第94話 悪夢
グルナはかなり怒っています。:( ;´꒳`;):
現れたグルナの鋭い眼光は、明らかにオルフェを敵視していた。
《刹那様!此方へ!!》
何とか起き上がったアレクシアは刹那を庇うように自分の背後に移動させる。
確かに、グルナが怒るのも無理はないのだ。刹那が勝手に国を出たとはいえ、主の配下を連れ回し、挙句、自分の国の民さえ蔑ろにしている。
《グルナよ、この事は月の神殿で詫びよう!お前達も一緒に行くのだ!そこに行けば何者からも脅かされる事はないのだろ!?》
「オルフェよ…お前は此処に残るのだ。
刹那と月の神殿へ行くのは、貴様ではない。俺だ」
《何…だと!?》
《アレクシア!余計な事をしないで!》
刹那はアレクシアの手を振り払いグルナの胸に飛びこむ。
その様子を見ていたオルフェの脳は混乱していた。つい先程まで、自分と月の神殿に行くはずだった刹那が、今はグルナに抱きつき、その胸元に顔をうずめているのだ。
《グルナ!どういう事だ!》
「お前と刹那の関係は隠れ蓑に過ぎない」
《な…何を言っている!?そんな馬鹿な話があるか!!》
「俺にとって、ディーテの存在は邪魔でしかなかった…幼く。頭も悪く。何の取り柄もない…そのくせ、一方的に好意を寄せ、我が物顔をする…迷惑な女だ」
《グルナ…悪魔の邪気に当てられたのか?お前は本気でそんな事を言っているのか!?》
「考えてみろ…今、冗談を言える雰囲気か?俺は今、お前に真実を伝えてやっているのだ」
…これは夢か?
グルナの神速の拳が…蹴りが…オルフェに夢ではない事を明確に伝えて来る。現実とは残酷だ。
《ぐはぁっ!!….》
一体、何発殴られ蹴られた事だろう。
ボロボロになったオルフェは部屋の隅まで吹き飛んでいた。
全身、激痛で言うことを聞かない。肋骨も2~3本折れている様だ。
しかし、オルフェの脳はまだ現実を直視出来ずにいる。
《グルナ様!お止め下さい!!愛する者を奪い!更にこの様な仕打ちをするなんて!》
アレクシアはオルフェを庇い、グルナの前に立つ。
そんなアレクシアを気にも止めず、刹那が頭を下げる。
《オルフェ様、此処までお守り下さり、ありがとうございました。月の神殿へ行き、グルナ様と永遠の愛を誓って参ります》
《刹那…》
オルフェは全身の激痛に耐え、刹那の方へ手を伸ばす。
その時、背後から一閃の刃がオルフェの心臓を貫いた。アレクシアの剣であった。
「アレクシア。中々の演技だったぞ。
月の神殿で第2夫人として可愛がってやろう。共に来るがいい」
グルナに寄り添い遠ざかって行く刹那をオルフェは最後の時まで見つめていた。
魔王オルフェ 死亡。
………………………………………
その頃、ディーテは月への神殿まで300kmという所まで来ていた。
その道中、幾つか破壊された街が有ったが、人影は無かった。皆避難したのだろう。
そしてまた、破壊された街が見えて来たのだが今回は気配を感じ、足を止める。
どうやら生存者が居るようだ。
『子供?』
物がげに隠れ様子を伺っていたのは、狐の亜人。
《…悪魔?》
『私は悪魔じゃないぞ…森の国から来たんだ。お前のお母さんは何処に居るんだ?』
《私のお母さんは、ずっと昔に死んじゃったの…》
『そうか…何でお前は避難しなかったんだ?』
《お墓を守ろうと思って…》
『少し待ってるんだぞ?悪魔を退治したら、直ぐに戻って来るからな!街を直して、また此処で生活出来るようにしてやるぞ』
《…うん》
『ムック分裂しろ!』
無理矢理連れて来たムックの分裂体を更に分裂させ、アルトミアに連絡させ亜人の子供の保護を命じる。
時期、王国騎士団が派遣されるだろう。
『悪魔め…お前達のお陰で世界はめちゃくちゃだぞ!!』
別に分裂体を置いてくる必要など無かった。
しかし、自分が目覚めた時1人で森を彷徨っていたのを思い出したのだ。
その後、グルナと出会い旅をしたが、出会った日から寂しさも忘れ毎日楽しかったのだ。
1人にさせては置けない。ムックを置いて行く事しか出来ないが誰かと居ると全然違うのだ。
これ以上、この世界を壊させまいと心に誓い、ディーテは月への神殿を目指したのであった。
ディーテが狐の亜人を保護している時。
飛行するカラの眼下に月への神殿が見えていた。
ケルベロスはオルフェ様と刹那は月への神殿へ向かったはずだと言っていたが、飽くまでもケルベロスの予想でしかない。
だが、確認は直ぐに出来る。馬か馬車があるはずなのだ。
神殿の入口付近に馬車とクサントスをみつけた。どうやらケルベロスの予想は当たっていた様だ。
カラはグルナを追い、月への神殿までやって来たが、本来優先すべきは各国で猛威を振るう悪魔の掃討と反乱軍の制圧なのである。
森の国とヘルモス王国に攻め込んで来た魔将は排除した。
コルヌコピア王国の反乱軍はアザゼルが制圧済み。
不明なのはドワーフ国とマカリオス王国、それにエトリア国…
早くグルナの無事を確認し次の指示をもらわなくてはならない。
悪魔が攻めて来てからというもの、ジャミングされているのかグルナとの念話も出来ない。悪魔とは本当に厄介な存在だと思いながらカラは神殿の入口に向かっていた。
「カラ、早かったな」
《グルナ様!ご無事で何よりです//》
グルナ無事を確認しホッとするカラに、グルナは驚きの提案をするのであった。
たまに出てくる第2の人格でしょうか?それとも素でしょうか?どちらでもいいですが、とんでもないクズ野郎でしたね。