第84話 ミダス(魔界の王)の身柄を拘束せよ!
マカリオス王国にて各国の王達と会合が行われる事になった。
勿論、魔界の王とミダスについてだ。
今回は新興国アグロス国の王と北の連邦国のオルガも参加している。
何しろ、全ての国で対応しないといけない問題なのだ。クレイオスの話では、2回目の世界に現れた悪魔は魔界の王1人。それが、配下の軍団を呼び寄せ世界規模の戦いに発展してしまったらしい。
「その魔界の王はミダスに受肉していると思う。ミダスが姿を消してから5年、足取りは全く掴めていない。なるべく早く発見し、排除しなくてはならない訳だが、先ずは各国の様子を伺いたい」
《様子とな?》
アザゼルも最初は生贄を求めてたが、悪魔は人間に受肉する事によって、この世界での活動が制限されなくなるのだ。
そこで、まず聞きたいのは行方不明者の有無だ。
《…我が国で、数名だが捜索願が出されておるぞ》
「数名…」
エトリア国とアグロス国だ。
どちらも山岳地帯が多く、冬場は孤立しがちな国だ。可能性は高いだろう。
カラの監視魔法と索敵能力で発見できるとして、発見後の対応だが…
「既に配下を呼び寄せてる可能性があるが…各国から大部隊を送り込もうとすると時間が掛かるな…ミダスの身柄確保及び、配下の悪魔の排除は少数精鋭で行うとして、包囲を近隣国で手分けしてもらえると助かるな」
発見次第報告する事になり、エトリア国とアグロス国には軍の駐留許可をもらっておいた。
森の国に戻り、早速、捜索を開始したのだが…
カラの監視魔法は顔の識別が出来る精度だ。先ずは山岳地帯の人影を探すのだが、中々見付からない…
(これは長くなりそうだ…)
捜索開始から2日が過ぎた。
俺とカラは、すっかりドライアイだ。もしかしたら山岳地帯では無く、無人島とかに居るのでは?と思い始めた時、カラがアグロス国側の山の中腹に洞窟を見付けたのだ。
《グルナ様、洞窟があります。暫く様子を見てみますね》
「頼んだ。それはそうと、くすぐったくないか?大丈夫か?」
《くすぐったいです//》
「………………」
以前言っていたが、俺がカラの能力に手を加えると身体のどこかは知らないが、くすぐったくなるらしい。
今のは聞かなかった事にしよう。
『グルナ、カラ、遅くまでご苦労さま。よかったら飲んでくれ』
ディーテからの差し入れだ。ありがたい。
いい香りだ。喫茶店のコーヒーのアレンジだ。ミルク多めでチョコレートが浮かんでいる。
『グルナが前に言ってただろ?甘い板があるって…チョコレートってやつだったな。アルテミアとソフィアと3人で頑張って作ってみたんだ』
ディーテがコソコソしてたのはコレを作ってたのか…
《美味しい//ディーテ様、ありがとうございます♪》
「うん、美味しい…何だか暖かい味がするな」
『想いがこもってるからな//』
ディーテは自分で言っておいて、勝手に照れる…。かわいいやつなのだ。
《ん!?グルナ様!洞窟から人影です!》
夜だが、カラの監視魔法は問題無いのだ。
洞窟から出てきたのは間違いなくミダスだった。
あの顔。
プティア王国の人質救出作戦で強力な呪印を撃ち込まれ、行動不能にされたのだ。忘れる訳が無い。
「よし、各国に連絡だ。24時間以内に先陣を展開するぞ」
即応部隊のメンバーは、俺とカラ、それにケルベロスとマルコス、山岳地帯に詳しいマリだ。
マルコスは逃走防止結界を展開し支援する。
状況次第だが、援軍として各国の特殊部隊が24時間体制で待機している。
北の連邦国はアグロス国との国境に軍を展開し、エトリア国とアグロス国の騎士団は麓で待機してもらう。
俺とカラ、マリはゲートでヘルモス王国に入りケルベロス、マルコスと合流。アグロス国の山岳地帯にある洞窟を目指す。
今度こそミダスを捕らえるのだ。
発見から10時間後、即応部隊を率いてアグロス国山中に到着していた。
流石は北国だ、寒い。ケルベロスにはオマケ程度だが、防寒も兼ねて魔物糸で作ったスノーカモ迷彩服を装備している。
魔力は限界まで抑えているので探知も難しいだろう。
洞窟に到着した。
周辺に、他に出入口が無いのは確認済み。
カラの索敵能力で内部を探る。
《内部は大きな1つの空間になっています。魔力の反応は1つだけです》
「よし、突入するぞ!突入と同時にマルコスは結界を展開!ケルベロスは周囲を警戒しろ!みんな耳塞いどけよ!」
マルコスは結界を展開した後、待機している各国の部隊に連絡する。
俺達はパーシス直轄の特殊部隊の隊長アトラスからもらったスタングレネードの様な物を使い奇襲するのだ。
クレイオスに教えてもらった拘束魔法”火焔神鎖”を使い拘束する予定だ。
発動までに少し時間が掛かる問題があるが…拘束出来なければ徹底抗戦するのみ。
スタングレネードの様な物を投げ込む。
強烈な閃光と爆発音が響き渡り、カラとマリが即座に行動を始める。
作戦開始から5秒後、呆気なくミダスの確保に成功したのであった。
火焔神鎖も問題無く発動し、ミダスは身動き取れない状態だ。各国に作戦成功の報告をする様ムックに指示し、部隊が到着するまで周囲の警戒を行う。
しかし…峰打ちとはいえ惨いな。スタングレネードを直視し、視界を失ったミダスに対しカラとマリは”角”を捕ったのだ。
ぱっと見だが、左肩と右膝、そして顎は粉砕骨折している…
こんな事を言ってはいけないのかも知れないが、精鋭部隊の指揮官は”楽”だ。
各々がするべき事を理解しているからだ。
部隊が到着し、ミダスの身柄はエトリア国に移送される。
しかし、何だ?この違和感は。
呆気な過ぎる。
この後、事態は最悪の方向へ進んで行くのだった。