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魔王種  作者: のんびりMUCC
ギガントマキア編
57/104

第53話 マカリオス王国VS巨神族 後編

遂に巨神族と激突します!

最後の残念な展開はご容赦くださいm(_ _)m


巨神族の先頭がかなり近付いて来ている。

かなり大きい体躯だ。15m以上ありそうな個体も居る。小柄な者でも3m以上あるだろう。


《グルナよ、妾は単体相手は苦手じゃ。

生き残った者が居たら任せるぞ》

「あぁ、任せろ」

《家臣共!結界を展開せよ!気を抜いてはならんぞ!!》


《滅びろ!美しき雪の結晶(キオノフォビア)”!!》


夜空に美しいオーロラが出現し、巨神族の上空に光輝く雪が舞い降りていた。

(幻想的な魔法だな…近くで見たら綺麗だろうな)


美しい雪の結晶が輝きを増した様に見えた次の瞬間、目が開けられない程の閃光と衝撃波が発生したのだ。

雪の結晶1つの破壊力、推定10kt。

放出されたエネルギーは実に42TJ。

1平方m当たりの荷重23t、TNT換算約10000tにも匹敵する破壊力を秘めた数千の雪の結晶は巨神族の頭上に降り注ぎ、一斉に炸裂したのだ。

大国が魔導師を総動員しても発動出来るかどうか…仮に発動させる事が出来たとしてもコントロールは出来ないだろう。

それを1人で発動し制御するアルトミアの異常性。

”狂気の女王”の二つ名は伊達ではない、普段の奇抜な行動だけでなく戦闘力的な部分でも狂っているのだ。


(…………ッッッッ!!!!!?)


何重にも張り巡らされていた魔法防御結界は一瞬にして消し飛び、城壁も一部大破している。

今回は巨神族の頭上に範囲を絞ったが、限界まで広げれば半径100kmは更地に出来るだろう。


その衝撃波は、森の国まで達していた。


グルナも声が出ない程驚いたが、それ以上に驚愕していた者が横に居た。

カラだ。

(これがアルトミア様の魔法…)

強烈な閃光だったが、辛うじてカラは見ていた。

まるで満天の星の様に浮かぶ、完璧に制御された火球の群れを。


…………………………………



森の国。


ディーテの元に派遣予定の部隊が集結していた。森の防衛は疎かには出来ない、なので人数は少ないが各種族の精鋭を集めたのだ。

表には出さないが、ディーテは不安を感じていた。

前回のプティア王国戦では、いつも無傷で帰ってくるグルナが重症を負った。

今回の戦闘は、プティア王国戦の比では無い。勿論、グルナ達は無事に帰ってくると信じてはいる。

しかし、先程の衝撃波はディーテの心の片隅から消えることの無い感情(不安)を増長させる。

グルナの元に行きたい…

王である自分は、全ての民を想わなくてはならないのだろう。しかし、今にも駆け出してしまいそうな自分が居る…それ程、グルナの身を案じてやまないのだ。


『では、任務を命じるぞ!

オーガ、エルフ、キマイラはヘルモス王国の援護だ!

ラミア、メデューサ、ガーゴイルはエキドナと合流、ハーピーとセイレーンは北の連邦国の南から北上し軍事基地を壊すのだ!』


《ディーテ様!俺も行きたいっすッ!!》


『アレスはハーピー達の部隊を率いてくれ!!』


《ディーテ様…申し訳ありません!ハーピー達の速度についていけないでありますッ!!》


『アレスよ、お前が足が遅い事ぐらいわかってるぞ。

ちゃんと馬を用意してある!』

(馬?)


ディーテが用意したのは普通の馬では無い。神獣召喚で呼び出した、名馬クサントス。

問題はアレスが振り落とされずにしがみついていられるかだけだ。


『お前達、ちゃんと特製鎧つけたか?

頑張って来るのだぞ!!』


恐怖シリーズの鎧を装備し、森の国の部隊は展開を始めた。


…………………………



マカリオス王国。


アルトミアの魔法は破壊の限りを尽くした。

マカリオス王国とギガキドネス国を隔てる山脈をも吹き飛ばす威力だったのだ。

近くで見たら…とか思ったがやめておいた方がいいだろう。


「さすがの巨神族も全滅したんじゃないか?」

《いや、よく見てみるがいい》


遠くに魔力の反応を感じたのだ。

数は3分の1程、凡そ1500体にまで減っているが生き残った者達は歩みを止める事無く前進して来ていた。

想像以上のタフネス。流石は天空の神々と戦っただけの事はある。

しかし、真に誉められるべきは、その巨神族を半壊させたアルトミアなのだ。


ギガス族族長クレイオスは驚いていた。

(何と見事な魔法だ…流石は選ばれし者よ)


天空の神々と戦った巨神族だが、その多くは滅ぼされてしまった。目覚めた一族の中で神に匹敵する力を持つのは2人の族長のみ。

他の巨神達も強いのは間違い無いが、不死性が無いのだ。

生き残った巨神族を排除し、族長を退けなければ認められない。

(ワシを打ち負かす事が出来れば万の軍勢だろうが一騎討ちだろうが、どちらでもよい。

人間共は選ばれし者達に挑んでいるようじゃが、逆じゃ。

選ばれし者達、お前達がワシに挑むのじゃ)


マカリオス王国軍5万と森の国から俺を含めて4名。

援軍の到着まではこの兵力だ。


《1体に必ず複数で当たるのじゃ!》


その時、集団の奥の方から何かが飛び出しアルトミアを吹き飛ばした。


《ふふっ、やっと会えたな!

選ばれし者達よ》


ギガス族族長クレイオスが突っ込んで来たのだ。ディーテと同じく、アルトミアも自動防御結界が発動する。

しかし、クレイオスの一撃は結界をぶち破りアルトミアに大ダメージを与えたのだ。


「カラ!敵の援軍を分断しろ!俺はコイツをやる!上杉、王国軍の援護を頼んだぞ!

エキドナはアルトミアを頼む!」


クレイオスは身長5m程。

どちらかと言えば小柄な方だ。しかし、密度が違う。

対峙すると押し潰されそうな圧迫感と底無しの魔力を感じるのだ。


《ワシに1人で挑むつもりかな?》

「あいにく俺しか居ないんだ。我慢してくれ」

《いや、構わんよ。一騎討ちもまた一興じゃ》

クレイオスの密度が更に高まり、身長2m程になった。


《これが最小じゃ、だが力は変わらんぞ。来るがいい》


雷を纏ったグルナの拳がクレイオスに放たれた。

直撃…した瞬間、吹き飛んだのはクレイオスではなくグルナであった。

(…何て奴だ)


グルナの打撃が直撃したにもかかわらず、何事も無かったかの様に打ち返して来たのだ。

グルナは動揺していた。

打ち返された事にも驚いたが、打ちつ打たれた時に脳裏に過ぎったイメージは”巨木”

深々と大地に根を張る樹齢数千年の巨大な樹木。

そして、重さ数百kgの鉄球が高速で直撃したかの様な衝撃。まさに力化身。

(コイツ…相当強い!)


《打たれ強さは合格じゃ》


だが、同時に欲求にも襲われた。

”コイツには殴り合いで勝ちたい”


「破壊力も満点もらうぞ!!」


大地が陥没する程の踏み込み、そのエネルギーを最大限に拳に伝える。

純ビトラスの専用武器勝利の魔狼(ラーヴタバド)はグルナの潜在能力を引き出し、その力を踏み込みのエネルギーに上乗せする。


神に匹敵する力化身クレイオス。

それを越えんとするグルナ。

遂に2人の戦いが始まった。


その頃、カラは苦戦していた。

北の連邦国が送り出した地上部隊を発見し戦闘を開始したのだが、それは囮の部隊だったのだ。

囮の周囲に無数に仕込まれていたのはミダスが開発した音響兵器。

暴動鎮圧用の様な生易しい物ではない。

下級の魔物なら秒で頭が弾け飛ぶ程の超低周波を発する恐るべき兵器なのだ。

(魔力感知が効かない…)


後続の部隊が迫り、砲撃を開始した。

何とか躱すが、カラの目からは血の涙が流れている。

(此処で…私が死ねば…グルナ様達が…)


迫り来る大部隊までの距離は4~500m。

だが、迫り来る部隊は目の前の連中だけでは無い。この後も第2波、第3波が来るだろう。

(ただでは死なない…貴様らも一緒に死ぬのだ!!)


カラは出せる力を振り絞り自爆した。

半径1km以内にいた者は音響兵器も含めて蒸発したのだった。


大地には巨大なクレーター、その中心にカラはいた。

薄れ行く意識の中、見えたのは暴れ狂う神獣。

(北の連邦国に神獣を召喚出来る者が居るなんて…グルナ様申し訳ありません…)


………………………………



グルナとクレイオスの戦いは熾烈を極めていた。

防御など全く考えていない。寧ろ防御する気が無いのかも知れない。

想像を絶する破壊力を秘めたクレイオスの拳、雷を纏うグルナの拳。それが互いの身体に突き刺さる。

周囲で戦闘を行っていた王国軍も巨神族もいつの間にか、2人の戦いに魅入っていた。


終わりが近い。

2人は”決着(それ)”を感じていた。


渾身の鉄槌を打ち下ろす!

受け止めたクレイオスは腰まで地面にめり込んだ。

《その程度でワシには勝てんぞ!!》


クレイオスはグルナの足を掴み、そして地面に叩きつけた。

(ぐはっ…こんなにも巨神族って強いのか…)


必死に起き上がろうとするグルナを見下ろすクレイオス。

《お前の存在は惜しい…しかし、統治者としては未熟。この世界は、またワシらが統治しよう!眠るがいい!!》


その時、グルナのイコル、その片鱗が目覚めた。

止めを刺そうとしたクレイオスの視界からグルナが消えたと同時に胸部に激痛が走った。

雷霆の力を込めた拳が胸骨を砕いたのだ。


「何勝手に終わらせてんだよ…」


崩れ落ちるクレイオスの胸部に追撃の一撃が放たれ、胸骨は粉砕骨折。クレイオスは味わった事の無い激痛に襲われたのだ。

不死性を持つクレイオスは骨折など直ぐに回復するはずだった。

しかし、何故か回復しない。

《この力はまさか…》


クレイオスの予想通り”雷霆”である。


「俺達が統治する…文句は言わせねぇ」


クレイオスの顔面に雷霆の力が込められた拳が放たれ周囲には350万パスカル、台風の1000倍程の暴風が吹き荒れた。


起き上がる気配の無いクレイオス。

まさか自分が此処まで完膚無きまでに叩きのめされるとは思っていなかった。

統治者としての資格は12分に有る。


《茶番は終わりじゃ》


クレイオスはオルガの呪印を断ち切り、戦いに魅入っていた一族とグルナに言う。


《皆の者、この世界には新たな統治者が生まれていたのだ。

我々の統治者としての時代は終わった。この者達に世界を託そう!ギガス族はお前達を統治者と認める!》


激闘を制したグルナだが、勿論無事ではない。倒れ込み起き上がれない程、深刻なダメージを受けていたのだ。

起き上がれないグルナにクレイオスは言う。


《新たな統治者よ、我々はギガキドネスには戻らん。お前の主の国、森の国で眠ることにする。また人間共に起こされたら敵わんからな》

「冬眠する前にディーテに一言言っといてくれよ?」

《ハハハッ!勿論だとも!》


こうして、マカリオス王国に侵攻したギガス族は森の国で眠りにつくことになったのであった。


ギガス族の件は一件落着となったが、俺の気持ちは晴れない。

結局、カラは死んでしまったのだ。

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