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魔王種  作者: のんびりMUCC
オリンピック編
82/104

第78話 パンクラチオン 決着

遂にパンクラチオン決勝戦だ。

ディーテがエルミアに根回ししてくれたお陰で、俺は大会史上最悪の悪の化身になっているだろうが、最早どうでもいい。


何としても勝つのだ。


決勝の相手は、部下であり森の国の守護神のセレネ。

決勝までノーダメージで上がって来た生粋の猛者だ。


《グルナよ、次回は妾を参加させるがいい!マカリオス王国にカラとアザゼルを連れて帰りたいのだ!//》

「アルトミア…それは優勝してもお断りされるぞ」

参加者のレベルが上がるまで王の参加は認めない。


決勝戦だ。フル装備で臨むとしよう。

今大会初、専用武器(ラーヴタバド)と光輝の胸当を装備しセレネを迎え撃つのだ。

森の国最強の盾。

難攻不落の防御を抜けなければ勝機は無い。策?有ったら教えて欲しいぐらいだ。


《最終種目パンクラチオン決勝戦!間もなく始まります!!両雄登場です!!》


正直、困っている。

結局、対策なんて思い付かなかった。

しかし、何故だ。

とても高揚している…

これから始まる決勝戦が、楽しみで仕方無い。


《軽い!なんと軽い足どりでしょうか!そして、その表情!まるで待ち合わせ場所に向かう恋人同士の様に、これから始まる素晴らしい時間を期待するかの様な!そんな感情が静かに溢れています!!》


「よく上がって来たな、セレネ」

《私には、どうしても手に入れたいものがあるのです。この種目で勝利を収め、それを頂きますわ!》

「…パンクラチオンの意味は理解しているな?」

《勿論ですわ》

「セレネ、命令だ。俺を仕留めろ」


セレネが武器を手に取る。

高純度ビトラス製のメイスだ。

装備する鎧は神威シリーズのフルプレートアーマー。破邪の盾(アイギス)だけでも厄介だが、鎧とセットの盾も相当厄介だ。

どちらも自律して動き、所有者を守るのだ。


セレネは思い出していた。

北の連邦国との戦いが始まるまでだっただろうか。

セレネ達ハイエルフはグルナと戦闘訓練を行っていたのだ。

その時の関係は、教官と訓練生。

毎回タコ殴りにしてやったものだ。思い出すと笑いが込み上げて来る。

だが、その訓練生は見違えるほど立派な戦士になり、何時しか憧れの存在へと変わってしまった。

憧れの人は、主の未来の旦那様…


《1日デート券頂きますわッ!!!》

「勝ってからディーテに貰ってくれ。俺が勝ったら卒業証書貰うぞ!!!」


(俺の方が…)

(私の方が…)


【絶対に上!!】


《決勝戦!始めっ!!》


先ずは小手調べだ。

ケルベロス戦の時と同程度の雷牙を放つ。


《グルナ選手いきなり勝負を仕掛けた!!ケルベロス選手に大ダメージを与えた落雷だー!!》


《そんな小技は通用しませんわ!!”月虹慟哭(フェガロフォス)”》


俺の周りが暗くなり、月明かりの様な光に照らされた。

薄暗く淡い月虹が周囲に発生した時、悲しく泣き叫ぶ声が聞こえて来たのだ。


「…!?ま…魔力が吸い取られている!」


闘気を発し何とか月虹を消し去る事が出来たが、2度は受けれないな…


《流石ですわ。先程の技は魔法で解除は不可能。吸収されるのみでした》


背後からセレネの声。

同時にメイスが襲い掛かる。


「…ッッ!!!」


セレネの細い身体の何処にこんな力が有るのか。辛うじてガードに成功したが、10m以上吹き飛ばされる。

更に追撃気配だ。

立ち上がりざまに迎撃のアッパーを放つが、セレネの顎の直前で静止させられていた。

ジーノもこんな感じだったのだろうか…

イメージで言えば、タングステン合金の見えない壁がセレネを覆っているかの様だ。


不意打ちにも等しい一撃に対して、身じろぐ事無く俺を見つめるセレネの顔は凛々しく…

とても頼もしく…


決勝戦が始まった頃。

会場には、巨神族クレイオスがやって来ていた。


《よく醸されておる…アイギス、あれは儂らでも破る事は出来ん。お陰で気が遠くなる程、天空の神々との戦いが永くなってしまったのだ》

(グルナは負けるかもしれんの…何せアレは防御だけではない。

問題は身内に使えるかどうか…セレネとやらの気持ち次第じゃな)


様子を伺っていたグルナは攻撃へと転換する。

そんなグルナに対し、アイギスは捕獲を試みるのだ。


「!?…なんだ!?結界が纏わり付いて来る!」


次第に周囲の空気抵抗が増していき、空気自体に重さを感じ始めた。

制限されていく身体の動き。更に拘束力を増していくのだ。

メイスの連撃を防ぐのかやっとだ。

とてもじゃないが、躱す事など出来ない。


『グルナ!負けるな!!気持ちが大事だぞ!!』


ディーテ…

その通りだ。能力の強弱は使用者の心の強さに正比例する。

俺は限界まで、闘神化の能力を解放する。

巨神族戦で目覚めた”雷霆”の片鱗は4年の歳月で少しづつ定着していた…現時点での最高値を記録した闘神化は雷霆の力を強引に引き摺り出す。

本日、この瞬間に雷霆は覚醒した。


森の国に、地鳴りを伴う雷鳴が響き渡る。

更に密度を上げたアイギスと神威のラージシールドがセレネの前面に展開する。

明らかに警戒しているのだ。


グルナを捕獲すべく纏わり付いていたアイギスは既に消し飛んでいる。


(様子がおかしい…)

セレネ本人も異変と不安を感じていた。

解放された雷霆の能力が上乗せされたグルナの拳がアイギスを直撃した時、不安は確信へと変わっていた。


罅が入り、砕け散るアイギス。

新たに展開されるも、密度が低い…


「アイギスは怖気ている」

《バカな!アイギスが恐れている!》


奇しくも2人同時に発した言葉はアイギスの状態を的確に表現していた。


固有スキルなどイコルの前では無力。

イコルを持つ者に立ち向かえるのは、イコルを持つ者のみ。

最強のイコルである”雷霆”に対し、下位であるアイギスは恐怖していたのだ。


グルナの放った追撃は、アイギスを突き抜けラージシールドを直撃する。

余程の圧力が掛かっているのだろう。

グルナの拳と接する面は、赤く熱を帯び始めている。


「セレネ、追撃するぞ…備えろ!!」


2発目のターゲットは、セレネの背後。

真後ろでは無い。更に奥…観客の足元の壁面となる。

その壁面を破壊するイメージで放たれた追撃は、ラージシールドを叩き割り…セレネの鎧を砕き…闘技場を覆う結界さえも消し飛ばし、イメージ通り壁を大きく破壊したのであった。


倒れるセレネの眼前にグルナの更なる追撃が迫っていた。


《ご主人様!!ダメー!!!》

止めに入るムック。しかし遅過ぎた。


ドカッ!!


砕け散る床…

拳はセレネの顔スレスレを通過し、床を破壊して止まっていたのだ。


《グルナ様…トドメを刺さないのですか?》

「可愛い部下の顔を殴れる訳ないだろ!俺はサディストじゃないしな」

《卒業ですね…参りましたわ…》

「卒業証書、確かに貰ったぞ!」


《セレネ選手!敗北宣言だーー!!!

完全無欠の最強防御を見事打ち破り、グルナ選手が勝利を手に入れました!!!

パンクラチオン決勝戦!勝者はネモフィラ連邦国最高司令官グルナ選手です!!》


俺は勝ち名乗りを挙げると、会場からは割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こった。


『グルナ!よくやったぞ!!流石は私の未来の旦那様だ!♡//』


セレネは起き上がれない状態だ。


《デート券は諦めますわ…その代わり…》

「ん?」

《医務室まで…お姫さま抱っこして欲しいです…》

「ったく…特別だぞ?」

《ありがとうございます//》


こうして、パンクラチオンは終了し2勝目を挙げた俺の優勝が確定したのだった。

いよいよ明日は表彰式と閉会式だ。そしてその翌日は勝者の為の宴なのだ。


最終種目終わりました!⸜( ´ ꒳ ` )⸝

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