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魔王種  作者: のんびりMUCC
終末戦争編
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第97話 最終試験

転移装置のある部屋へ到着したオルフェは唖然とする。

誰も居なかったのだ。

(既に月の神殿へ行ってしまったのだろうか…一体何の為に此処まで来たのか…)

しかし、その部屋にグルナは到着する。


「オルフェ!無事か!?」

《…………。》

「オルフェ?」

《俺の無事を確認するとは…貴様は何処まで人を馬鹿にすれば気が済むのだ!!》

「…ツツツツ!!?」


初めて味わう”蒼き煉獄の鎌(ダークネスサイズ)”の斬撃。

それは、とても速く…とても鋭く…光輝の胸当さえも抉り破壊する。

辛うじて躱すもダメージを感じる。魂そのものが削られているのだ。

止むことなく襲い掛かる死神の鎌は、巨大な柱を難無く切断し、刃が触れていないはずの床、壁を切り刻む。

「オルフェ!目を覚ませ!!」

《目を覚まさせたのは貴様だろうが!!》


そこにディーテも到着する。

殺意をもって振り降ろされる鎌、仲間割れ等ではない…

死神と化したオルフェ、正気に戻そうとするグルナ。

それは、目にも止まらぬ速さで繰り広げられる異次元の戦闘だった。


『止めるんだ!何で2人が戦ってるんだ!?グルナ!オルフェ!お前達は兄弟なのに何故殺し合うんだ!!』

《兄弟だと!?そんな戯言信じられるか!!お前もグルナに裏切られたのだぞ!!》

『こんなのおかしいよ!!…もう止めてよ!!』


しかし、ディーテの(想い)は2人には届かない。

ディーテは嘘は言っていない。

国を興した後、アルトミアが挨拶にやってくる前だ。全てを思い出していたのだ。

世界を統治し、いつの日か必ず降り掛かる災禍である悪魔の襲来。それを阻止する為、天空の神々が地上に送り込んだ神の血を引く者達。

天空神ゼウスの血を引くグルナ。

その兄、ハデスの血を引くオルフェ。

美と愛の神アフロディーテの血を引くディーテとアルトミア。

炎と鍛治の神へーパイストス一押しのパーシス。

そして、春と芽吹きの神の血を引く刹那。

数多の神々から候補者を地上に送り込み、死と転生を繰り返しながら、無情にも行われる選抜試験。

繰り返される度に高確率で生き残る候補者達が現れ始めた。彼等だ。

異なる時代、異なる場所で目覚める候補者達は、1つの目的を達成する為にやがて出会う。


何時からか消去されたはずの記憶を思い出すようになったディーテ。

どうやら、その事自体は問題視されなかった様だ。しかし、禁句はあった。

未来の話…行動について話をするとリセットされるのだ。

なので何が起こるかは話せない。

しかし、回を重ねる毎に前進している。今は恐らく最終試験…魔界の王の討伐なのだ。

こんな時に候補者同士で争う事になるとは…

運命とは何と残酷なのだ。



…………………………………



別室にて受肉の儀式が始まろうとしていた。

しかし、流石は神の血を引く者。その身体には何かしらの安全装置が組み込まれている様だ。


《余程渡したくないとみえる。

しかし、神々よ…安心しろ、私は期待を裏切らんぞ!》


手こずりそうだが解除は可能。

何としても手に入れたい…

サタンはこれを解除すべく、詠唱を始める。

余程集中していたのだろうか…首筋にダガーが撃ち込まれ、漸く気が付いた。刹那を助け出そうとする者が部屋に侵入している事に。


《これは驚いた…人間とはウジ虫の如く湧いてくるとは思っていたが、まさか部屋の中にも湧いてくるとは思わなかったぞ!》


マリアであった。

流石は元一流の盗賊である。ダガーを見舞い、間髪入れずに祭壇から刹那を救出したのだ。


《刹那様は渡さない!》


マリアは元盗賊。しかし、森の国で開催されたオリンピックで勝利し、ディーテから永住権と仕事をもらったのだ。

それだけでは無い。巨神族の神殿、その入口に石像まで建ててもらえた。

その日から、マリアの人生は一変した。

与えられた雑貨屋の仕事を楽しむ日々、観光客や街の住人と他わいもない会話を楽しみ、たまに、ファムに同行し他国に直接商品を仕入れに行く事もある。そこで出会う子供達からは大人気で、将来は自分の様になりたいと言ってくれる子供まで居た。

森の国に住む前は、人目を気にしながら闇と生きる日々…その時からは考えられない変化なのだ。

本来、退屈でしかないはずの何時と変わらない日常、それがこれ程までに素晴らしいものなのか。そう思えた。

そんなマリアは、世界の危機に森の国の一員として役に立つ事を選ぶ。

もう十分過ぎる程与えてもらっている。恩を返すのだ。


命に代えても!


マリアは刹那を連れて部屋を出ようとしたが、やはり扉が開かない。

(不味い…私が入ってきた場所は2人は通れない。せめて、この扉を壊せたら…)

どうやらサタンの魔力で扉は押さえ付けられている。

部屋から出る方法は、サタンを始末するか扉を破壊するかしか無い。

しかし、刹那を救出する事になるなど想像もしていなかったマリアは明らかに準備不足なのだ。


今のマリアに出来るのは、刹那の盾と成る事のみ。

恐怖で押し潰されそうな心を奮い立たせサタンの前に立つ。

その時、重厚な扉が轟音と共に砕け散り、何者かが部屋に入って来た。

パーシスとケルベロスである。


《パーシス様!ケルベロス様!!》

《間一髪って感じだな!マリアよ!我々が時間を稼ぐ!転移装置へ急ぐのだ!!》


マリアは刹那を連れ、転移装置へ急いだ。

命を賭して、自分と刹那を逃がしてくれた2人の為に、そして自分の心を救ってくれた刹那の為に。

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