第12話 ドワーフ国最終日・そして村に戻った
ドワーフ国滞在最終日。
俺達はパーシスに挨拶する為、城へ向かった。
«この国を楽しんでもらえたかな?また遊びに来るがよい。
つまらぬ物だが手土産を用意したぞ。では気を付けてな»
「ありがとうございます。ではまた」
(よそよそしいがいいだろう)
ドワーフ国を出発し村に戻ったのだが…様子がおかしい。
不思議な気配を感じるのだ。
「甚内、上杉!留守番ありがとな!…なぁ気のせいか不思議な気配を感じるんだが」
«おかえりなさませ。
実は、ドワーフ国に向かわれた日の夜、ニンフとノームが来まして…この村に住ませてほしいと。
しかし、我らでは判断出来ないと伝え、お引取り頂こうとしたのですが、ディーテ様の帰りを此処で待っていると言い張りまして…»
よく見ると、物陰から此方の様子を伺っている者たちが居た。ニンフとノームだろう。
ニンフとは人間と神様の中間の様な存在らしい。
基本的には不老不死だが、このニンフは森が消滅したり、森から離れ過ぎると弱っていき消滅するそうだ。
外見はほぼ人間、揃いも揃って美形だ。
ノームはこの森の妖精らしい身長は60cm程か?ちっちゃいお爺さんだ。
「俺も判断出来ないな。何名居るんだ?」
«ニンフ50名、ノーム20名ですじゃ»
『町が賑やかになるな!此処に住むがいい!』
「だそうだ。住む場所を用意しないとな!」
ニンフは森の果実や野菜の採取、家事も得意らしいので、その分野に従事してもらう。
ノームは石や木材の加工が得意で、鉱脈の場所なんかも把握してるそうだ。
早速住居の建設を手伝ってもらおう。
来客用にする予定だった宿舎と会議をする為の集会所を解放した。
相部屋になるが、しばらく我慢してくれ。
その夜、俺達が無事に帰って来た事を喜ぶ会というのが催された。
このストレートな宴の名付け親は上杉だ。
どうやら俺と同じぐらいナンセンスな奴らしい。
今後とも仲良くしたいものだ。
因みにこの宴は、ニンフとノームの歓迎会も兼ねているそうだ。
馬車を返しに行ったセレネも帰って来た。
丁度みんなが集まっているので、ドワーフ王からもらった土産を配るとしよう。
土産はペンダントと生ハム、そしてチーズ。
4~500人分のペンダントは虫除けの魔法が刻印されていた。
森の中に町を作ってると言ったからだろうか?かなり有難い品だ。
宴会してるし丁度いい、生ハムとチーズは刹那に頼んで切り分けてもらう。
「刹那、生ハムというのは、なるべく薄くスライスするんだ。軽く透けるぐらいがいいかな。チーズは刹那の好きなようにカットしてくれ」
《わかりました!お任せ下さい》ニコニコ
刹那は生ハムの原木をあっという間にスライスしてしまった。
(盛りつけも完璧だ…)
「す、素晴らしい包丁捌きだな!刹那はいいお嫁さんになるぞ、未来の旦那さんが羨ましいよ」
《ありがとうございます》ニコッ
その笑顔を見た時、俺は心に誓ったのだ。
刹那の未来の旦那を軽い気持ちで浮気をしたりしない様に導くのだと…
刹那が、こんないい子が悲しむ事の無いように。
そして何より、リアル残酷物語を回避する為に。
村に帰って2週間が過ぎようとしていた。
住居の建設は急ピッチで進んでいる、ノームがいい仕事をするのだ。
徐々に完成した住居が出来始め、ニンフとノームにも家が行き渡った。中々のペースだ。
《グルナ様!》
珍しく上杉が焦っている…只事ではなさそうだ。
「どうした?」
《ドワーフ国の兵士と思われる武装した一個小隊が此方に向かっております!》
「大切な客人だ。丁重にお迎えしてくれ」
遂にパーシスが村にやって来たのだ。