最終話 旅立ち
次の質問は、神の血を引く統治者が何故、魔王と呼ばれているのかだ。
アザゼルも違和感を感じていたが、魔王と呼ばれてはいるが、魔物の王でもなければ、魔界の王でもないのだ。
《んー、お前はディーテから何も聞いてないのか?ほら、選抜試験の話とか》
「え?」
ディーテからは選抜試験の事は少し聞いたが、ディーテも完全に記憶している訳ではないのだ。何の為に試験をしているのかは分からなかった。
2度目の世界が滅びた後、流石に神様も頭にきたらしく…悪魔対策を考えたそうだ。
そして、出た結論は…
魔界の支配者を倒して、代わりに魔界を支配出来る者をコッチから送り込んだらいいじゃん!であった。
悪魔は執拗いので、何度でもやって来る。
だったら魔界を支配して、悪魔達を制御したらいいと…
(…マジかよ。酒の席でよくある、ほぼ思いつきの”アレ”じゃねぇか…)
《魔王は”有資格者”資格有りと認められた者、魔王種は”魔王候補者”だ!》
「はぁ…」
(よく分かんねぇよ…)
《だが、その中で最も相応しい者を選ばなくてはならない。その最終試験が魔界の王の討伐という実技試験だった訳だ》
「…まさか!?」
《そのまさかだ!グルナよ!魔界の現王を倒したお前が魔界の王に相応しい!魔界を支配し、この世界を守るのだ!!》
つまり、繰り返される選抜試験の目的は、魔界の王の擁立であった。
俺はステータスを確認した。
グルナ
【種族】半神
【イコル】雷霆
【固有スキル】闘神化
【スキル】鑑定眼・魔力操作・魔物使役・空間収納・空間操作・精霊召喚(炎・闇)・重力操作・転移魔法(極)
【髪・瞳の色】銀・青碧
【称号】真なる魔王・魔界を破壊し尽くし支配する者
【加護】ディーテの加護
「………………」
マジか…。
俺は魔王になっていた。
神様は余程ムカついたのだろうか?魔界を破壊し尽くし支配する者って…
かなり攻撃的だ。
しかも、真なる魔王なのに加護の部分に関しては、引き続き与えてもらう側という雑さ…
精霊召喚の闇はさっきもらった黒ムックだろうか?
神様曰く、巨神族ともめた後の打ち上げで話が決まったと言っていた。
(やっぱり酒の席か…)
ディーテ
【種族】女神
【イコル】無垢なる救済
【固有スキル】エーテル操作
【スキル】鑑定眼・魔力操作・魔力探知・魔物使役・精霊召喚(水・大地・無)・幻獣召喚・自動防御結界
【髪・瞳の色】黒・紫
【称号】魔王・真なる魔王を支える者
【庇護】ディーテの庇護
ちなみに、ディーテのステータスも少し変わっていた。
魔王種から魔王になっていたのだ。
真なる魔王を支える者とあるが気にしない方が良さそうだ。
《せいぜい励め!お前には魔界へ転移する為の能力を授ける。魔力の消費は限界まで抑えた省エネ魔法だ!素晴らしいだろう?》
「…………………」
自分でやったらいいじゃん…そう思ったが。
《我々は陰ながら世界を見守る使命があるのだ!疎かには出来ん》
宴会が忙しい様だ。
それと、魔界は天空の神々の管轄外だとも言っていた。
色々と疲れたので、質問は終わりにして俺達の歓迎会を楽しもうと思う。
月の神殿へ来たのは俺だけではない。
神の血を引く者全員が招かれたのだ。
そこで、ディーテとアルトミアを創り出した神様にも会ったのだが、何故2人も創り出したかというと…案の定、狂気と慈愛という極端な性格を併せ持つ神様で、その性格が万が一にも1人に引き継がれると不味い!となり、2人に分けたらしい。
月の神殿を満喫し、自分達を創った神々と話をし俺達は地上に戻った。
モヤモヤする…。
鉄道を敷き直しながら思い出すが、説得力に欠ける…
説得力は無かったが、納得するしかない…
酒の力…恐るべしと!
その数ヶ月後、俺とディーテは結婚式を挙げた。
勿論、俺達も森の国の洞窟教会で挙式だ。
各国の王族が見守る中、結婚指輪を渡した時の『何で結婚指輪は大きな宝石が付いてないんだ!?』というディーテの発言に会場は爆笑したが、常に身に付けているとシンプルな方がいいのに気付くだろう。
式から数ヶ月が過ぎた。
言っちゃなんだが、毎日幸せだ。
2つだったベッドは大きなベッド1つになり、そこにディーテとアザゼルと川の字で寝ている。
たまにムック(赤・黒)本体と分裂体も加わるのだ。
『グルナ?魔界の件はどうするんだ?』
「すっかり忘れてたな…国も落ち着いてるし、そろそろだな」
魔王種という魔王候補者を、格下が育てられる訳が無い。
同格とはいえ、本来サポートする立場だった俺が真なる魔王に成った訳だが、世界の意思の思惑通り俺は魔王の種を育て上げた。
その種は、この世界の統治者として立派に成長したのだ。
一先ず役目を果たした俺は、神様から言い渡された使命”魔界の支配者”と成るべく準備を進める。
俺としては、”破壊し尽くし支配する者”ではなく普通に”統治する者”がいいのだが、サタンやその他の悪魔のイメージが悪過ぎる。
実力行使は止むを得ないのかも知れない。
本当は森の国でのんびり過ごしたいが、与えられた使命からは逃れられない気がする。
ならば、自ら飛び込んで運命を切り開くべき!
魔王の種を育て上げた俺は新たな冒険に旅立つのだった。
おしまい。
魔王種をお読み下さりありがとうございましたm(_ _)m
初めての執筆でしたが、何とか完結させることが出来てホッとしております。
この作品で色々と勉強出来たので、次の作品に活かしていきたいと思います。