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魔王種  作者: のんびりMUCC
序章
4/104

第4話 王都にて

翌朝、俺達はギルドに向かった。


ギルドには個人~国が出したものまで幅広く依頼があり、内容は様々だ。受ける側は自分の身の丈に有った依頼を引き受け報酬を得る。

失敗した記録は魔法で登録証に書き込まれ、暫くは受けられる依頼が制限されるそうだ。

ちなみに冒険者にランク等はなく、どの依頼でも引受けられる。期間内に達成出来なければペナルティとなり、戻らなければ死亡したものとして扱われる。


『グルナ!報酬多いのいくぞ!』


ディーテは張り切っているが、土地勘もない上にパマスでは雑用しかしていない。

何より誰かとパーティーで依頼を受けるの自体初めてなのだ。


「ディーテ?最初だしこんなのどうだ?」


『鉱石の採取か!』


「王都からすぐの洞窟の中に目的の鉱石は確実に有るみたいだし、報酬もそこそこだろ?」


報酬は金貨5枚、鉱石を10キロ程採取…高々5キロの鉱石で金貨5枚。訳あり物件の様な気もしなくもない。だが討伐依頼でもないし危険は無いだろう。

受付で手続きを済ませ、いざ鉱石採取へ。


歩くこと2時間弱、目的の洞窟に着いた。

ほぼ手ぶら状態だが、空間収納にツルハシ・水・ギルドで売られていた干し肉と携帯食・タイマツ・貰った剣を持ってきた。

空間収納…便利だ。


『寒いし薄暗いな…』

「ん?怖いのか?」

『怖くないぞ!早く終わったら今日もあの店でご飯食べるぞ!』


ビビってるようだが、気にしないようにしよう。

道に迷うと行けないので壁にマーキングしながら進む。

罠らしき物もなく順調に進んで来た俺達に突如襲いかかる生物。


鼠だ。


正確には鼠の様な魔物。体長50cm程でかなり気性が荒い。


『グルナ!コイツらヤバいぞ!目が赤く光ってるしウジャウジャ居る!』


大分ディーテは動揺していると思うが…

俺も同じ位動揺している。

この世界に来て初めて魔物と遭遇。

そして、初めての戦闘、しかも魔力を操作出来るようになったが使った事はない。

敵の数は30匹程…大型で気性の荒い鼠…今にも飛び掛かろうとしている。

最悪の状況だ。

空間収納から剣を取り出し身構える。


『おー!グルナ頼んだぞ!』

「俺は格闘技は上級者、剣術は未経験者だが何とかなるだろう!」

『………!?』


嘘やろ?みたいな顔をしているが無視だ。

腕が悪いのは仕方ないが、素早い動きのお陰で一向に数は減らない。


「このままじゃジリ貧だな…」


鼠はフロックラット、集団で敵を攻撃する厄介なヤツだ。冒険者が餌食になる事も珍しくないそうだ。

鑑定眼便利だ。

魔法が使えたら挽回出来るかも知れないが…

ディーテを見ると岩陰から拳大の石を投げて応戦している。


『あっち行けー!私は美味しくないぞー!』


「………。!?」

図書館で読んだ本に魔法はイメージの具現化と書いてあった。相手は鼠…魔物と言えど炎は苦手なはずだ!


「ディーテ!小さい石を集めてくれ!」


『ちっちゃい石なんか集めてどうするんだ!?』


出来るかどうか解らないがやるしかない!

両手に持てるだけの小石…イメージは炎を纏うイメージと加速、拡散だ!

小石が紅く光はじめた。


「食らえ!火炎散弾(フレイムショット)!」


放たれた小石は、有り得ない程広範囲に広がり一気に加速。その速度は音速を軽く超え容易く鼠の群れを貫いた。

生き残った鼠は霧散し、俺達は何とか窮地を脱する事が出来たのだ。


『グルナ!すごかったな!今のは何なんだ!?』

「魔法…かな?」

「とにかく石を探そう。また鼠に襲われる可能性もある。早く鉱石を回収して此処を出ないとな」


少し進むと、ぼんやり光る岩が目に付いた。

鑑定眼で見てみるとミスリルと判明、恐らくコレで間違いないだろう。他は見渡す限り単なる岩石だ。

ミスリルを空間収納に100キロ程回収、無事に戻ればミッション達成となる。

出口に向かって歩いているとぼんやり光る何かに気付いた。


「ん?来る時こんなの有ったっけ?」


狐の様な形をした小さな石だ。

鑑定眼で見ると(殺生石)と出たが詳しい事は分からなかった。


『グルナ?この石持って帰っていいか?こんな薄暗い所に置いていくのは可哀想だ』

「持って帰ってどうするんだ?」

『どうもしないぞ?運命感じただけだ』


………。

幼いが優しい心を持つ次期魔王様で何よりだ。

洞窟から出て王都へ戻ろうとした時、ふと視線を感じた。

辺りを見渡すが誰も居ない。

(気のせいか…)


『グルナどうした?早く報酬もらってご飯食べるぞ!!』

「お、おう!」


ギルドの受付でミスリル5キロを提出し報酬を受け取る。

《お怪我はありませんか?あの洞窟は小型ですが凶暴な魔物が住み着いていましたので…》

「ちょっと危なかったけど…何とか無事だったよ…ははは」

最初に言え!と思ったが、もういいだろう。

美味しい話には裏がある。

前世でも今の世界でもそれは変わらないという事が解って何よりだ。

そして、ゲームでよくあるレベルという概念は無い事も解った。


『グルナ!まだか!!満席になってしまうぞ!』

「よし!行くぞ!初ミッション達成祝いだ!岩陰から石ころ投げて頑張ってくれたしな、いっぱい食えよ!」

『むー、バカにしたな!?』


店に着き、美味しい料理を食べつつ振り返る。

(ディーテは間違いなく戦闘向きでは無い…魔王種ではあるものの種族は女神族、魔族でも無ければ戦闘特化でも無いなんて、魔王のイメージからかけ離れ過ぎてる。何故ディーテが魔王種に選ばれたんだ?)


『なぁグルナ?さっき言ってたけど、今日は記念日ってやつか?』

「ん?」

『何かいいな…これからも記念日ってやつは増えていくのか?』

「ん?……あぁ多分な。」

『…何か楽しいな。記念日は大切にしないといけないな』


ディーテの頬が赤くなっている…

魔王種と言えども女の子だ。記念日の類は好きらしい。


「そうだな!記念日がいっぱい出来るといいな!そのために俺がちゃんと守ってやるからな!」


『…………頼んだぞ』


その後、しばらく王都に滞在し様々な依頼をこなした。

依頼の達成率は100%、他の冒険者とも仲良くなった。そんな俺達に王都の騎士団から依頼が来たのだ。達成率が高い冒険者はたまに指名される時があるらしい。


王城に呼ばれ話を聞くと、最近城下町で傷害事件が多発しているらしく、犯行現場は城下町全域。狙われたのは盗人や悪徳商人からいじめっ子、飲んだくれのオヤジまで様々で怪我の程度も骨折から打撲まで様々。

王都は防魔の結界が張られている為、魔物の犯行ではなさそうとの事。騎士団も巡回しているが手掛かりは一切無い。

被害者曰く、いきなり殴られて振り返ると既に犯人は居なかったと口を揃えているそうだ


「被害者の共通点は大なり小なり他人に迷惑をかけた人物か…犯人は自称正義の味方って感じだな」


《今は限定的ですが、このまま放置する訳にもいきません。暴力による制裁ではなく反省し悔い改めさせる事が重要です。今回の件について不安に感じる住人も少なからず居ます》


魔物では無いという事だが、人ならざる身のこなし…


「犯人の確保じゃなく犯人に関する情報収集が今回の依頼だったな。依頼は受けるが俺は戦闘は不慣れだ。身の危険を感じたら手を引くぞ?」

《ありがとうございます。犯人の確保に関しては我々の役目です。

旅の方にしか依頼出来ない案件なので助かります。こちらが我々が目を付けてる犯罪者予備軍のリストです》


個人情報満載だ。確かに王都に住む住人には頼めない案件だな。今回の依頼はギルドを通していない。ギルドから情報が漏れる恐れがあるのだ。王国騎士団から直接の依頼なので報酬の受け取りもギルドではなく王城となる。


支度金として銀貨50枚、期限はひと月。

城下町を散策しながら警戒する訳だが…城下町はかなり広いのだ。リストはもらっているがそこそこの人数居るのでとてもじゃないがカバー出来ない。


『グルナどうする?この依頼大変だぞ』


「任せろ、ちゃんと策は考えてある!」


人手は欲しいが、他の冒険者や街の住人に知られるのは御法度だ。

なので、今回は精霊の力を借りようと思う。精霊は防魔の結界には影響されないはずたしな。

以前から気になっていた精霊召喚…どんな精霊が出てくるのか楽しみだ。


「炎の精霊!出て来い!」


魔法陣から小型の犬?の様な精霊が出て来た。紅い毛の塊の様に見えるが毛ではなく炎だ。


「こいつが炎の精霊か!」


初の精霊召喚でテンションが上がってしまったが、忘れてはいけない本題は自称正義の味方に関する情報収集だ


«ご主人様こんにちは。今日は何の用事で呼び出したの?»


犬が喋ってやがる…かなり動揺…いや感動したが、目的を伝え出来る事、出来ない事を確認する。

顕現していられる時間や能力は召喚主の魔力量に依存するらしい。この精霊、名前は無いそうだ。


「分裂出来たりするのか?」


«出来るよ!50ぐらいなら!»


「十分だ!じゃあ分裂して街灯とリストに載ってる人の家の釜戸に行って待機して欲しい。犯人らしき人物を特定するぞ!」


«ご主人様ー名前欲しいなー、名前を付けると心の絆が繋がって私が見ている様子を共有出来るんだよ!»


精霊とは何と優秀な存在なんだ。


「じゃあ、今からお前はムックだ」


炎の精霊が一瞬光り、心の絆が繋がったのを実感した。


«ありがとうー私はご主人様専属の精霊となりました!よろしくね»


ムックは街灯と各予備軍のお宅へ散っていった。

俺達も街を散策しつつ警戒を始めたのだった。

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