9 家族
ルビは作者がこう呼んで欲しい場合や分からないものを振り仮名を振っています。
馬鹿な作者ですみません。
「これから私たちは家族になりますから私たちのことを少し話しましょうか。楽に聞いて頂いて大丈夫ですよ」
「ローファスさまのかぞく?」
「えぇそうです。それともう1つ、私のことは義父様と呼んで欲しいですね」
「とうさま?」
「はい」
「とうさま……とうさま……ふふ、とうさまか……」
初めて呼ぶ言葉にドキドキした。改めてお試しではあるが家族になる実感が湧いてきた。
「そう呼ばれるのは嬉しいですね……ではまず家族構成から……」
そう言うとローファスは話し始めた。邸に住んで居るのは、ローファスの奥様と子供は男の子が二人女の子が一人と言った。使用人も住み込みと通い込みの両方が居るそうだ。ローファスが管理している田舎の一つに両親が隠居して暮らしている。落ち着いてきたら紹介してくれるそうだ。邸には広い庭があり今の時期は立派な薔薇を咲かせていて四季折々の花が見られるらしい。王妃様が見に来られるほど、それは素晴らしいものだそうだ。
様々な話を聞いていると、いつの間にか林の中を走っていた。暫く進むと林を抜け大きな邸が見えてきた。邸の門を抜けて扉の前まで馬車を付けた。
「ここが今日からあなたが住む家です。行きましょうか」
先にローファスが馬車から降りて、次にセラを抱き抱えて降ろした。
「ありがとうございます。……とうさま」
「どういたしまして」
手を繋いで邸の扉を開けると使用人たちが集まりセラたちを出迎えていた。
「お帰りなさいませ、旦那様。傍に居るお嬢様がセラ様ですか?」
「ええ。セラ、挨拶を」
「はっはじめまして……えっと、セラです。あのよろしくおねがいします」
挨拶をすると笑顔でお辞儀をしてくれた。
「よろしくお願いします。私はサミュエル・エトーと申します。こちらはエリー・ルトール。セラ様の侍女としてお傍に仕えさせて頂きます」
「エリー・ルトールです。セラ様、これからよろしくお願いします」
サミュエルは白髪に黒の瞳、エリーは薄い茶髪に茶色の瞳をしている。二人とも優しい目をしてこちらを見ていた。使用人と挨拶を交わしていると二階から声が聞こえてきた。
「父上!お帰りなさい!その子が父上の言っていたセラですか!?」
「おかえりなさい!そのこがねえさまになるひとですか!?」
階段から降りて来たのは、青髪に紫の瞳をした少し背が高い男の子と金髪に赤い瞳をした背の低い男の子だった。セラは突然のことに驚いてローファスの後ろに隠れて身を縮こませた。二人の男の子の様子を陰から窺っていると、ローファスが二人に向かって注意をした。
「お前たち、セラが怖がっています。静かに来るように伝えたはずですよ」
「すみません父上……」
「ごめんなさい……」
二人がしょんぼりと頭を下げたのを見たセラはローファスの陰から顔を出した。
「おどろいてごめんなさい……セラです。あの……よろしくおねがいします」
「私のほうこそ驚かせてしまいすみません。私はエディ・ノルディス。こちらは私の弟のイアン・ノルディスです」
「イアンです。セラねえさま」
義姉様と初めて言われたセラは戸惑ってローファスを見上げるとにっこりと笑顔を向けられた。
「セラよりも歳が下なんですよ。ですからイアンの義姉として頑張りましょうね」
病室に居た頃に魔術で自分のことを調べて貰ったとき五歳だということが分かった。エディが六歳、イアンが三歳らしい。二人とも自分とそんなに変わらないのに凄く立派だなと思った。
「ふふ、楽しそうね。私も混ぜて下さいな」
階段からまた降りて来たのはとても美しい女性だった。腰まで長い金髪の髪に赤よりの橙色をした瞳をしている。セラの傍まで来ると膝をついて目線を合わせた。
「初めまして。ローファスの妻のアデルと言います。これからよろしくお願いしますね」
目の前の綺麗な人に手を取られて固まってしまったが、ニコニコとずっと笑顔を向けられているうちに肩の力が抜けてきた。
「あの……えっと……こちらこそよろしくおねがいします」
「ふふ、私のことも義母様と呼んで欲しいわ」
「はっはい。かあさま」
「あ~もうかわいいわ~!この歳の子が欲しかったのよ。ここには今いないけど一歳の娘のアリスも居るのよ。これから仲良くしてあげてね」
今日だけで沢山の人に囲まれ、ぐるぐると頭の中をめぐり混乱している中ローファスが話しかけてきた。
「では食事にしましょうか」