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魔王種  作者: のんびりMUCC
オリンピック編
75/104

第71話 チャリオットレース 後編

一斉にスタートを切る参加者達。


《グルナよ!狙われておるッ!!一気に勝負を仕掛けるぞッ!振り落とされるなッ!!》


クサントスの鬨の声が響いた瞬間、身体中の血液が背面に押しやられる程の暴力的な加速が始まったのだ。

一応槍を装備しているが、攻撃どころではない、掴まっているだけで精一杯だ。

後ろを見るとパメラ、クラトスがディミトリスと交戦中だ。

障害物を躱すだけでも大変なのに戦っている…クラトスはヴィエン王国の騎士団長なので分からなくもないが、パメラはアマゾネス。

馬車に乗っての戦闘は、そうそうあるものでは無い。

まさに天才だ。


障害物を躱しながら走ること3周目

妨害と障害物はかなり厄介だが、楕円形のコースはヘアピンも難所の1つとなる。

マリアと交戦していたニキアスの馬車が横転したのだ。

幸い玉突き事故は回避した様だが、ニキアスはリタイアだろう。

アレスは相変わらず華麗に障害物をクリアし先頭を走っている。

俺は今のところ2番手に着けているが、魔法が使えない以上、アレスに勝つためには妨害してペースを乱すしかない。


「クサントス!並べるか!?」

《あの者中々やりおるわ!!何とかしよう!!》

馬のパワーは十分過ぎる位あるのだ。しかし、パワーの差を補って余りあるアレスのテクニックは素晴らしい。

そして、マッドマックスは無意味では無かった。

迂闊に近寄る事さえ出来ないのだ。

何とか並ぶものの突破口が開けない!


後方では、ディミトリスと交戦していたクラトスの馬車がコースアウトし大破した。

ディミトリスは、かなりやり手な様だ。

クラトスが脱落した事でディミトリスのペースは更に上がる。

3番手に着けていたジーノに、ディミトリスとパメラ、マリアが並んでしまった。

スタートしてから、既に6周目に入っている。

俺はこのままアレスを振り切り逃げ切りたいが、アレスはそれを許さない。


《グルナ様!奥の手を使わせてもらいやすぜッ!!》


アレスは遂に運転席のボタンを押したのだ。

運転席後方から何かが出てくる…

金属の棒にニンジンらしき物がぶら下がっている…

(まさかな…)


まさかであった。


金属の棒はペガサスの目線の先まで伸びたのだ。

俺は確信した。アレスはチャリオットレースの貴公子などでは無い。


バカだ。


しかし、その認識は直ぐに覆される事となる。

ペガサスはニンジンを追い求め一気にスピードメーターを振り切ったのだ。


《グルナ様、これがスーパークルーズってやつですぜ!!》


みるみる引き離されてしまう!


《ヒャァァー!!ハァァッッ!!!グルナ様!宣言通り下剋上なりぃぃぃ!!ヒャァホォォウゥゥ!!!》


「おい!アレス!!バカ!!前を見ろっ!!!」


《えっ?》

《…ッフォウッ!》


ゴシャ!!

アレスが最後に見たのは迫り来る壁。

ペガサスはニンジンに夢中なのだ、前など見ていない。

本来、ニンジンに集中しているペガサスをコントロールしなくてはならないアレスが、

それを放棄して後方を走る俺を見ているのだ。

事故らない訳が無い。


轟音が響き、壁に激突したアレスの馬車は大破した。ペガサスは直前で激突を回避し天高く飛び去って行ったのである。

勿論、その日アレスが目覚めることは無かった。

しかし、これでトップになったのだ。アレス…君の事は忘れない…

レースは終盤だ。


「クサントス!逃げ切るぞ!!」

《任せろ!!》


その時、後方から飛んで来た矢が、クサントスの後ろ足に突き刺さった。

ディミトリスがボウガンを使いはじめたのだ。


《グルナよ!矢に呪印が刻まれておる!速度が落ちるぞ!》


ダメージは無いが、クサントスは速度低下の呪印を撃ち込まれてしまった。

非常に不味い。

後方で交戦していた4名が一気に追い上げて来る。

最終手段だ。

俺もボタンを押すしかない!


ポチッ…


ボタンを押したがニンジンは出てこなかった。その代わりに、車体に付いていた刃物や棘が一気に抜け落ちて後方に散らばったのだ。

そして、その餌食になったのはジーノのみ。

大破し吹き飛んでいった…

残念で非常に申し訳ない結末を俺は、ただただ眺めるしか出来なかったのだ。

(ジーノすまねぇ…)

パメラの馬もボウガンに殺られ脱落。

残るは、俺、マリア、ディミトリス。

2人をを潰さなくてはスピードの落ちたクサントスでは勝ち目がない。

矢を躱しながら、徹底的に馬と馬車を繋ぐ金具を槍で狙う。


「クサントス!ぶち当てろ!!」


馬車同士の衝突で金具は破壊され、ディミトリスは競技場の藻屑と消えたのだ。

残るはマリアのみ!

マリアの馬車を撃破しようとした俺は目を疑った。

マリアは馬車に乗っていなかったのだ。

よく事故の瞬間や、大切な物を落としてしまった瞬間など、スローモーションで見える時があると思う。今、まさにソレだ。

無人の馬車は、俺の馬車にジリジリ近寄り…クラッシュ。


「今日もいい天気だ…」


俺の乗っていた馬車は大破し、投げ出された俺は倒れ、空を見上げていた。


マリアは馬車から飛び降り、ダッシュでゴールへ向かっていた。

ルール上、御者(運転手)か馬車がゴールすれば勝ちなのだ。

人馬一体でゴールしなくてはならないなんてルールは無い。


やられた…


この種目、勝者はマリアとなった。

流石は女盗賊という事だ。

こうして、6日目の戦車競技が終了したのであった。

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