第19話 森の種族達
森の種族の協力を取り付けたい俺は、出発の準備をしていた。
『グルナ、私も一緒に行きたいぞ』
「あの事件があった後だ。ディーテの護衛をしないといけないが、配下の住人を守るのも俺の役目だ。これ以上の被害を出さない為には、各種族の協力が不可欠だが甚内も言っていた通りなら交渉にも危険が伴う。ディーテは此処の王になる存在だ、連れて行くことは出来ないんだ」
『………………』
心優しい魔王候補。本当は傍に居て護りたいのだ。
ディーテの護衛にはセレネとオーガ族、付近の警戒にはカラが連れて来た他の街のガーゴイルが10名だ。
他のみんなは温泉宿やその他施設の建設を引き続き進めてもらう。
俺はハイエルフから借りた馬車で各種族を訪問する。
同伴するのは、甚内とカラ、ムックにエルミアだ。
「何かあればゲートで戻る事が出来るから心配するな。じゃ行ってくる」
《グルナ様、お気をつけて》
「上杉、セレネ!頼んだぞ」
俺達は、ケンタウロスの集落を目指した。
ケンタウロスは上半身が人間、下半身は馬の魔物だ。
気性は荒いが、知性があり知識も豊富なのだとか。
集落の入口には武装した兵士。
甚内にケンタウロスの族長に取り次いでもらうよう掛け合ってもらい、族長に会うことが出来た。
«長老!久しいな!数年前に揉めた時以来か、思い出話に付き合ってやりたいとこだが緊急事態でな。手短に頼むぞ»
「俺はグルナ、魔王種ディーテに仕えている。定住する土地を求めて最近森にやって来た者だ」
«魔王種ディーテ?知らんな。その配下が我が一族に何の用だ?
配下になれとでも言いに来たか?»
「いや、勧誘に来た訳じゃない。
最近、南東の島国プティア王国籍と思しき船が森から魔物を連れ去っているのを知っているか?」
«……その事は報告を受けている。人間の国の事はよく分からぬが、一族の戦士が海岸付近で交戦したそうだ。その際、重症を負った者が連れ去られたのだ。もう生きてはおらんだろう»
「率直に言う。
海岸線の警備に協力して欲しい。
数日前にセイレーン族が連れ去られる現場に遭遇し、何とか撃退する事が出来たが国家ぐるみなら再度やって来る可能性は高い。
早めに手を打たなければ、被害は増える一方だろう。それと知っている情報があれば教えて欲しい」
ケンタウロスの族長は何かを考えて黙ってしまった。
«警戒したところで、被害を未然に防げるとは限らんぞ。お前が撃退した事で、連中は装備を整えて来るだろう。手に負えん»
「どういう事だ?」
«交戦した戦士の話では、連中は魔法でも弓矢でも剣でも無い…見たことも無い”何か”で攻撃をしてくるそうだ。盾を砕き致命傷を与える何かでな»
「…行動しない者に未来は無いぞ。
俺達もそうだが、お前達もこの森の以外に居場所は無い」
グルナと言ったか…恐らく半神。
何より良い眼をしている。
魔王種ディーテとやら、よい部下を持ったな。
«よいだろう!後日、お前達の町に行く。
次期魔王、お前の主に会ってみたくなったわ!!»
こうして、後日、ケンタウロスの族長と警戒監視活動について話し合いが行われる事になった。