第69話 ウルトラマラソン
大会3日目、長距離走の日だ。
距離は200km、制限時間は14時間。3つのグループが時間差でスタートしタイムを競う。
言っちゃなんだが、俺は自信ありだ。
学生時代、無駄に毎日15kmのロードワークを欠かさず行っていた前世の俺は、この世界で更にパワーアップし、超人的なスタミナと身体能力を手に入れている。
この世界の住民は、20km位は平気で歩くような足腰の持ち主ばかりだが、是が非でも、ここで一勝しておきたい。
《グルナ殿!ディーテ女王は俺が生涯守り抜く!安心して任せてくれ!》
ニキアスだ。スタート前から勝者のつもりか?巫山戯やがって…
ダメだ。君には任せておけない。
(何考えてんだ俺は…)
《ご主人様…昨日足ひねった…》
ムックはびっこ引いている、戦力外の様だ。ご愁傷様である。
《グルナ様、私達昨日一勝したので褒美確定ですね//楽しみにしてますね//》
その通りだ。早くもセレネとカラは褒美を確定させたのだ。この後の勝負など、どうでもいいのだろう。
と思ったが…どうやらそうでも無い様だ。
にこやかだが、周囲の空気が揺らいでいる。闘気を発しているのだ。
だがな…君達以上に闘気を発しているのは俺なのだよ。
参加者でごった返していても俺の周りには近寄れない程の闘気を放っているのだ。もしかしたら、槍を地面にぶっ刺したヤバい人だと思われて避けられてるだけかも知れんが…
ここで敗退すると本気で不味いのだ。
やり投げの件も挽回したい。これ以上、無様を晒す訳にはいかんのだ!!
セレネとカラは第1陣、俺は最終組だ。
第1陣がスタートしてから2時間後、いよいよ最終組スタートだ。
合図と同時に一斉に走り出す選手達。
因みに、妨害行為や空飛ぶ以外何でも有り、全員何かしらの強化を行っている。
正直、200kmなんて走った事ないのだ。
ペース配分がどうとか、どうでもいい!!
俺は1000m走かと言うようなペースで走り出したのだった。
その頃、カラとセレネはやり合っていた。
《セレネ!1日デート券は私がもらうわ!》
《カラ!それは勝ってから言う言葉ですわ!!私は街の守りで一緒に居る時間が少ないのです!貴方は戦場にも一緒に行ってますわよね?図々しいですわよ!!》
褒美が1日デート券になっている事など、俺は知る由もない。
60km地点を過ぎ、スタートから2時間が経とうとしていた。
俺は第2グループの最後尾に追いついていた。
最後尾に居たのはムックだ。
びっこ引いているが必死に走っている。とても可哀想だが、同時にとても可愛いらしく見える。
闘神化している俺は、前を走る者を徹底的に抜き去っていく。
身体は完全に暖まり、更にペースを上げていくのだ。
120km地点を過ぎた辺りから、リタイアした者の姿が見え始めた。
幸い、森の国の幹部は居ないようだが、200kmはかなり辛い。ムックはダメかも知れないな。
会場では、レースの様子が大スクリーンに映し出されている。
カラの魔法だが、各国の王達はスクリーンに興味津々だ。
後で色々聞かれそうだが、企業秘密ってやつにしとこうと思う。どうせ内容を知っても再現出来ないのだ。
肺が焼ける様な感覚。喉は乾き、血の味がする錯覚がある。
何とも懐かしい感覚だ。
180km地点を過ぎ、流石にペースが落ちて来たが、俺は第1陣の中間を走るグループにまで迫っていた。
そこに居たのはアレスだ。
どうしたのだろうか?地面に倒れ込み、のたうち回っている。
どうやら、足が攣った様だ。
《漢アレス!この程度の痛みなど!!……来た!?痛波が来た!!…うぎゃー!!》
何か言っているが相当痛いのだろう。
あいつはもうダメだ。
スタートから既に6時間以上が経過している。
残り10km!ラストスパートだ。
闘神化の身体強化を最大限に発揮し、1000mを50秒台でクリアする。一気に第1陣の先頭集団に勝負を仕掛けるのだ。
強化しているとはいえ、膝や股関節の負担は相当なものだ。
普段から走っていたらマシなのだろうが。
先頭を走るカラとセレネそして、大きな犬が見えて来た。
彼女達もスパートを掛けている、しかし上司の意地を見せつけてやらねばなるまい!
《!?
くっ!2時間も早くスタートしておいて負ける訳にはいきませんわ!!》
ゴールは目前、俺は必死で走った…今後の為に…厳罰を軽減する為に力の限り走った…
1.グルナ(6時間53分20秒)
2.カラ(8時間53分21秒)
3.セレネ(8時間53分22秒)
4.ケルベロス(8時間54分03秒)
5.クラトス(8時間59分43秒)
6.ジーノ(9時間25分50秒)
7.アレクシア(10時間04分31秒)
8.ララノア(10時間06分14秒)
リタイア
アレス(筋肉痙攣)
ムック(タイムアウト)
パメラ(棄権)
ニキアス(筋肉痙攣)
他多数
《グルナ様…明日は…負けませんわ…ハァハァ…》
『グルナ!やっと調子出てきたな!愛の回復薬は効いただろ?♡』
回復薬のおかげでは無い。重圧が背中を押したのだよ。
セレネもカラも悔しそうだが、俺は圧倒的な記録を叩き出し、何とか一勝を挙げたのであった。
終了後は、全員に高濃縮ネクタルが配られ疲れを癒した。
五臓六腑に染み渡るとはこの事だ、疲れ果てた時のチョコレートどころでは無い。この日飲んだネクタルの味は生涯忘れる事はないだろう。
次話から激しい競技です⸜( ´ ꒳ ` )⸝




