第3話 王都
王都が見えてきた。
塀で囲まれた敷地は広大で正面には巨大な門がある。
入口には警備の兵士が多数。さすが王都だ。
冒険者登録証を提示しディーテは妹と説明し無事に城下町に入れた。
「さすが王都だな。人も亜人も多いし店もいっぱいだ」
『おー!すごいな!グルナ!お腹減ったぞ』
「結構歩いたから疲れたな、食事にしよう」
獣人はこの世界で亜人と呼ばれている。
猫耳や尻尾が生えてる人や2足歩行している犬とも猫とも言えない毛むくじゃらの獣人まで様々な種族が居るのだ。
宿をとって部屋に荷物を置き、町を散策する。
城下町の地図なんかも売っていて便利だ。
当然此処にもギルドがあり、報酬を得る事も可能だ。
所持金が減って来たので稼ぎたいところだ。此処に長居は危険かも知れないが背に腹はかえられない。此方の世界でも金は大事なのだ。
翌日、食べ歩きしつつ図書館で休憩。
面白い本を見つけた。
神話の本
神はこの世界に大陸を創り、海を創った。
神は自分と同じ様な姿の生き物を誕生させた。人間だ。
1番最初に誕生した人類は不老長寿、煩悩を持たない状態だったそうだ。
妬み嫉妬、殺意。諸々の欲求を持たない人間は何故か死に絶えてしまった。
次に神は人間に老いと煩悩を与え寿命を短くしたそうだ。人間は種を残し繁栄したが、一部の欲にまみれた人間よって争いが起きた。長く続いた争いは世界規模だった。飢饉が起こり人類はまたしても絶えてしまった。
次に神は、人類共通の敵を世界に誕生させた。
魔王だ。
圧倒的な力で支配地域を拡大する魔王に人々は一致団結し立ち向かった。
そして奪い返した土地に6つの国が出来、今に至るという話だ。
よくある話だ。
(魔導書もあるのか…)
偶然立ち寄った店で世界地図を見つけたので買っておく。
ディーテの服や簡単な魔導書を買い
宿に戻り世界地図を眺める。
ヴィエン王国は大陸の南にあった。
王都よりも南下すると海だ。地図では飛び出た半島の先端に近い所に王都がある。王都から東に行けば港町、北上するとパルムやパマスの街があり、その先に巨大な森が広がっている…
森に蓋をされてるみたいだ。
森の先は…人間の領土のようだ。
ディーテは買った服でファッションショーを楽しんでいる。
「もう少し情報欲しいな…ディーテ、美味しい魚とか貝が食べれる店が有るらしいぞ?行ってみないか?」
『魚?』
実はいい店を知っているのだ。
城下町を散策している時に立ち寄った露店の店主が王都に来たら此処に寄れ!と言っていた店。
王都は海に近いので新鮮な魚介類が豊富なのだ。
店は大繁盛していた。
〖相席でもよろしいでしょうか?〗
「俺達は相席でも大丈夫だよ」
〖では此方へ〗
お爺さんと相席だ。
「隣失礼します」
〖おう!俺の事は気にせず寛げよ!ガハハハ〗
この爺さんは夫婦喧嘩で食事にあり付けない時は此処に来るらしい。
「本日の果物と…コレとこれ…以上で!」
本日の果物はすぐに出てきた。
甘い果物を食べてディーテはご満悦だ。
料理を待ちながらお爺さんに色々聞いてみる。
〖お前さん達記憶が無いのか!大変だな〗
「記憶が無いのも苦労しますけど、この世には魔王が居るらしいですねーおっかないですね」
〖魔王は昔は暴れてたみたいだけど今は大人しいぜ〗
「そうなんですか?」
〖本当かどうか分からねぇけど北の大地に住んでる魔王が魔王になる前、刃向かった人間の国1個ぶっ潰したらしい。大勢の人が死んで、その結果そいつは魔王になっちまったって噂だ〗
「…そ、そうなんですか!」
(マジか!まさかディーテが魔王になる条件は人間の大量虐殺か!?)
〖ん?にぃちゃん顔色悪いぞ?どうした?〗
「いやー怖いなぁと思って」
〖最近魔王の1人が討たれたらしいから、また次期魔王が暴れるかもな!ガハハハ〗
料理が運ばれてきた。
適当に頼んだがハズレは無いようだ。
白身魚のソテーにパエリアの様な料理、ヴィエン海老(この近辺でしか捕れない海老だそうだ)
まずは白身魚のソテーを一口…
「………!?」
『………!?』
めちゃくちゃ旨い!
しっとりふっくらな身は肉厚で食べ応えがあり味も濃厚、地球のあっさりとした淡白な白身とは完全に別物だ。
パエリアの様な料理は具材から染み出た濃厚な旨味が米?の1粒1粒に染み渡っている!
最後は海老だ。
ぷりっぷりの食感、濃厚な味、非の打ち所がない。ボイルしただけだそうだが、正解だ。
下手に味付けするのは危険な程、素で旨いのだ。
『グルナ…こんな美味しい食べ物がこの世にはあるんだな…今日はこんなに美味しい料理を食べさせてくれてありがとな』
食べ終えた皿を眺めながらディーテはうっとりしている。
「王都に来たら必ず寄らないといけない店だな」
〖気に入ったみたいだな!嵐で漁に出れない時以外は開いてるぞ。2人を見てたら早く帰って仲直りしないといけない気がしてきたぜ。じゃあな!〗
一応断っておくが、俺達は夫婦でもなければ恋人でもないのだ。
宿に帰って明日の準備を済ませる。
「なぁディーテ?お爺さんの話じゃ魔王と人間は敵対してるみたいだったけど、ディーテはどう思ってるんだ?」
『人間とケンカになったら、あの店でご飯食べられなくなるのか?』
「そうだなー、まず出入り禁止は間違いないだろうな…最悪一生食べれないだろう」
『!?…じゃあ仲良くしないといけないな!』
人間側に付く確約戴きました。チョロいな。