第63話 森のイベント
北の連邦国との戦いから4年が経とうとしていた。
森の国は更に発展を遂げ、各国への鉄道網も整備が終わり非常に便利だ。
勿論駅も建設され、以前にも増して多くの観光客や商人が訪れている。
何故、観光客が増えたかと言うと。
一つは、巨神族が眠る神殿だろう。ぶん殴ってしまったが、巨神族は神の一族だ。
その巨神族、実は眠ると言いつつ眠ってはいない。
訪れる者に巨神の加護という得体の知れない加護を与えている。
風邪を引かない丈夫な体になるらしい。
もう一つは、ディーテが見つけた洞窟だ。
以前、街を訪れた若いカップルを洞窟に案内したのだが、洞窟で結婚式を挙げたいと言い出したのだ。
爆発しそう…いや、勿論微笑ましく思い快諾した。
洞窟で結婚式を挙げた2人は、とても幸せな結婚生活を送ったそうだ。森の国の洞窟教会で式を挙げると幸せになる…それが何時しか洞窟教会に行くと結ばれるになり…今では国内外で知らない者は居ない程の恋人の聖地になっていたのだ。
その洞窟のホタル草は収穫出来なくなった訳だが、トムが栽培に成功したのだ。今はミノタウロス達の協力を得て地下の大空間で栽培している。
素晴らしい偉業である。
それと、冒険者達の間では森の国は戦闘訓練の聖地として相変わらず有名だが、別の場所に新たな聖地が出来たのだ。
それはマカリオス王国の北東、カラが自爆した場所だ。
爆発で出来たクレーターは水が湧き、エメラルドブルーの美しい湖になっていた。
アルトミアは、その湖の畔に国の為に勇敢に戦ったカラを讃える石碑を建て、戦いが終わった後もその場所を守り続けていたヒュドラの為に神殿を建ててくれたのだ。
ヒュドラは神殿に住み着き、今では地主神として祀られている。そこに諸難突破を祈願しに各国の騎士団が訪れる様になり、それは冒険者達にも広がったのだ。
そんな感じで、数年の間に森の国は安全で神聖な国として認知され、観光立国としてのポジションを不動のものにした訳だが…人が増えれば問題も出てくる。
ディーテを狙い、名を挙げようとする輩も出てきた。
盗賊は勿論、他国の力のある魔物や他の魔王種だ。
表立って仕掛けられないので、暗殺を企てる。
その全てが未遂に終わっているのは言うまでもないが、面倒なのだ。
『私は自動防御結界が発動するから、死なんぞ!』
と本人は言っているが、側近の俺としては何とかしたいのだ。
そこで、ストレス発散が出来て名を挙げる事が出来る場を提供する事に決まった。
それは、【オリンピック】だ。
その種目は。
円盤投、やり投、短距離走、長距離走、戦車競技、総合格闘技を予定している。
参加者全員が全ての種目を行い、その内3種目を制した者が1位、2種目は2位、1種目は3位とし競い合う。
1人が全種目を制覇する可能性や、全ての種目で勝者が異なる場合もあるだろうが、その場合は臨機応変だ。
勝者には、巨神族の神殿入口に自身の石像を建てられる。
出身国と名前を刻み、4年間英雄として祀られるのだ。
それだけでは無い。
森の国から、本人の希望を聞き可能な範囲で褒美を出す事にした。
森の国から褒美を貰えるが、森の国以外の参加者は出身国からも褒美を貰えるだろう。
盗賊なんかは人生が変わるかも知れない。
ふと、オルフェは参加して来そうだと思ったが、王は参加不可とした。
周りが萎縮してしまうだろう。
王以外は参加可なので各国からどんな猛者が集まるか楽しみだ。
《私も参加していいんですか?》
カラだ。
セレネやアレス、アマゾネスの族長マリもウズウズしている…
アレスはともかく、それ以外の者は参加させていいのだろうか?
結局、参加させる事になったが非常に危険な大会になりそうな予感がして来た。
《ご主人様…》
「………………………」
ムック…お前もか…と思ったが、人型のみに限定はしていない。
何時も記録係で退屈なのかも知れないし参加を許可する事にした。
『グルナ、この大会を制覇せよ!王の命令だ!喜べ褒美は私だ♡』
「………………………」
自分も参加すると言い出さなかっただけマシだ。王のご指名なので断る訳にはいかない、強制参加ってやつだ。だが、参加するからには優勝を狙わなくてはなるまい。
褒美も強制的に決まっていたが、辞退して以前から欲しかった神威シリーズの肩当にしてもらおうと思ったのは此処だけの話だ。
開催は3ヶ月後、大会は予選や最終日に予定されている勝者の為の宴も含めて10日だ。
準備期間から開催中含めて、この期間に罪を犯した者は参加資格を剥奪する。
これを周知する事で回を重ねる毎に、安全で名誉ある大会になっていくだろう。
早速、競技場の建設をスタートし各国に参加者募集の案内を出したのだった。
オリンピックです⸜( ´ ꒳ ` )⸝