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魔王種  作者: のんびりMUCC
序章
5/104

第5話 続・王都にて

警戒初日、収穫無しだ。

2日目、城下町の中心にある公園で昼食を食べながらムック達の目線で様子を伺う。

話では3日に1回は犯行が行われているそうだ。犯人についてもだが、もう1つ気になっている事がある。

最近、誰かに見られている感じがするのだ。


「なぁ、ディーテ?最近誰かに見られてるような気がしないか?」


『私が美人だから視線を集めてしまってるのかもな…罪だな許してくれ…』


自分で言っておいてモジモジしている。聞かなかった事にしよう。


«ご主人様!1人殺られたよ!»


「場所は!?」


現場に向かうと子供が泣いていた。

これでは俺が泣かした様に見えるな…


(殺られてない…よかった)

「おい、どうした?大丈夫か?」


話を聞くと、この子は近所の女の子のスカートを捲って揶揄っていたら背後から殴られたそうだ。


(スカート捲りとは将来有望な…いや!何とけしからんやつだ!ムック?犯人は目撃したか?)


«見たよ!羽が生えた魔物だった!教会の方に飛んで行ったよ!»


(犯人は人間ではなかったか…とにかく教会に行ってみるか)


城下町は勿論、城壁の外まで結界が張り巡らされているのに魔物がいる訳が無い…

教会に着いたが魔物の気配はない。

怪しいものと言えば、教会の屋根にある雨樋が羽の生えた怪物の石像ぐらいか…


「まさか石像が動くなんて無いよな?」


『!!…グルナ!石像と目が合ったきがしたぞ!』


神官の許可をもらい屋根の上へ

近くで見るとリアルな造形でかなり不気味だが紛れもなくただの石だ。


(……………。)


「考えすぎかもな、さっきの子供の件を騎士団に報告して今日はもう帰るぞ」


騎士団への報告を終え晩ご飯だ。

王都は結構遅い時間まで露店が開いている。さすがにこの人混みの中で犯行は行わないと思うが、食べ歩きしつつすぐに動ける様に備えよう。

ムック達には引き続き警戒させている、勿論疑惑の石像もだ。


「ディーテ、ちょっと人気の無い場所に行こうか」

『ちょ…ちょっと待て!いきなり過ぎるだろ!私に心の準備をする時間もくれないのか!?』


顔が真っ赤になっている。怒っているのか?

ディーテは怖がりなのを忘れていた申し訳ない。だが無視だ。


町外れの人気の無い広場にやってきた。


「ディーテ、お前に話があるんだ…」


『何だ?言ってみろ…』

(グルナめ…想いを伝えるのは夜じゃなくてもいいんだぞ?知らないのか?)


「俺はこれ以上お前と旅を続ける事は出来ない。明日から別々の道を行く事にした。」


『……!?』

『いきなり何を言い出すんだ?グルナは私を守ってくれるんじゃないのか?嘘だったのか?』


「悪いな、1人じゃ受けれない依頼は報酬がいい。ディーテが居てくれたお陰で金もそこそこ貯まった、蓄えが出来たし実は俺1人の時間が好きなんだ」


『でも、ずっと1人は退屈だし寂しいぞ?』


「それは、その時考えたらいい事だ」


『…私はグルナと離れたくないぞ?』


「……。お前は用無しだ。一緒に居れば俺にも危害が及ぶ。」


『ウッ…ヒック…』


ディーテが泣き出した直後、背後に殺気を感じた。

«ご主人様!石像飛んで行った!»

ムックからの伝言は5秒ほど前。

かなりの速さで此方へ向かっている…が好都合だ!

鼠の一件から俺の体には変化が有った。

動体視力と反応速度が異常に高くなっていたのだ。


感覚でしか無いが殺気の主との距離はおよそ50m

接触まで1秒未満か…

この場合、振り返る動作は通常とは異なる。

体を捻りながら大地を”蹴る”

つま先に発生したエネルギーは膝から腰へ

そして、肩から肘、手首へと伝わり拳の先端で爆発する。

その拳は目前に迫る石像?の怪物の顎の先端を音速に近い速度で打ち抜いた。


「本物の石なら意識は断てないよな?起きろ!」


反応は無かった。

知性が有り、実体があれば脳はあるはず。

石ではなく、生物ならば必ず起こるはずの脳震盪が起きたのだ。


(手加減したけどダメだったか…ムック、コイツを拘束出来るか?)


«任せてー»


ムックは毛の一部を取外し手足を縛りはじめた。


(何コレかわいい…そしてめっちゃ便利だ…10円ハゲになってるけど)


「犯人確保の報告の前に部屋で話を聞くか、ディーテ宿に戻るぞ」


『…私は用無しなんだろ?』

『…1人で旅立つんだろ?』


(やべぇ……怒ってらっしゃる)


「ディーテ?あれはコイツを誘き寄せるための演技だ。ディーテは気付かないか?洞窟の祭壇で祈りを捧げた後、俺達の心に絆以上の繋がりが出来た事を」


「そんな俺達が離れ離れになる訳ないだろ!俺の傍に居ろッ!」


『!?』

『この安心感や幸福感はその繋がりのお陰だったのか!…いきなりで動揺したけど…確かにその通りだ…』


『演技も上手いな…そこの鳥と一緒に騙されてしまった…』


大根役者だと思っていたが中々の演技力だったようだ。


「よし、コイツを空間収納にしまって部屋に連れて帰るぞ」


部屋に戻り、亜空間から例の化物を取り出し座らせる。


(The魔物って感じの外見だなコイツ)

「さて、連続無差別傷害事件について知っている事を話してもらおうか」

『貴様のお陰で心を病んだぞ…死にたくなければ話すがいい…』

「…苦しみながら死んで行くんだろうな…」ボソッ


ディーテもご立腹だ。


取調べの結果を纏めると、コイツはガーゴイルで魔物ではなく神の使いの様な神聖なポジションらしい。城下町で悪さをする輩を成敗していたそうだ。俺達の元に飛んできたのは、俺がディーテを利用しポイ捨てしようとする悪党に見えたから〆に来たらしい。


「話は分かった、しかし暴力で解決していい問題は多くはないぞ?相手が悪人でもお前のやり方では、そこに正義は無いように見えてしまう」


《…ワタシハヨケイナコトヲシテイタヨウダ》


「はっきり言っていいか?」


《…?》


「ビジュアル…んー、見た目が悪い!」


《…!!?》


すっかり元気が無くなったガーゴイルを連れて騎士団の元へ。人間や亜人、下位の魔物なら入れる牢屋があるが、神の使いはちょっと…と言うことで釈放。

どうやって確保したのか聞かれたが、精霊の力を借りたと言っておいた。嘘では無い。

ガーゴイルは今後、教会の上から街を見守るだけにすると約束してくれた。


《グルナさんありがとうございました。スピード解決でしたね!これ報酬です。王都にはもう暫く滞在されるんですか?》


「今回の件で旅の資金も貯まったし、そろそろお暇しようと思ってる。あの店の料理も食べたいし、また来ると思うけどな!」


《その際は是非ご連絡ください!1杯奢りますよ!》


報酬は金貨50枚。銀貨50枚で金貨1枚と等価だ。店での食事代が銀貨1枚でお釣りが来るからかなりの金額だと思う。


翌日、旅の備品を調達しみんなに挨拶を済ませ王都を後にした。

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