第8話 新天地・そして拠点が出来た
拠点となる土地を探しに森に入った。
森の中は程よく光が差し込み、不気味なイメージとは無縁だ。
東へ進むと拓けた場所に辿り着いた。更に進むと小高い丘があり海を一望出来る。丘の上には月桂樹の様な小さな木が1本、いい香りだ風も気持ちいい…
(こういう場所でのんびり暮らすのも悪くないな…)
『グルナ、風が気持ちいいな…眺めもいいし此処にアジトを作るぞ!』
「もう決めてしまうのか?他の場所も見た方がいいと思うけど」
『私は此処が気に入ったぞ!一目惚れってやつだ!』
「まぁ俺もこういう場所でのんびり暮らすのも悪くないって思ってたところだ。じゃあ此処にしよう」
オーガの村に戻り、甚内に報告。
甚内曰く、その辺を縄張りにしている魔物は居ないとの事。
早速、明日から作業に取り掛かるそうだ。
家の形や間取りについてはディーテの要望を聞かないとな!
『大きな家は要らないぞ?オシャレな海の見える家がいい!』
と言う事だったので、俺の記憶…ギリシャのサントリーニ島イア地区の景色をイメージとしてディーテに送ってみた。
『おー!コレの事を言いたかったのだよ!白い壁で玄関の扉だけは赤にしてくれ!』
ホントかよ…と思ったが、気にしない方が良さそうだ。
問題は外壁や屋根を再現出来るかどうかだ。
上杉にイメージを送ったところ、何とかすると言っていた。
『グルナ、私も手伝ってくるぞ!』
「ディーテは刹那に織物とか教えてもらってくれ。代わりに大地の精霊を貸してくれると有難いんだが」
それはダメだ。
王はそれをしてはいけない。
気持ちは有難い…そう非常に有難いのだが。
現場を手伝うのは配下の1人である俺の役目でもあるのだ。
不満そうだが水と大地の精霊を呼んでくれた。
大地の精霊は水の精霊の色を茶色にした感じだ。
(何コレかわいい…)
「精霊さん、俺達今から町を作るんだ。力を貸してくれないか?」
《…自分でやってどうぞ》プイッ
「!?」
(ん?かなり態度悪いぞ…)
《トーキック!トーキック!》ガシッ!ドカッ
(…スネ蹴って来やがる…意外と痛えぞ)
『みんな!グルナ達のサポート頼むぞ!』
《はーい!》
(ディーテの言う事はちゃんと聞くのか…)
土地を均して、井戸を掘り近くの山から外壁の材料、石灰岩を切り出してくる。
大変な作業だが、主の遣いである精霊と、その腹心が一緒に汗を流している事もあり、士気はかなり高い。
ディーテは刹那と仲良く反物を作っているようだ。
順調に作業は進み、少しづつ俺達の町が出来上がって来た。
外壁が乾燥するまで時間が掛かったが何とか仕上げも終わり、各家屋に最低限の家具も行き渡った。
家具はオーガ達が作ったものだが、手作りとは思えないクオリティだ。
いよいよ引越しの日がやって来た。
空間収納に仕舞えるだけ荷物を入れて、入りきらなかった分は各自持って移動だ。
適当に住む場所を割り振り、俺とディーテも新居に移る。
『おー!オシャレな家だな!後でみんなにお礼言わないとな!ん!?………』
「?……どうした?何か気に入らないとこでもあったか?」
『グルナ?何で寝室が2つあるんだ?』
「いや…それは俺が注文したんだ…」
(そこかよ!王と部下が同じ部屋で寝るとかおかしいだろ!!違和感感じてくれよ!!)
『私は処女だから同じベッドで寝てやる事は出来ないが、同じ部屋で…ベッド2つある部屋では今までも寝てただろ!』ゴゴゴゴッ
「はい!寝てました!」
(…殺される!)
『…私はな、グルナに純潔を捧げるつもりなのだぞ?でもそれは結婚するまではおあずけだ。
だから、せめて同じ部屋で寝て想いは変わっていないと伝えたいのだ。いいな?』
(自分で何言ってるのか分かってんのか…)
《ディーテ様グルナ様宴の用意が整いました!》
(上杉ナイス!!)
「おう!今行く!!今すぐッ!!」
ちょっとした広場ではオーガの伝統料理と酒が振る舞われた。
精霊達も踊ったり楽しんでるようだ
大地の精霊の1人が近付いて来た。
《最初は嫌々お前と一緒に働いたが…なかなか楽しかったぞ》ボソッ
(かわいいやつか…)
宴は世が更けるまで続き、俺達の新生活は始まったのであった。
ちなみに寝室の1つが来客用になったのは言うまでもない。