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魔王種  作者: のんびりMUCC
終末戦争編
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第96話 交錯する思い

神殿へ到着したディーテは信じられない光景を目の当たりにする。

入口にカラが倒れていたのだ。


『…カラ?』


死んでいた。

胸には短刀が突き刺さっている…即死だっただろう。

カラを抱きしめるディーテ。

(まだ少し温かい…私がもっと早く着いていれば…)

アザゼルも神殿へやって来た。コルヌコピア王国の反乱軍を制圧した後、森の国に帰ったアザゼルは、事情を知りディーテを追って飛び出して来たのだ。


《カラしゃま…ディーテしゃま…ごめんなしゃい…》


アザゼルは謝っていた。

不甲斐なかったのだ。元はサタンの使い魔だったアザゼル。この最悪な状況を回避する為に、もっと自分に出来ることがあったのではないのか…そう思ったのだ。


『アザゼル…謝る必要なんかないぞ?みんなアザゼルに感謝してるし、アザゼルの事大好きなんだぞ?』

《ディーテしゃま…》

『アザゼルは悪魔じゃないだろ?』

《超悪魔アザゼルですのん!》

『うん。その超絶可愛い魔物にお願いしたい事がある。カラを悪意から守ってほしい…』

《任せるですのん!!》

ディーテは此処まで来れたのは、今回が初めて。

”前回”は神殿に到着する事が出来ずに終わってしまった。

善し悪しは兎も角、今回は1つの結果に辿り着く事が出来るかも知れない。


カラをアザゼルに託し、ディーテは神殿最奥の転移装置を目指すのであった。



……………………………



ドワーフ国。


パーシスの元に、エトリア国反乱軍を制圧したと派遣した部隊から連絡が入っていた。

流石は部隊長アトラスだ。頼りになる。

問題は1つ片付いた。しかし、もう1つの問題は未だ解決していない。

それは、ドワーフ国に押し寄せて来るであろう悪魔の軍勢の始末だ。


(影も形も見えん…)


ドワーフ国へ進軍していた悪魔達がオルフェに始末されているなど、パーシスは知る由もない。

悪魔とは、お楽しみを最後に取っておく派なのだろうか…それとも相手にされていないのだろうか…

どちらにしても…気に食わん!!


考えただけで反吐が出る。

ムックの分裂体を使い、ヘルモス王国とマカリオス王国にメッセージを送る。

悪魔が支配するアグロス国への総攻撃の打診である。

待っている事など出来ない…普段冷静なパーシスだが、その堪忍袋の緒は、とうの昔に切れていたのだ。

アルトミアからは了解を得たが、ヘルモス王国は保留である。

しかも、対応したのはオルフェではなくケルベロス…

この時、パーシスはオルフェが国を出ている事を知るのだが動揺する事はなかった。

何か有るに違いない。国を蔑ろにしてでも守るべき何かがあるのだろう…そう直感したのだ。

我々第三者には理解出来ない事だろう。とやかく言ってはいけないのだ。

何故なら、第三者は結果論でしか物事を見れないからだ。

それに、誰にでも欠点や間違いはある。

そう思いながら、話を進める。


「ケルベロスよ、軍の指揮権は誰に有るのだ?」

《オルフェ様が不在の今、我にあります》

「分かった。我々はアグロス国へ総攻撃を行う。気が向いたら援軍を寄越すがいい」

《……》


パーシスは部隊を編成しアグロス国へ向かう。

道中、目に付くのは粉々になった悪魔の亡骸や破壊された街。ドワーフの国カタフィギス王国が被害を受けなかったのは奇跡としか言い様がない。


《パーシスよ、部隊の指揮権を妾に寄越すがいい。お前は月への神殿へ行くのだ》

「月への神殿?」

《うむ、神殿にオルフェやグルナ、それにディーテも向かったはずじゃ。妾の魔法は狭い場所では本領発揮出来ぬ》


……………………………



神殿の一室。

心臓(コア)を破壊されたオルフェが目を覚ます。

悪魔は知らなかったのだ。オルフェが冥界の王である事を。

死者の魂が行き着く世界、その世界の王が死ぬわけがない。身体の修復には時間が掛かったが、何とか動けそうだ。

転移装置へ向かったグルナを追い、歩き出す。

オルフェの心は、怒りと悲しみに満ちている。その姿は、行く手を阻もうとする悪魔でさえも怯え目を背ける。


………………………



転移装置のある最上階、その一室に刹那はいた。

オルフェと共に転移装置を目指していたが、突如アレクシアに攻撃され意識を失っていたのだ。

この部屋にオルフェは居ない。

(オルフェたん…きっと私の事を探しているに違いないわ…)

部屋から出ようとするも、扉は重く動く気配はない。


《目覚めたか…オーガの姫よ》


何処かで聞きた事のある声…

刹那が振り向くと、そこに居たのはニキアスであった。オリンピックでは褒美にディーテとの婚約を希望したエトリア国の騎士だ。


《何故貴方が此処に居るのですか!?》

「美しい…そして神の血を引く強き肉体…私の器として申し分無い」

《!?》

《サタン…》

「その通り、私がサタンだ。この人間の肉体も悪くは無い…しかし、目の前には、それが霞みゴミに見えてしまう程の逸品が有る。欲しくなるのが性と言うものであろう?」

《貴様の思い通りにはならない!オルフェ様が必ず守ってくれる!》

「残念だが、魔王オルフェ君は助けに来ることは無い。死んだのだぞ?」

《お前の言う事など信じない!》


部屋を脱出しようと試みるが、やはり扉は動かない。


「オーガの姫よ、その肉体を手に入れるのに君の生死は関係無いのだよ」


サタンの指先から発生した閃光は、刹那の心臓(コア)を貫く。


《オルフェたん…》


刹那の遺体は祭壇へ運ばれ、いよいよ受肉の儀式が始まる。

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