は出来ずに夢は終わってしまったが、それを映像化した俺の脳は、俺の理想の女性像として見せていたのだろう。

ならば、今、目の前に居る彼女とは同じ過ちを繰り返すだけだろう。

目の前に居るこの女性は求めるばかりだった。


「すまないが、もう此処には来ないでくれ。やり直す事は出来ない」

「そう言われると思ってた…ごめんね。もう来ないよ」


立ち上がった彼女の手には包丁が握られている。

(やめろ…包丁を置いてくれ…)

女性とは思えない速さで包丁は迫る。

それを上回る速さで水月への前蹴り。たかが十数cmリーチが伸びた所で、対刃物の訓練を積んだ者へは無意味。

正当防衛は適用されるのだろうか…俺は目を閉じ、そんな事を考えていた。

目を開けると、アレクシアが倒れ、背後の壁は罅割れていた。


「!?」

《殴れぬはずの者を殴るとは…哀れな奴》

「お前はアレクシアではないな!」

《その通り、私はゲノスの1人。序列1位ベルゼブブ。魔王は死んだぞ。オーガの姫もし…》

「嫌なもん見せやがって…クソ野郎がぁぁ!!」

未だかつて生き物の顔面に放ったことのない雷霆を上乗せした本気の前蹴り…それが起き上がり掛けていたベルゼブブの顔面を捉える。

ベルゼブブは腰の辺りまで壁にめり込み、頭部は原型をとどめてはいなかった。

ベルゼブブが卑劣にも保険として使っていたアレクシアの身体(見た目)は何の意味も成さなかったのである。


「オルフェ!…刹那!」


グルナは転移装置へと急いだ。

悪夢から覚めて何よりでした⸜( ´ ꒳ ` )⸝

グルナをクズ野郎キャラにしたまま完結まで突っ走ろうと思ってしまった私も目が覚めました(°д°)✧キラーン

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